【芝居】「ベガスペガサス」やみ・あがりシアター
2026.4.27 19:00
[CoRich]
やみ・あがりシアターの新作。5月6日まで北とぴあペガサスホール。120分。
北とぴあは全体をカジノに改装されている。体験型のイマーシブシアターの事業に失敗した劇団の役者やスタッフを買取りカジノに組み入れ、キャストを村人、客を旅人と設定してエンタメとカジノを組み合わせた娯楽施設は盛り上がっているが、 推しに会うために金を注ぎ込んだり、仕事の金を無くし取り戻そうとしたり、資金洗浄を狙う男や勝ち馬に乗ることにしか幸運できない女、あるいは役者たちも葛藤しながら働いている。 ある日、賭けに強いと自負して乗り込み大負けした男が戻ってこないことを心配してカジノの前に立ちすくむ妻を、知り合い女が見かけて声をかける。
客席が舞台を三方に囲みさまざまにな方向から出捌けするようになっています。額縁の舞台ではなく客席が舞台を囲むようで出捌けを自在に行うスタイルはここ数作の劇団の特徴にもなりつつあります。中央にポールが立ち、それを囲むように円形でルーレットを模したような布(ポリバルーン)を役者たちが持って回すことで巨大なルーレットを出現させるのは、小劇場っぽくファンタジーを感じさせます。今作は舞台が正方形に近く回転を取り入れ、疾走感もある舞台は、もし青山円形劇場が使えていればそこで観たかったと思わせる一本なのです。
カジノという大きな金が動くことにエンタテイメントも生活者も、資金洗浄者も東京カレンダー風の港区女子も果ては警官まで巻き込まれている近未来。公共施設である北とぴあがカジノになると言うのも悲観的な未来。こんなにもフィクションな感じのつくりなのに、世の中に引っかかる気持ちをあちこちにフックさせてワタシたちの現実に地続きになっています。 娯楽といえるぐらいで留まればいいけれど、あきらかに人生そのものであったり、生活が立ちゆかなくなるぐらいにギャンブルにのめり込んでしまっている人々。劇中旅人と呼ばれるカジノの客たちの間で浮き沈みはあるにしても、巨大な資本を背景にした胴元が負けることはないというカジノの在り方の怪しさも目一杯組み込まれているのです。
もう一つの物語の核は、夫を心配するこれまでは堅実に貯金しかしてこなくて投資すらも経験のない妻と、今まで独身を通してきた女の物語。妻は独身の女を羨ましいとはことあるごとに言いながら、「積み上げてこなかった」と見下しているのです。これもまた、一つの賭けであって、とりわけ今なお女性だから結婚することしないこと、結婚してどういう生活を送るかといったことが大きく人生を変えてしまう可能性があると言うことを端的に、しかしそこには互いの歩み寄りを感じさせる終幕。青春物語ではないけれど、分岐の多い女性の人生だけれど、年齢を重ねた先にはまた肩を組み合えるかもしれないという可能性の物語でもあるのです。


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