2021.05.04

【芝居】「タイダルロック」あひるなんちゃら関村個人企画

2021.4.24 15:00 [CoRich]

60分。OFF OFFシアター。ワタシは結果的に最終日の昼公演に滑り込めました。3/25は配信のみ。それぞれの回のアーカイブは5/7から順次配信が終了します。

同居する三姉妹。大学生の三女がバンドをしたいと言い出す。30歳でバイトの日々を送る次女はバンドはやりたいが家族をメンバーにするのはダサいと取り合わない。長女はそんな揉め事を漫画に描いてバズらせたい。次女は嫌がり、描いたら10万払う約束を取り付けるが、長女は10万払ってしまう。

実際の上演では三人がどういう関係かは徐々に明かされます。たった60分だけど、三人の個性、関係や互いを想う気持ちを細切れに、細やかに描くのです。長女(保坂萌)の面白がり、次女(ワタナベミノリ)の今のワタシではない何かになりたいゆえの先走り感、学生の三女(土橋銘菓)は心からバンドを始めたいという純粋さがきちんと造型されるのです。

終幕、夜空を見る三人が月をみてタイトルに、なるほど、これも宇宙を描く関村企画サーガの一端なのです。

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2021.05.03

【芝居】「逢いにいくの、雨だけど」iaku

2021.4.17 19:00 [CoRich]

2018年初演作を同じ劇場・同じキャストで上演。三鷹市芸術文化センター・星のホールで4/25迄の上演予定でしたが、24日が千秋楽、大阪公演も中止。 幼い頃に事故で失明し絵画の道を諦め会社員として生活している男。そのキッカケを作った女は絵本作家として新人賞を受け、その受賞作が幼い頃に男が書いたキャラクタに酷似していて、再会を果たす。

ショッキングな事故を背景に、しかし二人のそれからを細やかに描きます。親たちも浮気を疑ったりなどの亀裂を生み結局は別れ、女は失明させたことを詫びなかったことを後悔し、男はしかし、他人事のように飄々とした感じで、失明した自分を受け入れていてと、穏やかにしかし複雑に織りなす物語は重厚な奥行きを持つのです。この再会が二人がもしかしたら友人として歩むかも知れないあるいは、家族が再会し再び時間が動き出すと感じさせる幕切れもいいのです。

物語の印象は初演とびっくりするほど変わりませんが、親から見て「男児の商品価値が下がったように思ってしまう」という台詞はちょっと残酷で、ビクッとするのです。

舞台が初演より低くなりアクティングスペースの自由度が上がったり俳優の負荷が下げられたかわりに客席は初演とことなり傾斜を強く付けた仮設になりました。駅の反対側は感染症蔓延防止重点措置下、劇場のある三鷹市は対象外でワタシの観た回は慎重な対策は取りつつもコロナ禍以前と変わらないぐらいに客席ほぼ100%に設定されていた印象で、ここ数週間他の劇場では経験してないほどの状態ではありました。

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2021.04.21

【芝居】「Let's split」 スクランブル

2021.4.16 19:15 [CoRich]

4/18まで神奈川県立青少年センタースタジオ「HIKARI」。90分。これから、配信も予定されています。

ボーリング場のオーナーとなった男。知り合いが集まってくる。一人一億で雇われた犯罪者たち。リーダーが分け前を配り解散となる瞬間、一人が支払われていない経費を払って欲しい、と言い出す。

ボーリング場、客席側に向かってレーンが中央に一本。舞台奥にはバーカウンターやジュークボックスという凝った舞台。最初に登場する「オーナー」は開業前に最初の一投をを投げようとして派手にころび、ボウルから指が抜けなくなる幕開け。三々五々集まる人々はそれぞれに癖があってそれはそれぞれの職人的なこだわりや矜恃がある人々、しかし彼らはチームとして犯罪の実行者として雇われ、多額の報酬を得るために集まってきたことが判ります。

一人一人の登場に時間がかかるけれど、そのうちの一人が計上されてない経費を払って欲しいと云いだしてからが物語の本編。武器調達、打ち合わせの場所代、ハッキングのための買い取ったPC、はてはボスの二人が再婚するからお祝いを、という感じでそれぞれが自分の取り分を「公平に」欲しいという混乱、その中で若い女性に一目惚れしてしまったからとは言えずに、その両親が払う分を肩代わりしたりと、カオス状態に。

冷静に俯瞰して考えれば、大量の要素で混乱してるけれど、本当の決着点とか物語の幹によって語られる話があるわけではありません。とはいえ、大量の情報を洪水のように浴びせられる空間に漂うワタシはわりと楽しく時間を過ごすのです。なるほど彼らのモットーとして掲げられる「最高の暇つぶし」に、まんまとハマるのです。

ボーリング場のオーナーを演じた中根道治はコミカルで困り続ける人物をきちんと。終幕で再びボールを投げる、というシーンもいいのです。

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2021.04.19

【芝居】「誰かの町」タテヨコ企画

2021.3.28 14:00 [CoRich]

ソーントン・ワイルダーの「わが町」をモチーフに現在の日本に置き換えた130分。3月28日まで小劇場B1。予定されていた大阪公演はキャンセルに。

役者の地元でその育った街を取材することで劇作に役立てようと劇作家と役者が地方都市を訪れる。 新聞記者の息子として地元で育ち、向かいのクリニックには同い年の娘が住んでいる。

もととなった「わが町」はストレートな上演は実は観たことがなくて、幾つか日本に翻案したものを観ています(「わが町・池袋」(平田オリザ、あるいは横浜を舞台にした小鳥クロックワークなど)どちらもあまり寂れた町ではない都会を設定したために雰囲気がずいぶん違うけれど、今作はベッドタウン的な「バスの終点が新幹線の駅」というほどほどの地方を想定していてそういう意味では原作に近いのかも知れません。「日常生活」「恋愛と結婚」「死」の三幕構成なのも原作通り。

地元を出て、その土地を久しぶりに訪れた役者(西山竜一)とその先輩の劇作家(舘智子)の二人の会話で語られる語り口はリズムがよく、コミカルさもあって楽しい工夫。テレビでハワイ旅行が当たったり、ママさんバレーの大会のコミュニティ、同級生たちが集まるのはその同級生の家が営むラーメン屋など、絶妙に時代と場所を描きます。進学のため、あるいはなし得たい仕事のために地元を離れることも東京からほど近い地方、という感じによく合っています。

積木のような少し大きな木製のブロックを組みあわせながら場所を作り上げていくのは積木のようで、どこかファンタジーの雰囲気を纏い、物語の中、という世界を効果的に表すのです。

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2021.04.14

【芝居】「アン」やみ・あがりシアター

2021.03.27 17:00 [CoRich]

役者のオーダーに沿う形で一人芝居を作り上げる「オーダーメイド」と題した企画公演。70分。3月28日まで王子スタジオ1。

増毛剤の発明で大金持ちとなった若い女。余命が一年ほど難病と妊娠が同時にわかる。生まれてくる女のために何もかも揃えておこうと考える、個人所有の島で暮らし、おもちゃ会社、学校、友達となる子供を持つ住人たちなどを揃えて何不自由なく暮らせるように整えていこうと考える。

いくつか縛りがあって、一人芝居、1時間ほど、役者の手による人形劇と紙芝居のシーンをそれぞれ入る、となっています。

海外ドラマ風に少し誇張した喋り、いわゆる第三の壁に向かっての語りをいれた体裁。妊娠を知り父親候補には逃げられても莫大な資産で子供のためにいろいろ揃える前半はコミカルに楽しく。時に子供が思うように育たなかったりして悩む未来を描く中盤は彼女にはやってこない未来で、しかしその想いはより深く描かれます。資産を全て秘書に奪い取られてしまってからの展開。かつての幼なじみに引き取られるのはどこか安堵する気持ちもあるけれど、ところどころで顔を見せる赤毛なアンの姿は、あれ、もしかしてこれは孤児院に引き取られる、あのおさげ髪の「アン」の物語にゆるやかに繋がる別の世界線の物語なのか、という不穏さを感じるワタシです。

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2021.04.05

【芝居】「岬のマヨイガ」いわてアートサポートセンター・宮古市民文化会館

2021.3.20 18:00 [CoRich]

岩手の作家、柏葉幸子による児童文学をserial number(ex.風琴工房)の詩森ろばが脚本・演出。宮古、盛岡、二戸、久慈の岩手を巡演して東京芸術劇場・シアターウェスト。3月21日まで。130分。amazonでは試し読みで序盤や背景が読めたりします。

事故で両親を失い声を発せられなくなった少女、夫の暴力から逃げてきた女、老人ホームに入ろうと遠野からやってきた老女。その日、大きな地震が起こり、避難所で出逢う。老女が家族だと機転を利かせ、三人で岬にある古民家で暮らすことにする。地震の影響は封じ込められていた魔物を呼び起こしたことに気付いた老女は、遠野から河童を呼び寄せ、調べることにする。

元々は子供向けに書かれた物語で、他人どうしの3世代の女性たちが被災をきっかけに肩寄せ合い暮らすようになる中、河童たちと出会い、土地に封じ込められていた魔物が出現する中、対決するのです。魔物は直接人を傷つけるというよりは人々の心に忍び寄り、不安と恐怖を煽るのだということも、河童たちの描かれ方もファンタジー。もちろんきちんと物語は物語として描かれるのだけれど、リズムや河童の異形のありかたが、それを支える一人の手による生演奏と相まって一種の祭りをみているような感覚になるのです。

ワタシが観た回は、序盤の地震が語られるシーンで劇場が揺れ、照明も長い時間の揺れ。物語とリンクする巡り合わせを感じるのです。

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2021.03.13

【芝居】「帰還不能点」チョコレートケーキ

2021.2.20 18:00 [CoRich]

チョコレートケーキの新作は、実在した「総力戦研究所」(wikipedia)を支点に引き返せなくなったのはどこの地点(=帰還不能点/POR)を思索する125分。2月28日まで東京芸術劇場 シアターイースト、そのあと兵庫。

戦後すぐ、居酒屋で久しぶりに集う人々。「総力戦研究所」に所属していた人々はそれぞれの道を歩んでいる。若手が集められ緻密なデータと議論によって戦局がどうなるかを試算するための試みで、敗戦はきちんと予測出来ていたがそれが取り上げられることはなかった。興に乗るうち、あのときの議論をもういちど繰り返し、時に芝居じみたロールプレイ、ときに冷静な視点を交えながらどこでならあの戦争を止められたかを思索する。

総力戦研究所という実在した組織と彼らが出した敗戦という結論が取り上げられなかったことを骨組みにしてはいますが、それ以外の部分はほぼ創作なのだろうと思います。そのうちの一人が戦後再婚した妻が営む居酒屋を舞台にしながら、その夫は広島を見て、予測出来なかった原爆に呆然として亡くなりというあたりはセンチメンタルに過ぎる気はしますが、研究所の人々に限らず、多くの人の中にはそういう人も居ただろうという想いを描くことと、いわゆる戦局の史実を重ね合わせながら描くという試みは面白く感じるワタシです。

時に内閣の様子、あるいはヒトラーという人に魅せられてしまう人、戦争に巻き込まれて酷いことになるかもしれないことと、自分の権力を維持することのどちらを選び取るかという政治家たち、しかも外交交渉がそう上手でもなく巧くいかないという厳しい視点は現在までの地続きに感じるのです。

戦後の居酒屋で興に乗った人々は、当時陸海軍、総理、文部、大蔵、外務、内務といった役割をロールプレイします。居酒屋と云う場所のある種の楽しさだけれど、その中で真剣に考えたことは数年経っても同じようにできるというのは作家が、この人々は真剣に考えたのだろうという敬意がきちんと感じられるのです。史実の枠組み、そのときの「エライ人々」の動かした歴史という前半と、それに巻き込まれた「普通の人々」を対比して描くことの構造の面白さなのです。

幹事の男を演じた岡本 篤がとても良いのです。亡くなった男のことを本当に考え続け、そしてこの場を作り上げたMCという役割でもあって。やさぐれている外務官僚を演じた村上誠基も時折見せる鋭い表情はほぼ最後列のワタシにもはっきり。陸軍の男を演じた粟野史浩は声が多きくがさつな感じだけれど、きちんと繊細な面も描き出すのです。

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2021.03.01

【芝居】「リーディングトライアルNo.1」ベイサイド実験室2021

2021.2.20 14:00 [CoRich]

ワタシ的に、2021年の最初の劇場観劇です。

ネオゼネレイター・プロジェクトの大西一郎が企画する実験室的公演。演目は日替わりのようです。28日までベイサイドスタジオ。2時間のアナウンスでしたが、初日は休憩ありの155分。

  1. 「なりきり自己紹介」(前半)他のメンバーが書いた架空の人物の言葉を読み上げ、その人物になりきって受け答え
  2. 「着納め」(作・清滝美保) 女と使用人。もう紫は自分に合わない、老いたかという女。
  3. 「かんしゃく玉」(作・岸田國士, 青空文庫)
  4. 「厩火事」(古典落語)
  5. 「なりきり自己紹介」(後半)
  6. 「眠れない停電の夜に」(作・尾道幸治) 横浜の大停電の夜、ラジオパーソナリティが語りかける記憶が定かでないぼんやりとした話。横浜までは記憶があるけれど。
  7. 「麵麭屋文六の思案」(作・岸田國士, 青空文庫)
短編のリーディングを役者をさまざまに組みあわせた企画。知っている戯曲も演出家がちょっとコメントしたりして背景が見えたりして楽しい。

「なりきり自己紹介」は、他の役者が書いてきた人物のセリフを読み上げたあと、その役になりきって質問に受け答えするというもの。彼らがワークショップ的に使っている手法のようですが、役者の人となり、あるいは書いた役者の考え方のベクトルが見えるようで楽しい。

「着納め」は、女が着物が年齢に合わなくなってきたと寂しく思う気持ちを発端に、過去の華やかな日々を経て今は(おそらく)地味な男を伴侶としたけれど、男の少し優しい言葉を聴いて愚痴の言い納め、着物の着納めに至る気持ちの変化を描きます。繊細で解像度が高くて沁みてくるよう。

岸田國士は著作権が切れてよく上演されるようになった、という演出家のコメントでの「かんしゃく玉」。夫の友人たちが目をかけるのは妻ばかりという構図、男こそ働いてなんぼが当たり前の時代ゆえだけれど、かんしゃく玉を投げつけるという突飛さがなんかとても瑞々しく、どこか微笑ましさもあって何度観ても楽しい一本。

落語から「厩火事」。犬も食わない夫婦げんか、しかし妻は夫のことをちゃんと思っていて、男の方はといえば、という古典。不満をまくしたてる妻と辟易する仲人の会話のリズムが楽しい。

「眠れない停電の夜に」はラジオパーソナリティが出逢った不思議な体験が放送に乗っての出来事。東横線、横浜を過ぎてぼんやりする、というあたりがポイントになる時代の流れを下敷きにした物語。停電が起きてラジオDJが妙なテンションになってるという体裁だけど、前半の行方が見えない時間がもうちょっとスピードアップすると嬉しいワタシです。

「麵麭屋文六の思案」これも岸田國士。ケラリーノサンドロヴィッチの上演は観てるはずなんだけどすっかり忘れてるワタシです。思い通りにならない息子や娘を抱えた父親。丁寧な会話を紡ぐ物語とみせかけて、豪快にひっくり返す楽しさ。

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2021.02.09

【芝居】「gaku-GAY-kai 2020 贋作・十二夜」フライングステージ

2020.12.29 18:30 [CoRich]

年末恒例のイベント。第一部「贋作・十二夜」と第二部のバラエティ溢れるショー。全体で150分。休憩10分。感染防止を徹底するよう、人数を絞り、きっちり時間をコントロール。舞台もごくシンプルに。さすがに客席もぎっちりにはならず。年末の風物詩にしているワタシです。動画も無料公開されています。

「贋作・十二夜」は、 靖国通り沿いの砂浜にたどり着いたりと新宿近辺という舞台設定は最近の傾向。もともと男装などジェンダーの入れ替わりがある物語で、それをゲイの役者が女性を演じ、さらに男装をしたりという「捻れ」が楽しく機能しています。男装した妹を演じたモイラと、その主人が恋い焦がれる女を演じたエスムラルダが初めて出逢うシーンがとてもいいのです。主人の心を伝えるために「演じる」や役者が役を「演じる」をメタに重ね合わせるのはおそらく原作からある力。

第二部は、コールアンドレスポンスを封印。

  1. 「アイハラミホ。の驚愕!ダイナマイトパワフル歌謡パフォーマンスしょー」勢いのいい祝祭感あふれるオープニング。
  2. 「佐藤 達のかみしばい 僕の話をきいてください」自転車の鍵を拾ってあげられない昨今、森の熊さんはおいかけて、がほっこりした絵柄にマッチするいつもの。
  3. 「水月モニカのクイアリーディング」幸福の女装、と題して。日本のバス停という場所は変えてるけれど、オスカー・ワイルドのあれ。
  4. 「ドラァグクィーン ストーリータイム」(関根信一)絵本「ねこのジョン
  5. 「小夜子なりきりショウ リヴァイタル:ディーズィエム」(モイラ) 第一部とはうってかわっての和装で長髪も美しく。
  6. 「ジオラママンボガールズ オンステージ」空調服で膨らむ宇宙人を背負う新たな趣向が楽しい。
  7. 「中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト vol.12」まさかのあの事件に踏み込み、死体になったワタシ、の歌を。
  8. 「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」(エスムラルダ)いくつかの出し物をして、いつもの最後の曲「エスムラルダでマンボ」、観客の歓声を封じ、心の中の、あるいは手のひらを前に向けて前後に振るような、コールアンドレスポンス。

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2021.01.11

【芝居】「今はやることじゃない」箱庭円舞曲

2020.12.29 14:00 [CoRich]

箱庭円舞曲、作演を兼ねる主宰の育休明け、劇団旗揚げ20周年と題しての久々の公演。80分。12月30日まで駅前劇場。

妻が入院したあと夫がひとりで切り盛りするラーメン屋。同じ味の筈なのに客が入らなくなって久しい。娘は思春期の頃から家のラーメンが嫌いになって素っ気ない。回りはマンション建設のために立ち退きが相次いでいて、持ち家のこの店にも不動産業者が訪れている。
ある日、担当者が口にしたラーメンにひどく感動し、口コミサイトなどを総動員して客足が戻ってくる。

作家自身もマニアックに好きな、まさにラーメン屋にまつわる物語。客が付いている店は必ずしも美味しいラーメンが理由とは限らないという視点から客あたりのいいおかみさんの存在だったり、流行の味付けであったり、あるいは口コミサイト総動員で作られた情報により押し寄せる一元客だったり。加えて、真面目にスープをとることをやめ、無化調どころか化学調味料とスープ缶詰だけで作り上げた味でも変わらない客であったり。さらには居抜きで、しかし味は全く受け継がないでリニューアルする娘など多面的な切り口で「ラーメン屋」という存在を描き出します。「ラーメンは情報を食べてる」というのはどこかの漫画の台詞ですが、そんな現状も織り込むような軽快な語り口も楽しい。

「ラーメン屋」を描いている本作だけれど、劇団の周年公演というタイミングで、劇団員だけによる上演という形態から、それはもしかしたら「劇団」というものさまざまな在り方や観客とのありかたを写し絵として描くよう。

ラーメン屋のカウンターをわざわざ内側を客席にむけて置き、大量の什器を仕込んで描く舞台が印象的。作家のラーメンへの想いの深さか、あるいは内側で考え続けている様々なことが凝縮しているかなんてことを思いつつ。

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