【芝居】「クジラが群れた恋」トローチ
2026.8.2 18:00
[CoRich]
一年半ごとの公演を続けるトローチの新作。8月10日まで赤坂RED THEATER。115分。
共働きの夫婦、年下の夫は離婚を切り出す。他に好きな女が出来たという。妻は不満があったけれど、どうしても嫌いにはなれず、離婚してしばらく経つ友人に話をしたり、昔のバイトの店の店長である元カレに久々に会いに行ったりする。妻の父親は若い恋人を連れて紹介しに来る。夫の父親は育て方を間違えたと、反省している。夫が恋人だと思っている女に離婚しないように諭される。
冷え切った夫婦関係だけれど続けていた結婚生活に突如切り出された離婚話をきっかけに、日頃の不満も溜まっていて夫の身勝手さに怒ってはいるけれどどうしても別れられない妻の視点の物語。とはいえ、離婚している友人を自分より不幸に見下したい気持ちが透けて怒らせたり、話を聴いてくれる元カレに不倫を持ちかける気持ちが見透かされて昔の恨みを蒸し返されたり、夫に対しての態度も正論で繰り返し殴りつけるような感じで、妻の方も混乱で足掻いた結果とはいえ、相当に周りを混乱させていきます。 夫婦や親子など家族について、年代や立ち位置によって異なるそれぞれのポリシーのぶつかり合い。全ての人物が同じぐらいの解像度で書き込まれたそれぞれの考え方。ワタシ個人では受け入れがたいものもあるけれど、人それぞれに大事だと思うことが異なるというごく当たり前のことをきちんと描く物語なのです。
年下の夫はよく言えば無垢だけれど自分勝手でほしいものはあくまで手に入れたい自分好きで、男らしさといったやや古くさい価値観をそれで人が傷つくことがあるなんてこともわからない相当ヒールな役どころ。演じた今江大地はこれだけ酷い役なのにこれだけイノセントな造型がちょっと凄い。妻を演じた中村中は混乱しまくり周りを巻き込みまくるカロリーの高い役でこれを日によってはマチソワで公演を走りきったパワフルさ。
元カレを演じた東地宏樹は年齢を重ねた優しさと余裕にみせているけれど、その裏側に隠しもっている傷ついた過去の深み。 妻の友人を演じた小林さやかもまた年齢を重ねたよき友人だけれど、無礼に対してきちんと怒れる人物をきっちりと。飲酒シーンばかりじゃないかというのは多分気のせい。 夫の浮気相手を演じた高橋紗良は序盤こそ「妻帯者だから寝た」みたいはひどい感じだけれど、言葉の裏もキチンと理解出来る常識人という落差の楽しさ。 妻の父親を演じた辻親八のどこまでも娘を想う気持ちとしかし、若い婚約者である菊池美里との一歩間違えばバカップルのコミカルになりそうなところ、身の丈というか、家族を家族として整えたいという気持ちの強さ、介護ともいえる年齢差でもそこに恋愛の情があるという繊細な関係をしかしコミカルに描きます。 夫の父親を演じた中西良太 は白スーツのややヤクザ物風情で、男はこうあるべきとかの無頼で旧来の価値観ばりばりだけれど、甘やかせすぎて育てた息子を失敗と断じる筋の通し方はこれはこれでカッコイイ。
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