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2026.05.09

【芝居】「THRESHOLD」神奈川県演劇連盟

2026.4.23 19:00 [CoRich]
神奈川県演劇連盟の合同公演、TAK in KAAT。4団体による短編集で計約120分。4月26日まで神奈川芸術劇場 (KAAT)。

修学旅行のバス、生徒たちは見学場所の春日大社で自由行動のために降りていったが、運転手は頑なに降りない男子生徒をみつける。運転手も休憩を取りたくて降ろそうとするが「鹿」(theater 045 syndicate)
大学教授でもある哲学者の男と不倫の恋に落ちた学生の女。ユダヤ人迫害のナチズムによって別れた二人だが、戦後に再会する。「物語の書き方(仮)」(劇団820製作所)
新しい製品のプレゼンテーション、観客たちの全てのデータがコンピュータに入っており、一人壇上に上げられた客の男の望み「理想の結婚」を シミュレーションしてホログラムで体験できるのだという。「presentation」(劇団スクランブル/クエル・ペッパー)
一人暮らしの女が部屋に閉じこもっている。外から聞こえる声にそれぞれに心がえぐられた記憶が蘇る。 高校の頃、長く付き合ったあとに別れた男、結婚しないまま扉の外にいる同年代の主婦たちの会話、親戚のおばちゃんからの悪意のないことば。「明日、また、明日。」(演劇プロデュース螺旋階段)

「鹿」は2012年の劇王で勝ち抜いたオイスターズ・平塚直隆の戯曲。そこから相手を去らせようとするバスの運転手となんとしても残ろうとする男子生徒のほぼ二人芝居もっとも後半ではバスの外では鹿が暴れて人間たちを襲っているというあけすけともいえるスプラッターファンタジーになったかとおもえば、交わらない二人のはずなのに後半登場する一人の女性が憧れの同級生であったり、運転手の娘であったりとそれぞれの人生の焦点を結ぶすこしほろ苦い像として結ばれる姿にみえてちょっといいのです。二人芝居+突然現れる三人目という構成も、不条理な感じもどこか「ゴドーを待ちながら」の変奏曲のようにも感じるワタシです。 運転手を演じた中山朋文は中年男がちょっと困らせられるような役を演じるとほんとうにピカイチ。学生を演じた今井勝法は出落ち感あれど、青春時代の汗だくのなりふり構わない必死さがとてもいい。現れる女性を演じた 北澤小夜子は、ファンタジーとして結ばれる像としての女神な感じ。

「物語~」は哲学者ハイデガーと長年不倫状態にあったハンナの史実をベースに。ヒトラーに転向しうらぎられたユダヤ人女性、さらに戦後ふたたび二人は出会い交流を続けるという現実じたいがもうフィクションのよう。 芝居は男女それぞれを年代別と思われる三人のキャストでシャッフルするように演じます。その中心でタイプライターを叩く女性、「物語の作り方」というタイトルはなるほど、この二人の人物が「人物の類型」の豊富なバリエーションでもあり、これを解体してくみあわせることで別の物語がつくれるよう、ということかしら、とおもったり。

「presentation」はステージで怪しげな商品をプレゼンする女(と助手)、それを期待して集まった観客のなかから一人壇上に上げられた男。「理想の結婚」を実体化してみせることが出来るというのがこの画期的な商品のウリで、可愛らしく甘えてくるが束縛のキツイ若い女、スイーツ好きの方言女子(実体はジャージ姿でコーラがぶ飲み系)、怪我の治療から退院してきた女の 優しめ男子に見えたけれど実はクズ男の、理想の女性の条件を微妙に違う「そういうことじゃない」と突っ込まれるようなシミュレーション結果のズレを楽しむ感じ。そこに混じるノイズがテストで入れたアシスタントの夫のデータだというのも小技。細かな違和感やズレを延々と繰り返すというのは、大爆笑とかオチといった落差で笑いを作るのとは全く違う種類のコメディだという気はしていて、ワタシの中では面白がり方の試行錯誤が続きます。

「明日〜」は一人暮らしの女の中にぽっかり空いた穴とそれゆえにこれでよかったかの自問自答。初恋でフラれたり、長く付き合った挙げ句に男の浮気でフラれたり、あるいは同世代の主婦たちの妊娠や井戸端会議とは違う人生、親戚のおばちゃんのいう「普通」ではない生き方をしていたりといった頼んでも居ないのに思い出させる走馬燈(死ぬわけじゃないけど)。それでも明日に向かって一歩を踏み出した先に広がるものがある、という穏やかで前向きな終幕は作家の優しい視線。

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