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2026.05.24

【芝居】「軋み」Nana Produce

2026.4.27 14:00 [CoRich]
劇団ブラジルの2008年作、今年は映画も公開された作品を全く別キャストで日澤雄介の演出で上演。4月29日までテアトルBONBON。120分。

初演当時は苦笑系と呼ばれていた脚本のブラジリィー・アン・山田がもう一歩先に進んだと感じた一本でした。 人気絶頂の漫画家、ヒモ同然の夫、不倫していたチーフアシスタント、隠蔽しようとする編集者、怪しむ元カレ、いろいろ詳しいアシスタント、 クビになったアシスタント、仕事が早いプロなど 殺人事件をめぐるミステリーというよりは、殺人事件というある種の理不尽にジタバタする人々のコメディの面白さはそのままに。

同世代の役者たちの競演(しかも劇団主宰の役者3人が当時は評判だった)の初演に対して、バラエティに富んだ役者陣を揃えたのはプロデュース公演の利点です。全体的な年齢は少しあがった印象。

漫画家を演じた小林さやかは長年連載を続けてきたのだという説得力と、自分が始めた理不尽に自ら巻き込まれて方向を見失う感をコミカルに深みをもって。 夫を演じた寺十吾は特徴的な声色を要所要所で使いながら、まあまあ年季の入ったヒモ同然の無職の説得力。 編集者を演じた狩野和馬は仕事を真面目にこなすがために狂気をはらむ面白さ。 若い女のアシスタントを演じた小口ふみかは見た目の可愛さと実は物語を創っていた中堅な雰囲気を両立して。 男のアシスタントを演じた浜谷康幸は器用なアシスタント、更にはいろいろ隠し持ってる怪しさ。 殺された女の元カレを演じた荒木健太郎は乱入してきて大騒ぎ、という一途さから見えてくる鋭さ。 プロとクレジットされた役を演じた日暮玩具はちょっと木訥とした感じが初演とは違うベクトルの造型。

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【芝居】「世界名作全集 1 & 2」おのまさしあたあ

2026.4.24 19:30
2026.4.26 14:00 [CoRich]
割と無茶な一人芝居を上演し続ける「おのまさしあたあ」、新作再演をとり混ぜ シェイクスピア、ゲーテ、ポー、カフカなどの世界の名作を徹底的にパロディにした、1話30分×3話構成の2プログラム日替わり上演。 4月26日まで横浜ベイサイドスタジオ(神奈川新町駅すぐ)。

【第1巻 古典篇】
金貸しから借りた金を返せず胸の肉1ポンドと引き換えという裁判の中、街ではひそかに疫病が流行り出す。「ベニスの商人死す」
見た目に恵まれない男が友人の助けで女に告白する。二人は戦いに出て告白した男が命を落とす。「シラトのベルジュラック」
神と悪魔が、学者の老人をたぶらかせばという賭けをする。老人の前に現れた悪魔は、死後の魂の交換のかわりに現世のあらゆる快楽と悲哀を味わわせるという交換条件をのみ、世界の王にする。「ファースト」 (2021年初演)

【第2巻 現代篇】
霧が深くなった灯台に海から巨大な怪物が現れる。助けを呼ぶと三人の侍女が現れ、更に夜の女王が現れる。「ムテキ」
アッシャー家の最後の生き残りとなった男、呪いがあるのだという。家族のことを思い出す。 「あっしゃあ家の崩壊」
朝起きると、「虫」の姿に変わっていた。ことばは通じない「変身!」 (2022年初演)

寄席形式というわけではないけれど、様々なバラエティに溢れた一人芝居がコンパクトに観られる「おのまさしあたあ」。 今回の「全集」は映画などのエンタメから更に文学の名作を原作にしての短編集と銘打つけれど、おのまさしあたあですから一筋縄ではいきません。

ベニスという言葉がタイトルに入る二本「ベニスの商人」「ベニスに死す」をマッシュアップしてみたり、 シラノ・ド・ベルジュラックを核にしながら登場人物がサスケなどほぼ白土三平(つまりシラト)のマンガのキャラクタの面を百均の自立型ちり取りに付けてだったり、 悪魔の甘言で世界の王になった男が難病の子供と出会いホームランを打ったり、 「霧笛」の怪獣とオペラ「魔笛」を掛け合わせながら金色の巨人を呼び出してみたり、 エドガーアランポーのミステリーからいつの間にか髷物になってみたり、 虫に変身していて、しかも限られた言葉だけで絶望してみたり(しかもまあ出落ち)。

つまりは核となる物語を早足で駆け抜けながら大喜利のように連想される物語や枠組みを組みあわせてマッシュアップ。 還暦を過ぎた役者がたった一人で演じるので体力的に大変だというある種の残酷物語の楽しさもあわせて、 観る側は寄席のように沢山の短編が詰め合わせになっていて気楽に楽しめるのです。

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2026.05.09

【芝居】「THRESHOLD」神奈川県演劇連盟

2026.4.23 19:00 [CoRich]
神奈川県演劇連盟の合同公演、TAK in KAAT。4団体による短編集で計約120分。4月26日まで神奈川芸術劇場 (KAAT)。

修学旅行のバス、生徒たちは見学場所の春日大社で自由行動のために降りていったが、運転手は頑なに降りない男子生徒をみつける。運転手も休憩を取りたくて降ろそうとするが「鹿」(theater 045 syndicate)
大学教授でもある哲学者の男と不倫の恋に落ちた学生の女。ユダヤ人迫害のナチズムによって別れた二人だが、戦後に再会する。「物語の書き方(仮)」(劇団820製作所)
新しい製品のプレゼンテーション、観客たちの全てのデータがコンピュータに入っており、一人壇上に上げられた客の男の望み「理想の結婚」を シミュレーションしてホログラムで体験できるのだという。「presentation」(劇団スクランブル/クエル・ペッパー)
一人暮らしの女が部屋に閉じこもっている。外から聞こえる声にそれぞれに心がえぐられた記憶が蘇る。 高校の頃、長く付き合ったあとに別れた男、結婚しないまま扉の外にいる同年代の主婦たちの会話、親戚のおばちゃんからの悪意のないことば。「明日、また、明日。」(演劇プロデュース螺旋階段)

「鹿」は2012年の劇王で勝ち抜いたオイスターズ・平塚直隆の戯曲。そこから相手を去らせようとするバスの運転手となんとしても残ろうとする男子生徒のほぼ二人芝居もっとも後半ではバスの外では鹿が暴れて人間たちを襲っているというあけすけともいえるスプラッターファンタジーになったかとおもえば、交わらない二人のはずなのに後半登場する一人の女性が憧れの同級生であったり、運転手の娘であったりとそれぞれの人生の焦点を結ぶすこしほろ苦い像として結ばれる姿にみえてちょっといいのです。二人芝居+突然現れる三人目という構成も、不条理な感じもどこか「ゴドーを待ちながら」の変奏曲のようにも感じるワタシです。 運転手を演じた中山朋文は中年男がちょっと困らせられるような役を演じるとほんとうにピカイチ。学生を演じた今井勝法は出落ち感あれど、青春時代の汗だくのなりふり構わない必死さがとてもいい。現れる女性を演じた 北澤小夜子は、ファンタジーとして結ばれる像としての女神な感じ。

「物語~」は哲学者ハイデガーと長年不倫状態にあったハンナの史実をベースに。ヒトラーに転向しうらぎられたユダヤ人女性、さらに戦後ふたたび二人は出会い交流を続けるという現実じたいがもうフィクションのよう。 芝居は男女それぞれを年代別と思われる三人のキャストでシャッフルするように演じます。その中心でタイプライターを叩く女性、「物語の作り方」というタイトルはなるほど、この二人の人物が「人物の類型」の豊富なバリエーションでもあり、これを解体してくみあわせることで別の物語がつくれるよう、ということかしら、とおもったり。

「presentation」はステージで怪しげな商品をプレゼンする女(と助手)、それを期待して集まった観客のなかから一人壇上に上げられた男。「理想の結婚」を実体化してみせることが出来るというのがこの画期的な商品のウリで、可愛らしく甘えてくるが束縛のキツイ若い女、スイーツ好きの方言女子(実体はジャージ姿でコーラがぶ飲み系)、怪我の治療から退院してきた女の 優しめ男子に見えたけれど実はクズ男の、理想の女性の条件を微妙に違う「そういうことじゃない」と突っ込まれるようなシミュレーション結果のズレを楽しむ感じ。そこに混じるノイズがテストで入れたアシスタントの夫のデータだというのも小技。細かな違和感やズレを延々と繰り返すというのは、大爆笑とかオチといった落差で笑いを作るのとは全く違う種類のコメディだという気はしていて、ワタシの中では面白がり方の試行錯誤が続きます。

「明日〜」は一人暮らしの女の中にぽっかり空いた穴とそれゆえにこれでよかったかの自問自答。初恋でフラれたり、長く付き合った挙げ句に男の浮気でフラれたり、あるいは同世代の主婦たちの妊娠や井戸端会議とは違う人生、親戚のおばちゃんのいう「普通」ではない生き方をしていたりといった頼んでも居ないのに思い出させる走馬燈(死ぬわけじゃないけど)。それでも明日に向かって一歩を踏み出した先に広がるものがある、という穏やかで前向きな終幕は作家の優しい視線。

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