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2026.04.11

【芝居】「ミッキーアイランド」滋企画

2026.3.14 18:00 [CoRich]
FUKAI PRODUCE羽衣の座付き作家だった糸井幸之介の作演による滋企画の新作。 3月22日までアトリエ春風舎。115分。

還暦近くのバツイチ長髪ロックミュージシャン。ライブハウスで20年ぶりの新曲をライブハウスで対バンになった22歳女性に捧げようとしたとたんに転倒する。
バンド仲間が部屋に運んでくれ、ときおり差し入れをして貰えるがベッドのまま動けないし、対バン女子へ電話しても連れない。 動けないままに、いろいろ思い出す。

還暦にもなってだらだらと売れないミュージシャンを続ける男、たった一回の転倒による骨折で動けなくなった結果のいろいろ夢想と現実の交錯。子どもの頃に漏らしたり食事したり風呂に一緒にはいったりといった、優しい母親との思い出から、母の晩年を二人暮らしで介護していたこと。 元妻との久々の再会と、出会った頃に学生だった元妻とのデート、父母に合わせ、息子が出来てといった思い出。 ずっと会っていなかった息子が現れ車椅子で居酒屋に一緒にいったり。

介護や結婚は経ているけれど、独り者で楽しく暮らしてきた男、それなりの波乱と背負っているものはあれど、突然の骨折で動けなくなることで、人生の仕舞い方みたいなことをする間もなく、ともかく幾つかの思い出を「しがんで」いること、つまり過去の記憶を頼りに過ごすのはなるほど走馬燈。 全体の調子は緩急あれど基本的にはストレートプレーにミュージカル風味、そうFUKAI PRODUCE羽衣の「妙ジカル」なかんじで軽やかなのです。

一方で序盤の骨折のキッカケは、若い対バン相手の女性に対して年甲斐もなく色気を出したこと。自覚のないストーカーっぽさ、怪我をしてなお電話して遠ざけられることなど明確に「気持ち悪い」キャラクタ造型だけれど、この気持ち悪さ自体は序盤でスパッと終わるのが救い。これを自覚して描いていることは大変重要で、気持ち悪さこそなくても、元妻が心配してきてくれるとか、長く会わなかった息子が会いに来てくれるとか、結婚にしても男の側の家族だけが描かれるなど、どこか男の身勝手な綺麗な妄想ではあるのです。それでも、自分の母親の介護など現実に向き合う部分もあったりしてその視点のないまぜな感じが実にオジサンにとってのリアルな感じでもあるのです。

終盤、亡くなった男の家に現れたネズミたち、ネズミたちが集まる「ミッキーアイランド」のシーンはセリフもないけれど、生きて死ぬネズミたちの姿は、人間たちの営みを俯瞰して観るよう。なるほど。

動けなくなった男を演じた佐藤滋はほぼ出突っ張りで、情けない中年オヤジからゆるやかに老いる男という男の晩節を細やかなグラデーションで。母親を演じた永井茉梨奈はシングルマザーの力強さと息子に対する優しさ、老いて介護されるがわになるまでのダイナミックレンジの広さ。元妻を演じた井上みなみはあくまでサバサバとクール、少しの情けというさじ加減が絶妙。序盤の狂言回しとなる「空気」から息子までさまざまな役を兼ねる木村友哉の自在な振れ幅。「悪い空気」を始めちょっと強面側を支える岡本陽介との対比も楽しい。

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