【芝居】「野々村良枝の失踪」タテヨコ企画
2026.3.20 14:00
[CoRich]
タテヨコ企画の新作。3月22日までアトリエ風姿花伝。120分。
母親が認知症で行方不明になる。実家には父親や長男のほか、長女が中国赴任のため預けた娘、別に女を囲っている次男に代わり事実上実家の面倒をみている次男の妻が暮らしている。 母親の行方不明の知らせを受けて数年ぶりに長女が帰宅する。
認知症で居なくなった母親、久しぶりに会った家族たちのぎこちなさだったり明確な不満だったり素直になれない気持ちだったり。母親を中心にゆるやかに繋がり甘えていた人々がその欠落によって自分の立ち位置を見つめ直すこと。 認知症をどう呼ぶか、認知症患者自身にとってはどういう世界が見えているかなどの基本的なベースを共有しつつ、それを啓蒙するというよりは直近の記憶は抜け落ちても昔の記憶は鮮明に残っているという認知症の特性を枠組みとした物語だと気付くのです。
子供たちが幼く、自分たちが若かった頃はもちろん毎日大変だったけれど、あの時に撮った写真がピンボケでもなんでも、繰り返し見ることで鮮やかに蘇ること、それは認知症となった(そしてそれはある程度自覚できている)母親自身の日々の支えで大事にお気に入りのバッグにいれていたし、それを子供たちがあのかけがえのない日々を思い起こすことに繋がることの暖かく、切ないことなのです。
認知症の母親を演じたあさ朝子は若い頃の母親の優しい視点から認知症故の激昂する老婆までも一人の人間の老いをギュッと一人で背会う安心感。次男の妻を演じたいまい彩乃は「古き良き」支える女であり続けたあとから見切りをつけ自由を得るある種の成長。長女を演じた舘智子は頼りになるけれど家族の距離があって思うようにならない歯がゆさ。次男を演じた西山竜一は若い女を囲い全てを失うという踏んだり蹴ったりな役だけれど中年男の悲哀を一身に背負うよう。同居する長男を演じた園田シンジはニートだけれど近所や同居する人々をよく見ている賢者といった風情が実はカッコイイ。長女の娘を演じた宮崎明音は軽口を叩いたりイマドキだけどまさに「いい娘に育って」を体現するようで眩しい。 ケアマネを演じた福永さとみは外からの視点の安定。父親を演じた宮島健は若い頃のカツラはご愛敬だけれど、年齢を妻を愛し続ける爺さんというあるようでなかなかない真っ直ぐな造型。近所のおばさんを演じた久行志乃ぶ は愛想のいいかんじだけれど、うっとうしさを通り越してヴィランに成り果てる人の汚いところもしっかり。
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