【芝居】「【班女】【卒塔婆小町】」アルプス乙女ユニオンズ( #まつもと演劇祭)
2025.10.11 11:30 [CoRich]
三島由紀夫の近代能楽集から二本。ワタシは恥ずかしながら未見でした。65分。元はスナックという感じの飲み屋街にできた劇場・スタジオ365。
かつて愛した男と好感した扇を持ち、再開することを願って駅のベンチで待つうちに狂気に陥ってしまった女。彼女を住まわせている画家志望の女はその美しさに心を奪われ、一緒住むようになっていた。扇を持ち男を待つ女のことが新聞記事になり、男と再会して手許から去ってしまうことを恐れていた矢先、男が訪ねてくる。「班女」(はんじょ)
夜の公園でベンチの恋人たちの邪魔をしながらシケモクを拾う老婆に詩人が声を掛ける。老婆は恋人たちは死んでいるんだ、生きてるのは自分だといい、やがて自分は小町と呼ばれた女だという。自分を美しいといった男たちは皆死んでしまったのだという。「卒塔婆小町」(そとばこまち)
「班女」は純粋に愛するあまりの狂気の果てに起点となったはずの愛しい人すら判らなくなっていることの悲しさと、本人はふわふわと浮いているようで心ここにあらずといったコントラスト。愛する者がここには居ないからこそのある種の先鋭化。 対して囲っている画家の女にもまたある種の狂気で、こちらは愛しているものが手許にあるが故に失うことを恐れる執着。狂気の女のファンタジー感に対して、もっと日常の延長といった雰囲気のエプロン姿に、独り身の女というちょっとコミカルにリアル寄りな造型で、こちらの対比も面白いのです。
「卒塔婆小町」は夜中の公園での老婆と詩人の会話。いまはこんな姿でもかつては若く生き生きとしていた時代があったこと、さらには周りの人々は死んでいってしまうという残酷な事実。老婆というある種の魔法使いに巻き込まれた男が見た夢との終幕の落差の無常観という面白さなのです。
元々は東京で活動していた主宰が移住して始めた劇団で圧倒的な安定感で作り上げられた舞台。スタジオ365は入り口にカウンター、横長に舞台と客席という設え。椅子がやけにいいのは、居抜きで残された家具なのかしらんと思ったりして。まつもと演劇祭の期間中に行っていたYouTubeライブの音声を開場中に流しながらというのも、祭りとしての一体感を醸成していて楽しい。
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