【芝居】「超音波」柿喰う客
2025.9.13 18:00 [CoRich]
柿喰う客の新作。9月15日までかなっくホール。そのあと下北沢・スズナリ。 元々割安な神奈川公演だけれど、さらにディスカウントの神奈川区民割がありがたい。85分。
地方都市、市長の肝いりで創設された交響楽団は創設されて5年、楽団は財政破綻寸前になっている。地元出身のマエストロを指揮者として招聘する。コンサートマスターは中堅だがバイオリンがそう巧いわけではなく、楽団の統率がとれない。 唯一コンマスを支える中堅のフルートは元々マエストロの師匠でマエストロは恋心を抱いていた。マエストロは更にバイオリンやピアノに高名な演奏家を招聘して楽団を強化しようとする。
おもえば随分久々の、柿喰う客(オジサン界隈では「柿」と略称されがち)です。前回が2020年の「夜盲症」、その前が2018年の「俺を縛れ!」なワタシです。
美しい音楽を奏でるオーケストラの裏に巣くう権力と人間関係が渦巻く「業」の物語。早口で多くのセリフを積み上げて厚みを作る劇団の持ち味はそのままに。それを「つか芝居風」と感じていたワタシだけれど、今作ではその屈折した愛情ゆえの粗暴さ、あるいはいびつさを強調して描くという意味で「熱海殺人事件」との同じ香りを感じるワタシです。それは例えば、コンマスを支える中堅のフルートが穏やかに見えてコンサート自体を破壊しようと目論んでいるとか、狂気にまみれた指揮者はその師匠に恋心を描き、超音波を聞くと体調が悪くなるのをしりむしろ超音波を手懐けて屈服させようとするとか、べらんめい口調のピアニストは人気なのに実はピアノが下手など、それぞれがプロフェッショナルなのに何かを欠いているいびつな人物たちの群像劇なのです。
東京ではスズナリの規模だけれど、神奈川公演の「かなっくホール」はもともと音楽ホールとして作られたタッパがはるかに大きな劇場です。神奈川公演限定で大人数のダンスアンサンブル「音波」が加わり、コンサートの場面でのアンサンブル。楽団を演じさせるかと思わせるかと思えば、楽器から発せられる音の「音波」をダンスで表現するという趣向が加えられています。これがなかなか巧く印象的で、音楽ホールを演劇に転用すると起こりがちなスカスカな印象を埋めることに成功しています。このダンサーで音波として埋めるということができる人員があれば、大小多くのどこの音楽ホールでもイケそう、というのは褒めすぎでしょうか。
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