【芝居】「守りたい いろいろ」桃唄309
2025.9.5 14:00 [CoRich]
短編を組みあわせて上演する桃唄309の企画公演のうち、桃唄309の演目だけを上演する「おはぎの会」。四回目とのことですが、ワタシは初めてです。9月7日までRAFT。105分。
ごはんを食べようとする男の前に「侵略が完了した」と告げる男が現れる。「侵略完了」
耳元の機械を皆が付けてそのアドバイスで行動を決める時代。人間のアドバイザーを時間で契約した女。いいなと思った男のとランチの約束があるのだ。アドバイザーといる間は機械の電源を切る契約になっている「いい雑音」
「2」が気になる女。友人に話す、でもその疑問は口伝えでいろんな人に広がったり、自分のところに戻って来たりする「2」
あれが起きて女が出て行ってから十年ぐらい。砂まみれのカフェに絵はがきが届く「絵はがき」
夏が来るたびに思い出す。転校生の女子と引き出しの中にしまい込んで母親に怒られた話「最後の一枚と消えないエール」
「侵略〜」は二人芝居。全ての人間の前に同様に人が現れている、という設定のおかげで、惑星侵略という大きな話なのにたった二人の一般人の会話劇というミニマルな構成に。「考えを食べられて考えがなくなっていく」ことを侵略ととらえて、閃くこと考えることがそれに抗うことなのだ、という実はわりと強めなメッセージ。まだ侵略は50%を超えたところでまだ時間はある、という警告でもあったりします。
「〜雑音」は女と男、ヒューマンアドバイザーなる三人構成。携帯やスマホの検索が人の記憶を外部化してきて、いまやAI的なものが整理や判断といった領域にこようかという今の私たちにつながる話。ものごとをいい具合に考えてくれる機械に頼り切ってしまうという話。好意をもったということすらその機械によるマッチングでそれに頼らなかったら不安になるというのがとてもリアルで、今やスマホ無しで知らない土地を歩くことが出来ないのと同様なリアリティがあります。男の側は機械を使っているというのも巧くて対比になっていくのです。ディストピアの話になりかねないところを恋心を中心に描くことでどこかほっこり。それに頼らず歩いてみようという終幕は前向きです。
「2」はとくにその数字自体には意味はなさそうだけれど、何かが気になってしまうことが人々に伝播していったり、新しいともだちができたりという日常の変化。どこかパズルゲームのような、あるいは細かくカット割りされたショート動画のような感じでもあってなんかぼっと観てしまう感じがちょっと癖になる。要らない好意というのは特に女性にとってはリアルなんだろうなと思ったりも。
「絵はがき」は2012年上演の短編の続きだそう。滅び行く世界で家族というには微妙に遠い間柄で同居する人々、この場所を離れ海外に渡るために歩いて目指して出て行った男女が、みたいなはなしだけれど結果一人だけ戻ってきてという後日譚。過去を思い出してやりたいことをやってしまってる男と、その工程の日々をこれからどう安全に清潔を保って生きていけるかを考え支え続ける女の心のすれ違い。安全ということがとりわけ身近に感じる昨今にキュッと差し込むような物語。
紙芝居である「〜エール」は結局のところ一夏の恋心と、弁当をかくして引き出しにしまい込んで母親に怒られた話というのを並行して描くどこか甘酸っぱいような、子どもと大人が同居するような物語。転校生のエールエリ、がまあティッシュにかかってるわけだけど、恋心が絡んで描かれた物語、じつはもうちょっと生々しい男子学生の思春期の話じゃないかと思ったりするワタシの心は多分汚れています。
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