【芝居】「夏の夜の夢」theater 045 syndicate
2025.8.21 19:00 [CoRich]
横浜の劇団045 syndicate がシェイクスピア・夏の夜の夢をがっつり上演。KAAT神奈川芸術劇場 大ホール 8月24日まで。130分。
いわゆる「夏夢」をわりとのそのままの世界観できっちり上演していて、大幅な改変や翻案を加えてはいないのだけれど、女性たちを意識的に強く自立したいものと描いていたり、職人たちの芝居の稽古の描き方では演出で強い言葉を使うことが忌避されなければならないことを少々コミカルに描いていたりと現代的な立ち位置の味付けがなされていますが、妖精たちのシーンは可愛らしく、ファンタジックに彩られていて、全体としてはポップな色合いの祝祭、という雰囲気になっています。なるほど、当日パンフで「上演は祝祭であれ、物語は野蛮に裏打ちされている」というのはこの上演のポップさと、ヒポリタがアマゾンからの「力づくの略奪と流血の果てに行われるもの」つまり婚礼の場だということはすっかりいままでの観劇では見落としていたワタシです。そう思って探してみればBBCがシェイクスピア没後400年に制作した2016年版(U-next)には随分そんな雰囲気が盛り込まれています。(こちらはみんなタブレット使ってたり、現代風の洋服などまあいろいろ違いますけれど)
そういう意味では若者たちのパートだって、ハーミヤは自立して親に反抗し勝ち取ることがもっと明確だし、ヘレナは馬鹿にされて怒っているをちゃんと超えて毅然と(しかしときおりコミカルでチャーミングに)という造型になっているのもBBC版と本作で共通に感じられることなのです。
職人たちの劇中劇がおもいのほか端折られずちゃんとした芝居として描かれるのもちょっと珍しい気がします。稽古場の権力勾配への配慮みたいな味付けはちょっと今風。妖精たちがアイドル風だったり、町人たちがリヤカー引いて通路に現れるのも祝祭感か。
上演台本の波田野敦紘(820製作所)は当日パンフで「五本の日本語訳(小田島雄志、河合祥一郎、松岡和子、福田恆存、大山敏子)を参照し、できる限りそのいずれにも似てない日本語となる」上演台本にしたといいます。翻訳が数多くある海外戯曲であれば、原文からあらたな訳をつくるのではなく、多くの訳の中から浮かび上がる日本語での捉え方を捕まえて物語を紡ぐというのは面白いと思いますし、それがポップな色合いを帯びている一つの要素だとも思うのです。今作では職人たちの言葉が私たちの今の言葉に近く、貴族や妖精たちの言葉は詩的で歌うようという対比も楽しい。その中で「生きてなんぼ」と言い切る終幕は力強く響くのです。
貴族や町人たちはアロハをまとい、妖精たちはややアメリカンな雰囲気という衣装も祝祭な感じ。アロハがヨコハマ風かというと微妙ではあるけれど、リトル沖縄とも称される地域を鶴見に抱えるという意味では横浜の市外局番045を劇団名に掲げる彼らの矜恃の一端なのかもしれません。
妖精の女王タイテーニアを演じた笹野鈴々音は小さい体型でコミカルかと思えば凄みの振り幅。ロバに化けさせられてしまう職人ボトムのコミカル、ギターもカッコイイ。演出する職人クインスを演じた中根道治の生真面目なプライドがコミカル。ヘレナを演じた難波なうやハーミアを演じたモハメディ亜沙南はきっちり現代的に力強い造型で頼もしい。イタズラ好きな妖精パックを演じた今井勝法はオジサンな見た目なのにそのうち妖精に見えてしまう不思議。妖精の王オーベロンを演じた中山朋文との丁々発止も楽しい。
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