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2025.07.18

【芝居】「パトリオット」チャリT企画

2025.6.29 14:00 [CoRich]

昭和100年、戦後80年にチャリT企画の新作。110分。6月29日までシアタートップス(THEATER/TOPS)。初めての外部演出。

緊急事態が宣言されビルの倉庫と思われる地下に逃げ込んだビルオーナー、通りすがりの人々。謎の飛来物、都庁が半壊などの噂は飛び交うが携帯がつながらない。
ここで避難しようと山と積まれた段ボールで隠されていたエレベータの存在はビルオーナーすら知らなかった。更に特殊機関を名乗る男が現れ、地下に潜む敵を撃退するという。地下深くの階に降りていく面々は、地下に住み続けて地上に憧れる親子四人の家族に出会う。兄は100歳になったのをきっかけに地上に出たいと考えているが、家族は80年前に地上で受けた受けた深い傷を負っているが、長い時間の中で何をされたかの記憶は曖昧になっている。

平穏に見える日常から、現在も世界のどこかでは起こっている脅威が降りかかったある日、ビルオーナーと通りすがりの人々が巻き込まれるほんの一晩と思われる物語。特殊機関を名乗る軍服の男に煽られ認識する「地下に潜む敵」とのドタバタを経て、彼らが何者なのかが浮かび上がります。通りすがりの人々、怪しい軍服男、地下に住み続ける家族がエレベータで隔てられたいくつかのフロアをひたすら下へ、ドタバタとコミカルに進むけれど、そこから浮かび上がるのは「記憶の墓場」に封印された、ビルオーナー祖父の墓まで持って行く記憶なのです。

ビルオーナーの祖父、地下家族の100歳の兄、記憶の墓場のたどりつき結んだ像は、祖父が従軍していた旧日本軍が南方で行ったこと。略奪し、陵辱し、虐殺したうえに人肉を喰らうこと。しかしそれゆえに生きて帰国してこのビルを建てることができたということ。やったことはやったこととして、その酷さは認識しつつ、しかし生きている自分はここにいて、都会の真ん中にビルがある国にはなったということ。始まりは地下だったのに終幕はいつのまにかビルの4階になっているのは、物語の始まりと終わりで立っている人物たちや私たちの視点が変わったという感じがします(もっとも、劇場への作演の想いとも。後述)。物語も内容も全く異なるのに、一晩の(悪)夢というのはどこか「夏の夜の夢」。なるほど若者たちと妖精の偶然の出会いを描いた夏夢に対して、忘れてしまった人々と忘れ去られてしまった人々の偶然を描いているのかとも思ったり。あるいはまあ、時代と起きたことという意味で「ひかりごけ」を思い出したりもします。

歴史の長い劇団ですし、全てを拝見しているわけではないけれど、おそらく劇団としてはシアタートップスを使うのは初めてではないかと思います。その想いが結実するように、この場所を生かす演出もたくさん。舞台中央にある奈落を生かして小さな箱から出てくる人々とか、終盤、舞台下手奥にある扉を解放したりとケレン味あふれる演出も。物語の重さに対して、この外連が語り口の軽さになっていて、とりわけ終幕の扉の開放はその一瞬だけでも救われるような気持ちにもなるのです。

ビルオーナーを演じた森田ガンツは昼行燈なとぼけた雰囲気から、終盤のシリアスに背負っている男まで目一杯の振り幅を深い奥行きで。市民の一人を演じた堤千穂はなかなかみられないコメディエンヌな雰囲気が軽快。 地下一家の娘を演じた笹野鈴々音はコミカルをはるかに飛び越えたもはやマンガのようなキャラクタの暴走が楽しげなのにこの背景の落差。兵士を演じた熊野善啓は狂気であり続ける凄み。狂ったことをやった人間をぎゅっと凝縮。

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