【芝居】「KYOTO」燐光群
2025.7.11 14:00 [CoRich]
英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーと、難民問題など世界の対立構造に目を向けてきた芸術団体グッドチャンスによる共同製作で、2024年英国での初演作を日本で翻訳上演。1997年京都議定書の採択までの衝突を駆け引きを描く160分。7月13日までザ・スズナリ。
大手石油資本に雇われた石油ロビイスト。国連によって設立された気候変動に関する政府間パネルや締約国会議に参加し、ロビー活動や各国の代表を支えながら、気候変動対策を妨害を図る。これまで大量の温室効果ガスを排出してきた先進国、石油の産出によってやっと自らの国の発展をみることになった産油国、これから経済発展するために足元の石油利用が必須な途上国、温室効果の海面上昇により直接被害を受ける島国などそれぞれの立場が反目し合い、ロビー活動による分断も功を奏してなかなか進まない。
気候変動の枠組みについての条約締約国会議(COP)はベルリン、ジュネーブと進んできたが、いよいよ京都では実効性のある決定が期待されていたが、やはり立場の反目は埋まらない。
もともとのイギリスでの上演では観客の一部を混ぜた円卓に各国の代表、一部の役者は机の高さに立っての位置関係での芝居。 日本での今作は、スズナリという劇場の形状から、観客を混ぜる形にはせず、しかし半円卓のような形に設えられた机に座る各国代表と、その机の高さに立つ役者たちという位置関係は維持されています。
冒頭、ロビイストの弁護士からの語り口。劇場に来ている観客や演劇関係者たちが嫌う右派のワタシが、みたいな自虐めいたというか揶揄めいたよう言い方をしながら始まって、事実、地球温暖化の進行を止めようとするCOP会議をあの手この手で妨害は目に余る完全にヒールな役なのだけれど、怒濤ともいえるセリフ量やスピード感はもの凄くて、ぐいぐいと物語を牽引していて、立場はまったく相容れないけれど、なんかペースに載せられてしまってるほどに離れられなくなっているのです。
ロビイストの働きによって、事実上全会一致でないと参加国を何も拘束できないような状況に追い込まれ、そこからスタートしたCOPは、その中で途上国や島嶼国と先進国という対立構造は明確にあるし、高度な駆け引きではあるのだけれど、現実はどうか知る由もないけれど、少なくとも芝居の上では明確にきちんと対話をしていて、口汚い口論ばかりが目立つ現在の国際関係に慣れてしまった目には悪く言えばこれでも牧歌的だし、理知的に対話をしていた時代、という遠さを感じても終うのです。もっとも現在のCOPがどういう対話をしているか、あるいは出来ていないかはよく知らないのだけれど。
各国の登場人物は特定の人物とは限らず、「その国の代表」複数を一人の役者で演じるようになっています。 アメリカを演じた樋尾麻衣子はスマートで強い、という感じ。島嶼国のキリバスを演じた永瀬美陽は、若く真っ直ぐな力強さでの説得力。 タンザニアを演じた南谷朝子もまた途上国だけれど、円熟の奥行きを併せ持つ国の雰囲気。 ドイツを演じた咲田とばこは、あのメルケルの瞬間もあって鋼鉄の女。 (アルゼンチンのラウル・エストラーダを演じた猪熊恒和は、粘り強い強く議定書の成立を導き出した立役者が泥臭くカッコイイ。 ロビイストのドン・パールマンは議定書を妨害し続けるヒールだけれど、このセリフ量で確かにこの舞台を強力に推進する力。


最近のコメント