【芝居】「乱鴉傷(らんあのいたみ)」チリアクターズ
2025.5.30 14:00 [CoRich]
チリアクターズの新作。6月1日までスタジオHIKARI。110分。
行方不明の妹を追って森の中をさまよって、たどり着いた建物で子どもたちに出会う。不死を目指した研究施設で、アンチエイジングのために成長を遅らせ子どものままに留めるという研究をしていた施設だった。
全体に黒で統一された舞台、妹を追う男がたどり着いた先で出会った研究者たちと「子ども」たちは、狂った研究のために共棲しているような隔絶された空間で。 不死を研究している研究者自身は大人なのにすでに不死を手に入れている風なのに少々混乱するものの、大きな問題ではありません。研究者たちはこどもたちを守ろうとしていたり、ハンマーとノミで人の頭をすぐに開こうとす売る天才少女だったり、探している妹に瓜二つな研究の成果だったりと、隔絶されているがゆえにそれぞれの方向が先鋭化され、残っているということ。とりわけ、研究している「子ども」たちを小さな三角錐に入れて動かす感じは、研究対象という風に見えて、ちょっとコミカルな見かけに反して、その対象が人間であるということの怖さを内包します。
という具合に、わりとシリアスなタッチで語られる物語なのだけれど、中盤でインターミッション的に二人の「子ども」がボケ倒すシーンの軽さは観客の心の弛緩でもあり、わりと好きなワタシです。
中場から現れる、エス姉妹とエヌという存在。エスとエヌ一つずつならぴったりあってずっと一緒なのにエスが一つ多いがゆえの不安定な関係というのはちょっと面白い構造に見えています。さまざま、この狂った研究に終止符を打つのは、不死の研究者に対して繰り返し刃を突き立て、しかえすことで繰り返し殺し合う煉獄の救いのなさ。
終幕、ここに来てはじめて舞台中央に現れる大木を背に、探偵イタバシを取り込もうとする黒づくめの男、抱き合うようで恋人なのか、腕を無くしただれかなのか、あるいは妹なのか。カラスのような黒い羽が舞い落ちる中、二人が抱き合う終幕は美しいけれど、悲しく、しかもぎょっとするような怖さが響くのです。
不死となった研究者を演じた上田幸侍は、エス姉妹には舐められがちだが実はラスボスで居続ける存在感。天才少女と呼ばれる研究者を演じた木村涼香はノミとハンマーを持って駆け回る狂気なのにどこか愛想が見え隠れするギャップ。 腕を無くした男を演じた島田朋尚はともかく不気味であり続ける存在感。
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