【芝居】「Venus誕生」劇団Venus
2025.5.30 19:00 [CoRich]
小田原の螺旋階段の緑慎一郎の脚本に、横浜の045 syndicateの中山朋文の演出という神奈川の演劇人のタッグなのに、なぜか埼玉の女子プロレス団体アイスリボンによる演劇ユニット Venusによる演劇公演、とは言いながら本物のリングでの迫力などリアリティ溢れる一本。60分ほどだったかと思います。レッスル武闘館にて。毎週末の上演で、5月30日が千穐楽。
設立された女子プロレスに応募してきた練習生たち。リングの上で厳しいトレーニングを続けている。練習後、試合を見に行き、本気のプロレスの試合を目の当たりにする研究生たち。想いがすれ違う。
実際に存在するプロレス団体の練習場らしき場所。本格的なリングだけれど、客席は一方のみ。ドリンク一杯を手に席につきます。
続編を前提としているであろう物語の序章となる本作は、若い女性たち、女優もプロレスラーたちも交えた青春群像劇的な幕開け。恐らくは団体の社長、コーチ、スタッフ、あるいは対戦相手たちが本物団体、アイスリボンのプロレスラー。練習生が(プロレスラーではない)女優たちなのだけれど、それにしたって、スクワットを始めとするトレーニングは本当に厳しそうに体力目一杯なもの。そのあとは中身は熱いけれど、いたって静かな現代口語演劇的な芝居というコントラストもちょっと面白い。彼女たちが観戦しに行く試合はホントのプロレスの試合なんだろうという迫力(本物の生観戦未経験なので)。これを観て観客が熱い想いを重ね合わせるというのは、よく聴いているラジオパーソナリティがそれまでは推し活がまったく判っていなかったのに突然ハマりまくっているということと合わせて、ワタシもちょっとその気分を味わうようで楽しいのです。
今作ではスパークリングと試合は撮影OKというアナウンスでした。千穐楽となったこの日の最前列は一眼カメラを携えた主にオジサンたちで溢れています。色温度測ってたりと本気で綺麗な写真を撮ろうという気合いに満ちあふれています。芝居もプロレスも見世物であり興業であるということは間違いがないのだけれど、若者たちの汗まみれを見て楽しく思いそれを(報道とは別の意味での)作品にしようとすることのある種のグロテスクさについて改めて思ったりもします。それは女子プロレスだからというわけではなくて、クロムモリブデンの上京初期に秋葉原でチラシを撒いた結果、終演後に王子小劇場のロビーに一眼レフ(当時)溢れたオジサンたちが溢れたあの光景とか、未経験だけどいわゆる地下アイドルとか、あるいは高校球児にしても高校演劇に対してもずっとワタシが抱える違和感なので、じゃあ、なんで芝居という見世物観に行ってるんだと言われるとぐうの音も出ないわけで、その違和感を確かめに行くというのも、もう奇行に近いのではないかと自覚するワタシです。
とはいえ、プロレス試合シーンは確かに心は動くんだよなぁと自覚しつつ。ベビーフェイスで戦うプロレスラーを演じた、しのせ愛梨紗の小さな身体で目一杯溢れる闘志の迫力、(おそらく)タッグを組んだ藤本つかさの頼り甲斐。 昭和プロレス好きのややオタク気質な練習生を演じた松橋ななを、懐かしい名前を連呼してくれたから(作家のセリフとは思いつつ)やけに印象に残ってしまうのです。
今後も続編前提かと思いますが、ちょっと通ってみようかなと思ったりします。
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