【芝居】「秘密」普通
2025.5.31 19:00 [CoRich]
2022年王子小劇場での初演作の再演。6月8日まで三鷹市芸術文化センター・星のホール。130分。
物語そのものは大きくは変わってないし、シンプルにダイニングテーブルと椅子だけという舞台も変わってないのだけれど、王子小劇場から星のホールへと変わったことで、どちらかというと観客からは見上げる感じから見下ろすようになり、三鷹の広い空間にぽつんとあることでより洗練された空間になった印象。そういえばテーブルと椅子もだいぶ「いいもの」に変わってる感じ。
序盤の父と娘のかみ合わない会話が延々続くのは初演どうだったかしら。こんなに尺あったかなと思ったりします。
年老いた両親と若くなくてそれぞれ家庭を築いている子供たち、老いた二人でも惰性というかそれまでの継続で何とか成立していた生活が、母親の入院の結果の父親の一人暮らしによって、バランスが崩れてしまいます。 もう二人だけでは生活は成立しなくなっているのに、なまじ献身的な娘の同居という選択肢を味わってしまったために、施設に入るとかヘルパーを入れるということを嫌がり、子供たちがなんとかしてくれる、というある種の甘え。 おそらくこの両親じたいは同居していた兄弟が面倒をみていてそれぞれの親の老年期に同居したり介護したりということをしてないんじゃないか、と想像してしまうワタシです。 両親揃って実家に置いて、娘が家に戻ると、「もう何も出来ないの」とばかりにすぐに呼ばれて、舞い戻る羽目、というのはある意味ホラーです。母親が退院して近所の夫婦と話して居るときの、部屋の中で頭を抱える娘の絶望感は、俯瞰して見えるこの劇場だからの新しい発見です。 役者としては現れないけれど、孫を物語に織り込むことで出来ることが増えていく子どもと、出来ないことが増えていく老人の対比は残酷なコントラストになるのです。
喧嘩する父母の大声、恐らくは耳が遠くなっている父親、何もかもが初演のときよりももっと身近で日常になっているワタシにとっては息苦しいほどリアルに感じます。なんで日常を金払って観に行くんだという気がしないでもありませんが、箱庭のように客観的に観る体験はそれはそれでどこかワタシの心の平穏に寄与してるのかもしれません。
2022.4 王子小劇場 |
2025.6 三鷹市芸術文化センター 星のホール |
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由紀の家族 | 父親 | 用松亮 | ← |
母親 | 堤千穂 | 板倉なつこ | |
由紀 | 安川まり | 用松亮 | |
由紀 | 安川まり | ← | |
哲也 (兄、結婚して子どもが居る) |
三瓶大介 | 泉拓磨 | |
亜希(哲也の妻) | しまおみほ | 川口雅子 | |
本谷夫妻 (近所の、由紀の同級生の両親) |
妻 | 佐藤有里子 | 石黒麻衣 |
夫 | 小野ゆたか | 渡辺裕也 | |
従兄弟夫婦 (娘は結婚して一男一女がいる) |
日出夫 (由紀の母方の従兄弟) |
直木ひでくに | 吉田庸 |
美佐子 (日出夫の妻) |
青柳美希 | ← |
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