【芝居】「パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。」趣向
2025.5.10 18:00 [CoRich]
2021年初演(未見)、2022年の再演 を経ての再々演は、長野、大阪のツアーを経て、初演と同じ神奈川県立青少年センタースタジオHIKARI。5月11日まで130分。三演とも同じキャスト、作演というのも珍しい。
コロナ禍に集まり、戯曲を持ち寄り読み合わせと感想を言う会に集う人々。クリスマスに公演をしよう、ということになる。
コロナがなくなったわけではないけれど、この芝居のもとになった活動が実際に行われたり、この芝居が作られた2020年21年ごろにくらべると、ほんの数年前だけど、気を遣いながら知り合いだけで繋がって密かにあつまる感じというのはもうずいぶん前のコトのように感じられてしまったりもします。コロナの頃というよりはもっとまえ、それこそ秘密結社とか地下組織のような遠い距離感で、ある種のツクリモノっぽく感じてしまうのは私だけだろうかと思ったりするのです。
いわゆる生きづらさを抱える大人たちが集う、しかし「支援団体」のような明確に与える側・受ける側という立場ではないあくまで私的な集まり。それぞれの生きづらさゆえに、何がキッカケで感情が爆発するかわからないし、人との距離感がバグったり、社会や人々に対する不安をずっと抱えていたりと「普通」とされるひとびとよりも脆弱さをもっていて、それでも場を維持するためのその場に対する「ルール」を明文化することが互いのためという認識があったりという理性的な気持ちももちろんあって、それが併存している危ういバランスの上に成り立っているコミュニティの危うさ。
彼らにとっては「完治」ははくて「病を手なずけ、日々を生きていく」ということも現実で、今作はそうしていく人々を描いています。「演劇の上演がされた」ということこそ成し遂げられてはいるけれど、それもまたゴールではなく、日々を生きていく通過点を描いているのであって、今作は必ずしも物語として腑に落ちる感じが少なめ。それでも、物語としてどうにかなるものではない題材を、精緻かつ誠実に描き出すということで現在の日本の、ある人々をアングルをもって切り取り描き出していて、それも同じキャスト・作演で繰り返して上演していこうという座組の覚悟は大したものだと思うのです。
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