【芝居】「散華」渡辺源四郎商店・うさぎ庵
2025.4.30 14:00 [CoRich]
東京でのナベゲンのGW祭りの二つ目。うさぎ庵の名義で。90分。5月2日まで。
現代。江ノ島近辺で女と海岸で酒を呑み、女が買い物に行っている隙に自分だけ薬をのんで死のうとしている作家崩れの男。朦朧とする意識の中、津島修治を名乗る男に出逢う。 お互いに死を覚悟していると、鐘が鳴りお互いに入れ替わる。
太宰に憧れる作家崩れの男と、作家になる前に心中騒ぎを起こしている太宰が同じ江ノ島という場所でつながり、時空を超えて入れ替わり、太宰のその後を知っていて憧れているがゆえに、自死を思い直すように説得するおとこ自身が死のうとしてるというパラドックスを起点にするSF風味。 この枠組みに、太宰の方はそのあとに描く「散華」( 青空文庫)、つまり戦争に巻き込まれる賛辞でも断筆でも批判でもなく、日常を描く静かに通底する反戦を描きつつ、作家崩れの男の方には、離婚した元妻と娘の物語が実は太宰の「散華」に絡むのです。
いくつかは読んでいるものの太宰にそれほど傾倒しなかった私だけれど、会社をサボっては時々あるいた藤沢・腰越あたりの風景は良く覚えていて、ああ、あの場所かぁと思い出す数々。なるほど、それこそが「人間失格」( 青空文庫)の舞台だったのだなぁと思うワタシです。 SF風味とはいえ、決してエンタメ色の強いものではなくて、作家というものの自省が交錯する話はあくまでも静かに。娘を残して死んだかもしれない作家、という視点ではもしかしたらこの作家・工藤千夏(twitter)が重なっているのかもなあ、と思うのです。
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