【芝居】「逃げろセリヌンティウス」渡辺源四郎商店
2025.5.3 19:00 [CoRich]
5月連休のナベゲン祭りの最後は満を持して畑澤聖悟作の新作で「走れメロス」(青空文庫)をベースにした物語。5月6日までスズナリ。そのあと青森。
メロスは妹の結婚式のために必ず戻ってくると言い残し走って去ってしまったが、残されたディオニス王は人間というものを信じていない。竹馬の友セリヌンティウスは友を信じている。
友をひたすら信じ、という元々の枠組みは残しつつ、孤独を恐れ続けている王に焦点を当てて描きます。当日パンフにあるとおり、芝居など意外に文化に興味と理解があるらしい、というところ を糸口にして物語を紡いだよう。セリヌンティウスは弟子達が牢からの脱出に手を差し伸べるのに友への信頼ゆえにそれを拒否し、王はメロスの帰還を妨害するのは、間に合わず友を殺されてしまったメロスが自分を殺めてくれないかという屈折した心。それは詩を書き、悲劇を上演したいという密かな想いがあって、作者の自分が死んでこそそれが完成するのだとおもっているという、拗らせるにも程がある、というほどの屈折。
王は孤独なままだし、悲劇こそ上演されても、殺した妹や妻を巡る夢に苛まれたり、最終的には王子に殺されてしまう悲劇というベース。 それでも物語が陰鬱にならずに、軽快ささえ感じさせるのは、さまざまな役者が入れ替わりながら役を演じたり、弟子がセリヌンティウスを脱獄させようと何度か訪れる、同じシーケンスを少しずらしながら天丼で重ねていき、あるいは回転中華テーブルに役者を乗せてくるくると向きをかえさせたりと、コミカルな描写がいくつもあるから。 思い悩む男の孤独を、誰もが知っているであろ「走れメロス」の「B面」として、しかも軽いタッチでつくりあげるのは作家と劇団の持ち味だなぁと思うのです。
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