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2025.05.14

【芝居】「駈込み訴え」渡辺源四郎商店

2025.4.27 15:00 [CoRich]

渡辺源四郎商店が毎年ゴールデンウィークの季節にスズナリで行う公演シリーズ。今年は太宰治をテーマにして、口開けは1日だけの公演。30分に構成した「駈込み訴え」(青空文庫) 一人芝居の上演と、「駈込み訴え」を上演しようとしている高校演劇部の物語60分(第70回全国高等学校演劇大会(ぎふ総文)優秀賞受賞作品)を組みあわせて上演。全体で95分。

駆け込んで来た男、「あの人」は酷い、居場所に案内するから殺してくれ、という。たいして歳も変わらないのに長い間、自分が彼の事を支えてきたのに、あの人はあんなに美しいのに、私のことを卑しめている。「駈込み訴え」(一人芝居)
「駈込み訴え」を上演しようとしている演劇部。部長は気高く、無茶を言う。同学年の演出助手はその無茶に付き合いずっと支えてきて三年まで残ったのは二人だけだった。厳しい縦社会に下級生たちはどんどん辞めている。演出助手は思わず想いを吐きだしてしまう。「駈込み訴え」(青森中央高等学校演劇部)

一人芝居。駈込み訴えを演劇にしたものは幾つかは拝見していますが (1, 2)、 ここまでがっつり原作通りに、しかも一人語りという小説自体のフォーマットに近いものは初めてです。戯曲ではなく小説とはいえ、一人語りの体裁なので、演劇としての上演も多いようですが通常50分程度になるものを30分程度での上演。一人であるがゆえに、濃密で力強い物語なのです。一人で舞台を背負う下山寿音はともかく目力が印象的だけれど、30分目を離せない迫力があります。

青森中央高等学校演劇部。一人芝居のおかげで、「駈込み訴え」がどんな物語なのかが全ての観客に共有された状態での開幕は巧い。それを上演しようとしている演劇部という導入だけれど、傍若無人にすら思える部長(福井来寿々)と、同い年なのにこき使われ支え続けている演出助手(丹羽桃嘩)という構図そのものが実は「駈込み訴え」のキリストとユダの関係になっているということに舌を巻くのです。 とはいえ、裏切ったままとか、殺されるなんて結末にはしないで、虐げられていた演出助手(=ユダ)が、愛する想いと、報われないことの悲哀を訥々と、強く語りかけることで和解につながる終幕の救い。 「最後の晩餐」の構図の模写を示すなど、観客が持っているかもしれない断片的な知識をつなぎ合わせるような細々とした仕掛けもあって、これもまた「教育」の形なのだなぁと思ったりするワタシです。

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