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2025.05.12

【芝居】「逆光が聞こえる」かるがも団地

2025.4.25 14:00 [CoRich]

劇団としては10回目となる本公演だそう。20代のおわり、いままでのところで作家が「目をそらしてきたこと」を描くのだという115分。4月27日までTHEATER/TOPS。

ベテラン女優にフックアップされ、大きな作品にかかわるようになってきた脚本・演出家。プロデューサーから次々と仕事を入れられるようになり、自分の物語を描いているだけではアウトプットが枯渇し始めていると感じている。
公演のある日、偶然高校で同じサッカー部に誘い、イジったりして本人も含め盛り上がっていた親友と再会するが、彼は職場でパワハラとされ再就職もままならなず、日雇いのアルバイトも続いていないことを知り、仕事を紹介する。

演劇の世界で認められつつある、まさにノっている男の前に、高校時代の友人が人生うまくいっていない状態で偶然現れることで思い出されたり起こったりするさまざまなことを描きます。 高校の頃に友人をイジり、それが当たり前で盛り上がって楽しかった筈の日々。イジられていた親友の方だって陰鬱な中学校までとは違って友だちもできて楽しい日々を暮らしていたという認識。親友の方はそれを唯一の「成功体験」として、何年ものあいだ、それを再生産する形で職場の後輩や同僚との人間関係を築く唯一の方法だと信じていて失敗し、再就職もままならないなか、作家と再会し仕事を得ることができても同じ失敗をしてしまうのです。それは時代が変わってパワハラやセクハラとされるような人間関係の距離感の取り方を続けてしまっているということだけれど、作家自身のほうは、演劇のプロダクションの現場を通して少しずつアップデートしてきている、という構図。

高校生の頃は作家と親友は同じ認識の上にあって、「イジりイジられ」関係を構築していて、それを両者ともなんとも思わなかったけれど、離れているうちに被害者だった側の認識がアップデートされておらず、加害者だった側が知らず知らずのうちに認識が更新されていたところにあの頃のままの親友が現れ、あの頃の酷さを改めて認識して愕然とするのです。

この構図をベースとして、作家をフックアップしたベテラン女優と新人俳優の稽古のありかたのズレであったり、女優のマネージャーが高校生の同級生の頃に容姿に点数付けしていたことを突きつけられたりといったぐあいに、権力勾配とか人間関係といったものの「普通とされ許容されてしまっていたこと」の時間を経ての変化の数々。創作の現場でパワハラとされることが指摘されることが聞かれるようになった最近だからこそその変化の勾配がキツくて認識されやすいともいえるのだけれど。

全体を通してみると、実のところ、作家と親友のことにしても、ベテラン女優と新人俳優のパワハラにしても問題は何も解決していないし、そう簡単に閉じることの出来ない問題として描いています。枯渇しつつある自分の物語に代えて、親友を「ネタにした」物語で次の新作を走り出してしまっていて、少しの後ろめたさを感じながらも、そのまま走ることしか出来ないということ。終幕近く作家が執筆するテーブルを囲む人々、それぞれの物語。ネタにした親友の影がみえても、それは扉の向こう側に閉じ込めて自分の創作には入れさせない印象的なシーンはほろ苦くて、しかしそれもまた現実なのだろうとも思うのです。 正義感で断罪したりせず、清濁を飲み込んだまま進む、としたことは危うさを感じながらも、作家の正直な気持ちだろうし、その意味で誠実だなとも思うのです。

と言った具合に、わりと重い物語なのだけれどところどころのデフォルメは「かるがも団地風味」。車で迎えに来て疾走する姉であるとか、マンガのようなベテラン女優のたたずまいはクスリとしたり爆笑を生んだり。マネージャーが仕事の一区切りで小さな扉を開けてビールを取り出す仕草を「久米宏」と称するのは、ニュースステーションの最終回だから20年以上前のこと。しかもこんな小ネタで、誰が覚えて居るのやら、と思いつつ喜んだりするワタシです。

作家を演じた板場充樹は苦難はしながらもどこかフラットで居続けていると感じさせるのはイマドキな感じ。無職で現れた同級生を演じた北原州真は無自覚でイノセントな被害者がシームレスに加害側に変わるという難しい役をしっかり。姉を演じた武田紗保は姉御っぽさ、とりわけ弟を想う気持ちの格好良さ。前半で説明を担うディレクターとカフェのアルバイトの二役を演じた百瀬葉はそのダイナミックレンジの広さが印象的。ベテラン女優のマネージャーを演じた北川雅は後半でみせた凛とした強さ。舞台制作者を演じた小澤南穂子はあくまでコミカルで楽しく、新人俳優を演じた内田倭史は観ているこちらが胃が痛くなるような繊細さ。ベテラン女優を演じた宮野風紗音もまたコミカル目一杯だけど、そのなかに風格を醸し出してしまうのがちょっと凄い。

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