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2025.04.24

【芝居】「なんかの味」ムシラセ

2025.4.6 14:00 [CoRich]

ムシラセの新作。95分。4月9日までOFF OFFシアター。

母を亡くして祖母と三人で暮らしてきた娘と父親。父親は入り浸っている音楽バーに娘を呼び出す。10日後にある娘の結婚式で余興ににギター演奏をさせろと言い出す。バーのママもメンバーでバンドで演奏するというし、アルバイトだというママの娘まで巻き込もうとする。

有馬自由演じる不器用め一杯の父親、松永玲子演じる「大阪のおばちゃん」全開でぐいぐい踏み込んでくるママ、中野亜美演じる不機嫌と不躾なアルバイトのなか、橘花梨演じる巻き込まれる娘。それぞれがやけに「立ったキャラ」の4人のシンプルな座組でバラバラに現れるのだけれどなかば後出しジャンケンで徐々に見えてくる関係が親子の想いに結実するのです。ダイナミックに関係が変化したけれど、なぜか安定感を感じさせるのは、娘の立ち位置が天動説よろしく不動で、そこにあり続けるからなのです。

ところが、終盤、物語の枠組みであったはずの結婚式を実は娘が止めようとしていることが明かされ、そこまで安定して動くことのなかった娘の立ち位置なのにあっさりとひっくり返してしまうのです。 姑との仲だったり、許嫁には別に恋人がいて子供が出来たという決定打で返したかと思うと一気に四人が結束に向かって「殴りに行こうかいや演奏」と終幕の清々しさ。そのスピード感が実に見事なのです。

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【イベント】「Ukiyo Hotel bar POLESTAR」Ukiyo Hotel Project

2025.4.5 18:00 [CoRich]

日本発オリジナルミュージカルの上演を目指すUkiyo Hotel Projectの新たなプロジェクト。収益をレコーディング費用に充てることを目的に、小さなバー形式で、トークショーとジャズライブ、小編の会話劇の上演を組みあわせて。1ステージ限り。横浜の在日米陸軍・海軍の横浜ノースドック前にあるバー・POLESTAR。

橋の向こうの米軍基地の話題をベースにして、このバーの成り立ち、前回公演の音楽監督やミュージシャンを交えてのトークやライブ。作家が継続的に作品のモチーフに取り上げるメリケンお浜( 1, 2)がこのバーを訪れて店員の少年と話をする、という短編も。イベント用のPOLESTARと隣接するStarDustは多くの映画やテレビのロケ地ともなっている名所で近くに住んでいてもなかなか足を踏み入れることのないバーだったけれど、そこに入れた嬉しさ。定期的なイベント開催も予定されているとのことで楽しみに。

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【芝居】「煙に巻かれて百舌鳥の早贄」肋骨蜜柑同好会

2025.3.30 16:00 [CoRich]

肋骨蜜柑同好会の新作は一軒の焼き鳥屋をめぐるヤクザと地上げの物語。120分。3月30日まで中野スタジオあくとれ。

ライターを名乗る女が、嘘っぱちだといって語る。
百舌鳥ヶ原(もずがはら)という街の歓楽街、大きな駐車場の奥にぽつんと一軒ある焼き鳥屋。穏やかな三代目。父親に売られたあとにヤクザに引き取られ育てられ、その後店を継いで質の悪い常連客を出入り禁止にしたり、味を向上して店を守ってきた。結婚した妻の兄は市議会議員。暴力団の抗争はいったんおさまってはいるが、店のおしぼりはヤクザのシノギを買わされている。ここの再開発の計画があったが頓挫しているが、新たな計画がもちあがったりしている。

1989年から2005年まで、基本的には同じ一軒の焼き鳥屋を舞台に進む物語。抗争はなりを潜めているけれど、おしぼりとか怪しげな演歌のカセットなどそれぞれのシノギはある小さな街、という前提の枠組みから、縄張り争いや不動産ブローカー、休業していたスナックを助けたり、市議会議員も出入りしていたりと、小さな街にありそうな込み入ったさまざまがギュッとこの小さな店に凝縮。店を守るために客を選び、味を磨き、親戚と助け合い、暴走族上がりのアルバイトを雇って穏やかに日々を暮らしている前半は物語として焦点が捕らえづらいかんじだけれど、抗争を中断しているヤクザのシノギをはっきり断ったために、始まる嫌がらせで積み上げてきたものがどんどん崩れていく後半の凄みと怖さ。とりわけ、刑務所から出所し再び歩みだそうとしたときに更に大切なものを失ってしまう絶望感。多くのものを失い、積み重なる怒り、つまりアウトレイジそのものの終盤は恐ろしく、圧巻なのです。

店主を演じた藤本悠希は穏やかで感情を抑えているようなところに爆発する終盤の凄み。店員を演じた岡村梨加はいいかんじのヤンキー感。ヤクザを演じた三尾周平のインテリヤクザっぽいオーラ、対比するように故人のヤクザを演じたフジタタイセイの伝統的なヤクザっぽさ。常連客を演じた今井勝法の人の良さ、終幕の家族を守るために離れてしまう無念。

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2025.04.15

【芝居】「ヨコハマ・マイス YOKOHAMA MICE」神奈川県演劇連盟

2025.3.23 14:00 [CoRich]

神奈川県演劇連盟の加盟団体による2024年の合同公演。115分。3月23日まで神奈川県立青少年センター・紅葉坂ホール。合同公演とはいえ、800席超の大きな劇場。

路地裏に暮らすネズミたち。地元の赤ネズミたちが暮らす横浜で、新興勢力の黒ネズミたちが根岸の競馬場を拠点に縄張りを奪いつつあった。突然現れた黒富士という大きなカラスが伊勢佐木町を根城にネズミたちに襲いかかる。
赤ネズミの家族たちは平和に暮らしていたが、怪我をして入院していた祖母・ホワイトを黒ネズミたちが襲う。希少種であるホワイトを黒富士に献上して取り入ろうとしている。

家族たちのように暮らす赤ネズミと新興勢力の黒ネズミの抗争と、絶対ヒールなカラス・黒富士をめぐる物語。黒富士に対抗するなかでネズミたちが団結し、暮らしを取り戻すまでを描きます。演出家が言うようにシンプルで泥臭く活気のある物語を多彩な劇団からの役者たちがダンスや歌を交えて演じます。 昭和の家族のような、というとあまりに雑な括りだけれど、どこか粗暴だけれど暖かい物語を大きな舞台でパワフルにときにノスタルジックに上演できるのは、合同公演というバラエティ豊かな役者たちによるところも大きいのです。 さすがにこの規模の劇場となると、声量がある程度必要なのだけれど、台詞が聞き取りづらい役者が混じってしまうのは惜しいところ。しかし物語のシンプルさゆえ、それが大きな問題とはならないし、赤、黒、要となるホワイトといった色遣い、あの広さの劇場を走り回るパワフルなアクションなど、回転舞台に装置を乗せて場面を切り替えるカッコよさ、ラスボス感のすごい黒富士の迫力など見た目に楽しい仕掛けが沢山できっちりエンタメにしあがっています。

家族たちと新興勢力の抗争、黒富士という大きな敵との対決という構図を解決するのは、ネズミたちの団結で、序盤からずっと存在感のある魔法の絵筆や永遠の命を実現するホワイトの存在というファンタジーは未来を描いたり、物語を駆動したりはしても、対決の解決という物語の構図の解決にあまり絡んでないのはもったいない気もしますが、それぐらいに物語もキャラクターも盛りだくさん。二時間弱をきっちり走り切るのはみごと。

希少種のネズミ・ホワイトを演じた環ゆらは腰を痛めて歩けないという設定で動きが少ないのにこの圧倒的な存在感。赤ネズミの母親を演じた仲満響香の肝っ玉母さん感の包容力。父親を演じた小山利英の人情厚くしかし粗忽な人なつっこさ、ドリフのようなドタバタに体をはる身体能力。祖父・ウオッシュを演じたなっきーの大物感。医者を演じた野比隆彦の人の良さに加えて若くはないのにあの広い舞台を走り回るパワー。ギターを背負った隻眼の流れ者を演じた江花実里はほんとに唐十郎か任侠映画かと、立ち姿もカッコよくて見惚れてしまうのです。

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2025.04.08

【芝居】「フルナルの森の船大工」タテヨコ企画

2025.3.22 18:00 [CoRich]

タテヨコ企画の新作はなんとファンタジー風味。115分。3月23日までシアター風姿花伝。

気がついたら森の中、出逢った旅人と訪れた船大工たちが暮らす村。海も川もないのにみな大きな船を誇りをもって作り続けているが、国吏がやってきて、戦争が始まり、国に協力するようにと伝える。
あこがれて教師になった女は部活の顧問となるが、専任の監督は暴力が常態化している。親からの苦情を受けるが、学校は守ってくれない。

追い詰められる若い女性教師の現実と、船大工たちが楽しく仕事をして暮らす村に訪れた危機をめぐるファンタジーを並行して進める物語。 音楽がたくさん組み入れられていて、楽しげに始まるファンタジーの序盤。使うアテの無い大きな船を楽しげに作り、歌と宴会にあふれていて、御船祭りを楽しみにしている人々の姿はまるで白雪姫の小人たちのよう。国吏が戦争への協力をもとめ、自由が奪われていくさまのきな臭さ。国吏も心の中では意味が無いとおもっているのに、役割がそれを許さず、人々が暮らしにくくなっていくこと。

ファンタジーに挟まるように、教育の現場で追い詰められる若い女性教師の現実の姿が語られます。モンスターペアレント、理解のない同僚や上司、部活の外部監督の理不尽。思い詰めた挙げ句に、と言う終盤にいたって、この女教師と彼女が憧れていた恩師、飼っていた猫の三者がファンタジー世界では旅人としてこの世界を訪れていたのだということに繋がります。徐々にこの世界で生気を取り戻していく姿。 亡くなった人々の世界、であるこの世界からの帰還を果たす終幕。

ファンタジー世界の問題は自力で船を手放すことで解決し、現実の女性はこの世界で生きる力を取り戻したところで、恩師や猫のことばによって「死にかけていた」ことから帰還を果たすので、正直にいえば、現実の困難とファンタジー世界で起きる事件は直接には繋がりというわけではないと感じるワタシで、折角ふたつの世界で描いたモノのリンクが女性ひとりの行き来だけなのはちょっと勿体ないなと思ったりもしますが、それでも二つの世界、それぞれの物語はそれぞれに見応えがあって、一本分の時間で二つの物語とも云える濃密さ。

女性教師と旅人を演じた椎木美月は真面目で戸惑う現実の人間の姿を等身大に。ネコを演じたリサリーサは、多くの歌唱シーンでの確かな力。恩師を演じたいまい彩乃や、母親とカシラを演じた舘智子の抱擁するさまが物語の懐の広さを。国吏を演じた西山竜一はヒールに見えて、その実国に対する疑問を内包する奥行きのある役の説得力。

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2025.04.07

【芝居】「ここは住むとこではありません」TEAM FLY FLAT

2025.3.20 18:00 [CoRich]

役者の大石ヨウコと、つついきえによるユニットの旗揚げ。屋代秀樹の作演で100分。3月23日まで雑遊。

借金の挙げ句、ヤクザの持っている事故物件の住人が訴える幽霊の除霊をすることになった霊媒師。幽霊が取り憑いているという男はシャブ中だが、商売はうまくいっていて女も寄り添っている。事故物件に住んでいる男は、隣に住む女と互いに気になっている。そのアパートには若い男女が引っ越してくる。

オカルトとアウトローをコミカルに、という感じで進みながら賃貸住宅をシノギにするヤクザを中心に進む物語から終盤で恋愛の物語。 当日パンフによれば、プロデューサーからの恋とコメディというオーダーに対して作演が好みのオカルトとアウトローを混ぜ込んだ、のだそう。なるほど、その通りの仕上がりで、どう考えても無茶振りなバラバラな要素を半ば力技でねじ伏せて物語にしているといってもいいぐらいなのに、不思議と軽く、気楽に楽しめるのです。

ヤクザを演じた浅倉洋介はイキがって見せているのにどこかいいひとな感じで真ん中の安定感。引っ越してきたカップルを演じた森田亘と鈴木明日歌は実家でも近所だったのに駆け落ち同然で来たけれど、結局はという小さなストーリーをキチンとふたりで。占い師を演じた、つついきえは最初こそ語り部だけれど、やがて巻き込まれ困って、ときどき真実を言い当てるのも安定。事故物件に住んでいる男を演じた瓜竜健司は真面目に生きてきて、しかし喪失感でここにの細やかに。「お隣さん」を演じた大石ヨウコは永遠の乙女の雰囲気が可愛らしい。
チャブ中の男を演じた柘植裕士、キチガイから入って段々マトモになるという脚本の流れはあるにせよ、この2時間弱でその勾配を説得力で演じる力。

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2025.04.02

【芝居】「電磁装甲兵ルルルルルルル’25」あひるなんちゃら

2025.3.16 15:00 [CoRich]

2014年初演作を改訂再演。80分ほど。3月16日まで駅前劇場。

初演では9名だった登場人物は、主役となる「(ロボットが好きなのにパイロットになれなかった可哀想な)タナカ」の清掃員の同僚2名が増えて11名に。未知の敵の襲来が間近となり街の人々は避難して、そこにある地球防衛の基地と、敵を迎え撃つための巨大合体ロボットが訓練の日々。とはいえ、基地の恐らくは訓練がよく見える休憩スペースだか長官室の前室だかみたいなエリアで、見た目にはもうオフィスのバックヤード風情で、そこで交わされる会話もSF設定なのに日常の延長のような些細なことだったりという、あひるなんちゃら的な世界はもちろんしっかりと。

街の風景は残っていて、そこがロボット戦で破壊されたりすることのノスタルジーはあって、それはそれでなんかグッときそうになるんだけど、それは物語を駆動するというよりは人物や物語の奥行きを深める方向で使われていて、いたずらにウエットにしないのもあひる節で楽しいのです。合体に一度も成功できない3人のパイロットは似てない双子と、気の合わない天才と。でも観客の見た目には全然違うのに、物語の中では唯一二人の区別がつくという点で天才、という設定が初演と同じなんだけどほんとに楽しくて。

初演ではルの数7つがつまり、1号2号4号で、どう組みあわせても1から7号と綺麗に特定出来るという設定をこのロボットの話に組み込んだことに感激した私です。二進数が全く理解出来ない人とのわちゃわちゃも楽しく。 でも1号、10(イチゼロ)号、100(イチゼロゼロ)号にすれば良かったんじゃないかとおもったりするけど、たぶんそういうことじゃないんだけども。

ロボット好きなだけどパイロットになれない清掃員を演じた根津茂尚は可哀想とは言われても可哀想さは減ったのかなと感じたのは、同僚の二人(篠本美帆、杉木隆幸)がときにツッコミ時にとんちんかんなことをいいながらもいい感じの仲間感ができるようになったからかな、と思うワタシです。 長官を演じた石澤美和はなんかそれなのに腰は低くて親しみやすさ全開なのが楽しい。天才パイロットを演じた木村はるかは、尖って吠えてる感じのある種の若さが眩しいほど。似てない双子を演じた上松コナン、堀靖明の、でもなんかほっこりさがよくて 地上要員であるリーダーを演じたまつきみちこは不思議な雰囲気はそのままに相変わらず奇跡を起こし、 自覚しているコネ入社を蜂井玲がとんちかんなことを言い出す間の面白さ、それに振り回されるのに離れない松本みゆきもすっかり、あひる節に。博打好きのエンジニアを演じた平川はる香はクールなのにクズ、みたいな楽しさ。

子供が騒いでも、携帯を切らなくてもいい、鳴らしてもみんな優しく、という前説アナウンスが心地いい 劇団で、本当に客席の雰囲気も治安もいい劇団であることもワタシが通い続ける理由だけれど、ワタシの観た回、客席ど真ん中で上演中ずっとスマホを煌々と光らせてなんか読んでた客は、なあ。舞台と観客の互いの敬意を裏切ってるだけなので、帰りの電車で傘を失くして困ってほしい呪いを。

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