« 【芝居】「夜明けのジルバ」トローチ | トップページ | 【芝居】「業界~恥ずかしながら、ボクらがこの世をダメにしてます~」Tom's collection »

2025.03.20

【芝居】「ズベズダ」パラドックス定数

2025.2.24 13:00 / 18:30 [CoRich]

2021年の青年座上演作(180分)を、作家自身の劇団で大幅にパワーアップして120分✕三部作として上演。3月2日までザ・ポケット。

第二次世界大戦後、ソビエトはナチスドイツが開発したV2ロケットをもとに、多段式ロケットを開発し、人類初の人工衛星を成功させる。 慌てた米国は宇宙開発を猛追するなか、ソビエトは有人宇宙飛行を成功させるが、その技術は核戦争が現実味を帯びてくることになる。 米国の猛追が続き、やがてソビエトは追い詰められていく。

ソ連の宇宙開発に関わった科学者、プロジェクトのトップ・セルゲイとエンジンの開発トップ・グルシュコの「軍事的な意味から名前を残すことを許されなかった英雄」二人を核に、宇宙開発を積極的に推し進めたフルシチョフ、「国威発揚のために名前を残され、縛られた英雄」ガガーリンを絡めながら、戦後すぐから現在につながる宇宙を目指す人々の物語は、まるで大河ドラマのよう。

時間をたっぷりとれるようになった三部作、革命記念日に合わせた計画など、国威発揚と軍事を背負わされた悲喜こもごもの中盤をややコミカルに描いているし、フルシチョフの人の良さみたいなものも楽しく、偉業をなしとげた彼らにも日常がある、という感じでもあります。 いっぽうで青年座版では、グルシュコが偽りの告発でセルゲイを陥れたシーンももう少し書き込まれていた印象だけれど、今作ではそこはほんの少しになり、本心では許し会えない二人の、しかしトップの技術者として実力を認め合うバディ感が強調されているように感じます。

ダントツで宇宙開発のトップを走った第一部、アメリカの急速な追い上げと弾道ミサイルの影が忍び寄る第二部、有人宇宙開発は減速し地球上でのコロナ禍や戦争など現在に続くゆるやかな衰退や老いを描く第三部という構成。物語としてダイナミックで圧倒的に面白いのは第一部第二部だになるのは仕方ないけれど現在の私たちに繋がる第三部をわざわざ描くというのも作家の心意気。

エンジン設計者を演じた神農直隆の人間臭い造形の奥行きがすばらしい。開発主任を演じた植村宏司のトップで走り続ける牽引力の格好良さ。フルシチョフを演じた今里真の軽薄さと宇宙開発の思いの人たらし。国防工業大臣を演じた谷仲恵輔の絵に描いたようなオジサン感がなんか微笑ましい。久々の出演となった前園あかりが戻って来たのが嬉しいワタシです。

劇団サイトに置かれている人物相関図と背景の宇宙開発のまとめがとてもいいんだけど、まさか劇場に一枚掲示されてるだけとは思わず。慌ててダウンロードしてセブンイレブンのネットプリントで印刷したワタシ。カラーのこれを配るのはコスト的な厳しさがあるかもだけど、劇団がネットプリント載せて各自セブンイレブンで印刷、なんてやってくれたらうれしいかもなと思ったりします。

|

« 【芝居】「夜明けのジルバ」トローチ | トップページ | 【芝居】「業界~恥ずかしながら、ボクらがこの世をダメにしてます~」Tom's collection »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【芝居】「夜明けのジルバ」トローチ | トップページ | 【芝居】「業界~恥ずかしながら、ボクらがこの世をダメにしてます~」Tom's collection »