【芝居】「業界~恥ずかしながら、ボクらがこの世をダメにしてます~」Tom's collection
2025.3.2 17:00 [CoRich]
コロナ禍で知られるようになったノーミーツ主宰による新作。110分。
大学サークルから演劇を始めた男は、脚本家として売れるようになり、AI映画を流行らせたメディアクリエイターを名乗るようになる。大きな企業の新事業としてAIロボットとの映像作品の脚本を任され、軽く受けることにする。業界らしく人脈を作るためのパーティにいったり、後輩の別の映画の企画にも関わろうと、忙しく立ち回る。 しかし脚本をなかなか書くことができないし、後輩とのプロジェクトもうまくいかない。使えないと思ってた若者は海外で活躍している。
作家のnoteによれば、クリエータとして活動で生活ができるようになったものの、どこか罪悪感のようなものが積み重なって書いた作品だといいます。業界のあるあるネタ、なのかどうかはよくわからないけれど、うまく立ち回って人脈とひらめきで脚光をあびても、「本物」のクリエーターが作り出すものにどこかかなわないと感じている風景を濃密に描きます。
大学サークルの旗揚げだった劇団はいまいち売れてはいなくて、そこから就職して抜け出した男だけれど、残された劇団員たちは真剣だし、小さな賞だけれど評価を得て進んでいるし、映画会社でそれっぽく企画をでっちあげてもそれは見透かされていて、そこに居たコミュニケーションがあまり上手じゃなかった監督志望の若い女が気がつけば海外で評価をうけていたり。業界っぽい人脈パーティで、あれとこれのコラボ、みたいな話はあったとしても実際に何かを持っている人でなければなにかに結びつくこともないのです。忙しくたちまわっていても、何かを生み出したときに評価され、その余韻であるていどやり過ごすことはできても、ものを作り出し続けて評価され続けることの積み重ねでその場所にはいられない、ということの残酷さ。 彼にしても、最初に評価されたAI映画というのは、その時点のいろいろなバランスできっと評価に値するひらめきと出来上がりだったと思うのです。でも、それは出発点にすぎなくて、クリエータとして生活し続けるということは何度も評価を受けていくことでしかなしえない、ワタシにはわからない怖さ。
劇団の現在の演出家や時間調整全力投球するスタッフを演じたオツハタは、他にもこまごまと印象的で目を奪われます。腰の低い有能な劇団制作やディレクターを演じた高野ゆらこは安定してきっちり任せられる心強い人物の説得力。当日パンフには役者の名前しかなかったけれど、配役表を出してくれたのもありがたい。でも、ホントは当日パンフに載せるべきだとは思います。
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