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2025.02.24

【芝居】「Come on with the rain」ユニークポイント

2025.2.8 19:00 [CoRich]

静岡県・藤枝で活動するユニークポイントの新作。白子ノ劇場に変わる新劇場・ひつじ(穭)ノ劇場で。2月11日まで。70分。

医師の夫と専業主婦の妻。夫の学会発表のついでに寄ったベトナムの避暑地・ダラット。韓国人は多いが日本人は少ない町。 たまにはと安い宿に泊まり帰国の日、台風の直撃でフライトの予定が崩れ、宿のロビーにいる。妻は近所のカフェで出会ったバックパッカーの女をつれてくる。 女は教師だが半年以上休職しているが、長く一人旅を続けている。 宿にはオーバーステイの不法滞在の日本人がいるが、ホテルのオーナーと中が良く自由気ままに暮らしている。久しぶりの日本人に喜び、 近所の名物店に誘い、店をみてくるとロビーを出るが、外は嵐だ。

安宿で日本人ばかりで時間を潰す話となれば青年団の名作「冒険王」が思い浮かびますが、携帯のない時代の青年バックパッカーたちを描いた冒険王に対して、こちらはアラフィフアラ還世代でスマホをもち、地位も財産もあったりなかったりの格差というか違うステージにいる人々。裕福で子育てがおわった夫婦、どちらかというと権力側の夫と、専業主婦だったけれど社会と繋がりたい気持ちを持つ妻と。一人旅の女はメンタルを病み離婚し母親との二人ぐらしのなかの束の間の長い一人旅、オーバーステイの男は自由どころか不法滞在と。年代が同じぐらいでも、経済的にも考え方も立ち位置が遠く離れてしまった人々。すべてが金太郎飴のようで同質化している雰囲気だったあの時代と、格差はあれどそれぞれの顔がある現在と。いい悪いではなく、日本という国のありようが変容してしまった、ということを感じるワタシです。

どこか斜に構えた感じはあっても、目の前にけが人がいれば人のため働こうという自然な気持ちの夫、夫に蔑ろにされてきたと感じていた妻が、夫の「二人で穏やかに暮らせればよい」という言葉にキュンとする気持ち。一人旅の女が自分をみつめなおし、詩をかみしめ、味わい、再び前を向くこと。オーバーステイの男は自由で縛られたくなくどこか幼ささえもちつつ、現地の人と交わり、距離感と誠意といたずら心でしなやかに生きているけれど、ちょっと悲しい終幕。 それぞれの人生の一段落、変わること変わらないこと、見渡す周囲の風景で自分をみつめなおすことが、自分が今立っている場所に近く感じるワタシです。ワタシよりたぶんちょっとだけ年上の、劇団・成金天使時代からちょっと見ている劇団とワタシも歳を取ったなとおもったり。

現地人オーナーを演じた古市裕貴は人なつっこさ、ずっと居続ける他人の視線が優しく。夫を演じたナギケイスケはややいけ好かない感じだけれど、終盤での仕事に対する矜恃の格好良さ。妻を演じた西山仁実は秘めていた気持ちを旅先ゆえに解放して先に進める萌芽。オーバーステイを演じた古澤光徳は人たらしのバイタリティが舞台にテンションを。女性のバックパッカーを演じた山田愛は静かに考えていて一歩を歩み出す希望を細やかに。

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