【芝居】「病室」普通
2024.12.7 18:30 [CoRich]
2019年初演、三鷹での2021年の再演(未見)から間をおかず同じ三鷹での三演。12月15日まで三鷹市芸術文化センター星のホール。130分。
病院の大部屋、4つのベッド。
長く患っていたが主治医が替わり処方が変えられたからか、緊急で救急車で運ばれてきた片岡は妻と娘が毎日のように見舞いに訪れる。ガン患者で車椅子無しには歩けない佐竹は入院が長く大声で少々不躾な質問も浴びせる。同室の小林も長い。少し若い橋本は見舞いに訪れた娘が突然離婚して戻ってきたいと言い出して戸惑う。
物静かに見える片岡は早くから持病を持っていて、息子に厳しくあたり、口論の末、息子に病気の自分の面倒を見ろと言い放って以来、息子との関係は良くない。小林もかつて家族を怒鳴るような傍若無人で娘しか見舞いには訪れていない。佐竹には子供はおらず、日々のケアは専任の看護師がついているが妻は見舞いには現れない。片岡は数週間で退院し、佐竹は転院することになる。
地方の病院の大部屋の四人の「おじさん」たちと、訪ねて来るあるいは来ない家族たちの物語。もう入院が長くて諦めの境地だったり、どうしてこうなったの理不尽を本人も家族も感じていたり、まだ若く娘を支えなければいけないという気持ちの前のめりだったりと、同じ病室だけど年齢や「ステージ」が違う人々を並列に見せるのです。老人特有の不躾や会話のままならなさはあれど基本的には穏やかではある現在だけれど、ところどころに挟まれる、何人かの男たちの過去の家族に対する暴言といった仕打ちが同じようであっても、それでも見舞いには訪れるか、疎遠がちになるか、暮らしてきた家族の関係のグラデーションになったりと、家族の関係は一筋縄ではないのです。茨城弁特有の、「キツく聞こえがち」な言葉も実に効果的。
若い一人は、もう少しその一歩手前、若い娘が離婚を考えていると戸惑い、これからも支えなければいけないという気負いは、この場の男たちの中ではむしろ前向きに感じられるのです。あるいは理学療法士と看護師が実は付き合っている、という会話はその「家族になる前」の段階だし、親には連絡したくない男は家族の側からの見え方を並列して提示するよう。
ガンの一人は、不躾に質問責めにしてヒールかとおもいきや、登場人物の背景を整理する機能をもちつつ、子供もなく余命幾ばくかであり、同室の男から退院して一緒に生活する提案を受けるがそれはもう叶わないことを自覚しつつも夢想はする気持ちの動き。後半でみせる妻に病気を打ち明ける回想は、子供はないくてもいい人生だったといい、二人は仲睦まじくみえます。が、妻は見舞いに来ているようには見えないし、免許がなくこの土地で一人では暮らせないだろうとも心配もして、どこか不穏な感じではあるのです。妻が外国人と感じるワタシですが明確にそう示されているわけでもなく。同じ役者が演じる看護師は選任らしく転院のことも日々のケアも親身だけれど、恋愛感情じみたものが一切描かれないのです。男には「そう」見えているのかなぁと思えたりする配役の妙。姿をみせない妻のことも転院はもう先がないのだろうということも不穏なことばかりなのに、あくまでも穏やかな日々として描かれている、という不思議な後味なのです。
2019.9 スタジオ空洞 |
2021.7-8 三鷹市芸術文化センター 星のホール(未見) |
2024.12 三鷹市芸術文化センター 星のホール |
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入院患者・片岡 | 澤唯 | 小野ゆたか | 武谷公雄 |
入院患者・佐竹 | 用松亮 | ← | ← |
入院患者・小林 | 渡辺裕也 | ← | ← |
入院患者・橋本/医師 | 折原アキラ | ← | 浅井浩介 |
片岡広也(息子)/遠藤タケル(理学療法士) | 函波窓 | ← | 重岡漠 |
片岡あみ(娘)/小林の娘 | 古田希美恵 | 安川まり | 上田遥 |
片岡の妻 | 松本みゆき | ← | ← |
橋本の娘/小林の担当看護師(遠藤の恋人) | 小林未歩 | 小野寺ずる | 青柳美希 |
佐竹の妻/佐竹の担当看護師 | 石黒麻衣 | ← | ← |
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