【芝居】「父と暮せば」酔ひどれ船
2025.1.11 18:00 [CoRich]
西嶋咲紀の一人ユニット、酔ひどれ船 の公演、「父と暮せば」をがっつり二人芝居で。90分。1月20日まで北千住BUoY(ブイ)。
原爆によって亡くなった父と「暮らしている」女は勤めている図書館の利用者で、原爆資料を集めたいという男に好意を持たれている。父親は応援するが、女は自分が幸せになってはいけないという呪縛にとらわれている。
映画化もされている有名な一本だけれど、わたしはリーディング公演を一度みているだけで、演劇公演としては初めてのワタシです。
元は銭湯だというBUoYの形そのままの「素」舞台での上演。食器の類の他に出てくる小道具は、原爆瓦や曲がった瓶、ガラス片といった原爆の持つエネルギー受けて変質してしまった「物体」の数々で、もちろん小道具だとわかっていても、なかなかぎょっとする「物質」なのです。
父親を演じた藤森太介は飄々としてるようでいて、力強く絞り出すような無念の思いのパワーがすごい。とりわけ、後半の「一寸法師」を原爆瓦などを絡めるかたちで鬼退治する場面の鬼気迫る言葉の強さが印象的。娘を演じた西嶋咲紀は生き残ってしまったがゆえの原爆症への恐れと父親を見殺しにした自責、なくした友人のへの思いと盛りだくさんの感情に必死で耐える姿。
男が原爆資料を運び込んでくる日の描写、一歩引いてみれば、自分で男のために風呂を沸かし、ビールを買ったりともてなす準備をしているわけで、自問自答を亡き父相手にやりつつ、しかしある種の欲望に惹かれてしまう自分の姿でもあるわけで、生と死が隣り合わせとなる様をなかなかに繊細に描き出しているんだなと、再発見するワタシです。
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