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2025.01.12

【芝居】「gaku-GAY-kai 2024 贋作・桜の園」フライングステージ

2024.12.29 18:30 [CoRich]

年末恒例の企画公演。休憩20分を挟み200分。12月30日まで新宿スターフィールド(旧タイニイアリス)。

第一部「桜の園」
広大な土地を持つ女装二人がただ没落していくまま暮らしている。それを気の毒に思い、土地を貸して経済的にまわるようにしようと商人が手を差し伸べるが、それを認めず、ただ没落していく。

第二部:

  • 「アイハラミホ。の驚愕!ダイナマイトパワフル歌謡パフォーマンスしょー」アイハラミホ。
  • 「佐藤 達のかみしばい 僕の話をきいてください」 佐藤 達
  • 「水月モニカのクイアリーディング」 水月モニカ
  • 「ドラァグクィーン ストーリータイム」 関根信一
  • 「ふんわり小夜子ショウ リヴァイタル:レシタル」 モイラ
  • 「ジオラママンボガールズの明鏡止水」 ジオラママンボガールズ
  • 「中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト vol.16」 中森夏奈子
  • 「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」 エスムラルダ

「桜の園」は、何回かは観ているのに( 1, 2) 例によってストーリーを相変わらず覚えてないワタシです。 新宿とゲイタウンという土地に合わせて、地下鉄が通るから地下が上がるとか、あるいは終幕、眺めていた森が新宿御苑になり、残り半分が二丁目のゲイタウンになる、という落とし込みの嘘が優しく、楽しい。

第二部のショーはいつも通りの華やかなラインナップ。 「アイハラミホ。の驚愕!ダイナマイトパワフル歌謡パフォーマンスしょー」のパワフルなダンス、オリジナル曲「静岡の激しいミカン 」も楽しく。
「佐藤 達のかみしばい 僕の話をきいてください」 は、いつもの通りにほっこり優しく。クロスカントリースキーで置いて行かれるところから暴れん坊将軍登場が出てきたり、お母さんのカレーの話からついにしずちゃんが初登場で嬉しい。
「水月モニカのクイアリーディング」は、岩に毎年訪れる小鳥(たち)から、緑が作られていく壮大な物語。
「ドラァグクィーン ストーリータイム」 は、我が輩は猫であるの中巻の前書き、正岡子規への手紙(青空文庫)、奥行きのある一編。
「ふんわり小夜子ショウ リヴァイタル:レシタル」 は、和服姿で艶やかに。歌を歌うのは初めてかしらと思ったり。
「ジオラママンボガールズの明鏡止水」は、パジャマ姿の二人、片方がほぼ動かないというのはちょっと新鮮。
「中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト vol.16」 は、いままではほぼ愚痴+カバー曲みたいな感じだったけれど、活躍した2024年、ピアノ生演奏をつけて王道に。なんか嬉しい。
「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」 で「エスムラルダでマンボ」で年越しの気分満点で。

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2025.01.11

【芝居】「ケレン・ヘラー」くによし組

2024.12.22 16:00 [CoRich]

2018年初演作を再演。110分。12月22日までシアタートラム。

https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2018/06/post-28ab.html ヘレン・ケラーを題材に人気となった女性お笑いコンビだが、不謹慎だと活動休止に追い込まれる。諦めきれないアフロ女はお笑いロボットを相方にしたり、突如現れた「神様さん」に勇気づけられ、周囲の人々をネタに動画サイトで人気が出るが。

売れそうになるきっかけを掴みながらもネタを封印されてしまい、しかしその道を諦められない芸人のあがき。ひたすらに注目され売れたい芸人が、周囲の人々のLGBT暴露や過去のAV出演などを晒して注目を集め、ロボットを相方にしたり盛りに盛った自叙伝を出してみたりするうちに、ロボットになり変わられたり、ドラッグの影響で視覚を失ったりしても、まだなお芸人として生きる姿は、芸かどうかすらあやしい、耳目を集めることに取り憑かれてしまった芸人の業とでもいうような姿。

初演時点でもリアルタイムに見聞きする芸能界とかSNSといったものを取り込んだ物語だと感じていたけれど、ロボットの姿はAIの壁打ちのような感じでよりリアルに身近なことになりました。また、さまざま晒して耳目を集めるのも変わらず私たちの日常で見かけることのままです。笑うに笑えない現実を感じる、わたしたちの写し鏡のように感じるのです。 本道から外れハッタリやごまかしをあらわす「ケレン=外連」と、いわゆるメンタルヘルスの弱さを表す俗語「メンヘラ」(の一部)を組み合わせたと思われるタイトルが、思えば秀逸。初演のときは気づかなかったワタシですがw。

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【芝居】「幻の壁」螺旋階段

2024.12.21 18:00 [CoRich]

横浜と小田原の二拠点を中心に公演する2006年旗揚げの劇団の2009年初演作(当然未見)の再演ですが、台詞はほぼ書き直しているようです。95分。12月22日まで、小田原市生涯学習センターけやきホール。

二人の刑事が活躍するサスペンス小説の第三弾。親を殺した犯人への復讐を誓う女と志を同じくする男が共謀する。刑事に近づき情報を手に入れようとするうちに刑事に心惹かれる女が追い詰められるクライマックス、物語が進まなくなり、何度も繰り返している。埒が明かないと考えた登場人物たちは「向こう」へ行くことを決意する。
探偵事務所に人捜しを依頼しに現れた女は編集者で行方の判らなくなった作家を探してほしいという。同じ事務所に小説から出てきた三人も現れ、小説の作者を探してほしいという。

物語の世界から出てきた登場人物たちが引き起こすあれこれ、というとキャラメルボックス「サンタクロースが歌ってくれた」 (1, 2, 3)を思い出すワタシです。 もちろん物語も枠組みも違っていて、ロマンチックな雰囲気のサンタクロース〜に比べると、もっとほろ苦い大人の恋愛といった雰囲気を纏います。小説の中での追われる女と追う刑事に芽生える恋心と、「出てきた」世界での消えた作家の男と、探す編集者の女という二つの恋愛をからめつつ、作家は物語の中では追われる犯罪者であってみたいな入れ子になっていて、姿を消すという動機も実にほろ苦くて。

この劇団、探偵の三井と助手の里中のコンビが登場するけれど、物語としては恐らく繋がっていない作品が何本もあるようです(1)。劇団サイトには2012年からの履歴がありますが、その中でも3本ほどある、なんてことがわかるのも、サイトに役名・役者名込みの履歴を残していているからわかることでありがたいのです。演じる水野琢磨と露木幹也はコミカルをベースに、しかし人情派だったりもしてしなやかで。今作では終盤の「小説の中の犯人を笑顔で終わらせてほしい」の一言にも説得力。

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2025.01.05

【芝居】「おわるのをまっている」贅沢貧乏

2024.12.15 14:00 [CoRich]

贅沢貧乏としての上演は5年ぶり、という新作。100分。12月15日までシアタートラム。

不調が続き、どうしてもやる気が起きない女。夫が海外出張に同行しないかと誘うのに乗って行くことにする。 ずっと部屋にいる妻は、清掃のスタッフの中に幽霊らしいものが混じっているのに気がついてしまう。 夫は出張の仕事も楽しそうでやたらにポジティブで移住まで口にするほど気に入っている。 ホテル側もその存在には気づいていて、口コミを気にするマネージャーは平穏に収めようとする。 妻の中学の時の同級生が移住していてInstagramを見て会いに来る。 隣の部屋で長期の宿泊をしている女はずっと猫を探している。

体調不良が続いた女が気分を変えるために夫と訪れたリゾートホテルでみた不思議な景色、といった雰囲気。現実なのか夢なのか曖昧なまま進む物語に現れる人物たちは奇妙だったりやけに人間臭かったり、はては幽霊までといったバラエティに留まらず、穴に落ちて大冒険になったり、10年前に一度だけ出版した本のことが出てきたり、海外で暮らす同級生がいったこととか。

いつまでも、ふわふわと続く物語だと思っていると、突然の暴動に巻き込まれ、大雨と嵐に見舞われて夫も現実に戻り、女もまた幽霊が見えなくなって現実に戻ります。 当日パンフなどでいう繰り返す「うつ」を描く物語をあまり見かけない気はしますが、なるほど、うつとそうでない状態を繰り返して見える風景かと思うと腑に落ちます。単なる夢ではないことを象徴する「戻された靴下」がある幕切れは前向きに動き始めたことを感じさせます。

二組の壁というかユニットになった背景を自在に動かして、ホテルの一室から地下の迷宮まで表現する舞台装置が軽快で自在なのです。

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2025.01.04

【芝居】「病室」普通

2024.12.7 18:30 [CoRich]

2019年初演、三鷹での2021年の再演(未見)から間をおかず同じ三鷹での三演。12月15日まで三鷹市芸術文化センター星のホール。130分。

病院の大部屋、4つのベッド。 長く患っていたが主治医が替わり処方が変えられたからか、緊急で救急車で運ばれてきた片岡は妻と娘が毎日のように見舞いに訪れる。ガン患者で車椅子無しには歩けない佐竹は入院が長く大声で少々不躾な質問も浴びせる。同室の小林も長い。少し若い橋本は見舞いに訪れた娘が突然離婚して戻ってきたいと言い出して戸惑う。
物静かに見える片岡は早くから持病を持っていて、息子に厳しくあたり、口論の末、息子に病気の自分の面倒を見ろと言い放って以来、息子との関係は良くない。小林もかつて家族を怒鳴るような傍若無人で娘しか見舞いには訪れていない。佐竹には子供はおらず、日々のケアは専任の看護師がついているが妻は見舞いには現れない。片岡は数週間で退院し、佐竹は転院することになる。

地方の病院の大部屋の四人の「おじさん」たちと、訪ねて来るあるいは来ない家族たちの物語。もう入院が長くて諦めの境地だったり、どうしてこうなったの理不尽を本人も家族も感じていたり、まだ若く娘を支えなければいけないという気持ちの前のめりだったりと、同じ病室だけど年齢や「ステージ」が違う人々を並列に見せるのです。老人特有の不躾や会話のままならなさはあれど基本的には穏やかではある現在だけれど、ところどころに挟まれる、何人かの男たちの過去の家族に対する暴言といった仕打ちが同じようであっても、それでも見舞いには訪れるか、疎遠がちになるか、暮らしてきた家族の関係のグラデーションになったりと、家族の関係は一筋縄ではないのです。茨城弁特有の、「キツく聞こえがち」な言葉も実に効果的。

若い一人は、もう少しその一歩手前、若い娘が離婚を考えていると戸惑い、これからも支えなければいけないという気負いは、この場の男たちの中ではむしろ前向きに感じられるのです。あるいは理学療法士と看護師が実は付き合っている、という会話はその「家族になる前」の段階だし、親には連絡したくない男は家族の側からの見え方を並列して提示するよう。

ガンの一人は、不躾に質問責めにしてヒールかとおもいきや、登場人物の背景を整理する機能をもちつつ、子供もなく余命幾ばくかであり、同室の男から退院して一緒に生活する提案を受けるがそれはもう叶わないことを自覚しつつも夢想はする気持ちの動き。後半でみせる妻に病気を打ち明ける回想は、子供はないくてもいい人生だったといい、二人は仲睦まじくみえます。が、妻は見舞いに来ているようには見えないし、免許がなくこの土地で一人では暮らせないだろうとも心配もして、どこか不穏な感じではあるのです。妻が外国人と感じるワタシですが明確にそう示されているわけでもなく。同じ役者が演じる看護師は選任らしく転院のことも日々のケアも親身だけれど、恋愛感情じみたものが一切描かれないのです。男には「そう」見えているのかなぁと思えたりする配役の妙。姿をみせない妻のことも転院はもう先がないのだろうということも不穏なことばかりなのに、あくまでも穏やかな日々として描かれている、という不思議な後味なのです。

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【芝居】「お江戸人情活劇 五席」麦の会

2024.11.17 16:00 [CoRich]

落語を題材にとって、オムニバス形式の5篇。5分と10分の休憩を挟み120分ほど。初めての会場・ビエラスタジオ蒔田(まいた)で11月17日まで。

初めての子ども、縁起のいい名前をつけてもらおうと「寿限無」
正月、天神さまにお参りに連れて行ってもらう代わりにあれ買ってくれこれ買ってくれとは言わないと約束したはずだが「初天神」
休憩5分
遊女に惚れた男の注ぎ込みぶりを心配した叔父は、金にしくじって死ぬと告げたら女がついてくるかを試すようにという。渋々夜中の水辺に来た二人だが離れて飛び込もうというが「辰巳の辻占」
酒好きのあまり妻子が出ていった男、酒を絶ち真面目に働き身を持ち直したある日、偶然三年ぶりに子どもに再会する。小遣いを渡すが父親からもらったとは言わないように口止めをするが、大金を持っていることを怪しんだ妻は「子はかすがい」
休憩10分
番町皿屋敷のお菊は絶世の美女と噂が立ち、一目見ようと井戸に人々がどんどん集まってしまう「お菊の皿」

割と知られた滑稽噺を中心に、落語を下敷き、というよりはほぼそのままの演劇としての上演。寿限無の子どもや初天神のみたらし団子が他の作品に顔を出したりと、互いもゆるやかにつながりが見え隠れするけれど、あくまでもそれぞれの噺をコンパクトに親しめる形にまとめたものになっています。寿限無・初天神は子どもが出てきて仕草や言葉の楽しさが存分に。恋だの心中だのと少々穏やかじゃない辰巳の辻占は死にたくない気持ちがコミカルに、夫婦親子の愛情目一杯の子はかすがいはしっかりと物語を見せる感じに。お菊の皿は、昨今の地下アイドルっぽい味付けになっていて、照明や音響含めて実に今っぽくて、幕切れにふさわしく華やかに、どたばたと明るく。戦後すぐに市民劇団として旗揚げした長い歴史を持ち、幅広い客層を集め、賑々しい公演なのです。

ビエラスタジオ蒔田はスーパーと飲食店を核とする小さなモールの3F、広いテラスが気持ちいい。上階のジムのスタジオレッスンと思われる物音が聞こえたりはするけれど、まあ大きな問題ではありません。

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