【芝居】「デウス・エクス・マキナ 〜完璧な首相〜」げんこつ団
2024.11.16 19:30 [CoRich]
げんこつ団の新作。11月17日まで小劇場楽園。公演終了後に、大量の舞台写真や戯曲が劇団サイトで公開されています。
国民全てが幸せになると訴えて当選した党首の首相就任会見直後に国会議事堂が回転し、表裏がひっくり返り国民達が書き割りになってしまう。居合わせた国会議員は首相を怪しく思い、取材していて命を落とした記者の娘にその調査を託す。
二人は潜入した国会議事堂地下で回転の仕掛をみつけ、裏方スタッフに連れられ長崎の隣「芝居のまち」大入県を立て直そうと60年前に上京した男が首相と同じ名前であること、上京した男が劇団に入りと並行して働いていた町工場で働いていたことを突き止めるが、すでに亡くなっていた。
すべての国民が平等に幸せになる、という誰も否定できないお題目で、しかし国民たちを書き割りとしか見えていない、あらかじめ台本のあるショーのように仕立てる「劇場型政治」を見せられているのだ、ということを壮大なスケールで描いていると感じるワタシです。そうなってしまった書き割りの側の国民たちは、演劇のまちで暮らしている、食べるものがないのに食べるマイムで生活している、補助金だよりの先細りで命を繋いでいるのに実態はほぼ滅んでいるというのがどこか自分たちの生活の地続きの先にあるようだし、腐敗したパフェで厳戒態勢なのに税金をつぎ込んだCMはハッピーを演出するものばかりというのもどこかで聞いたような。 その枠組を持ちながらも、その真ん中にいる首相自身はあくまでも正しいことをしていると信じて疑わず、それを成し遂げてしまった、ということの怖さ。
ずいぶんと直接的に社会批評の中身だけれど、私たちの今現在の姿をいろんな確度で描き、しかしコメディとしての楽しさ。じっさいのところ2時間で描くにしてはずいぶんと込み入っていた物語で、見応えたっぷり。記憶力がザルなわたしには戯曲の公開が有り難いのです。ガーディアンガーデン演劇フェスティバルで見かけてから30年弱すべてを観ているわけではないけれど、高みに上り詰めたなぁと感慨深いワタシ。
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