【芝居】「ノーと言えない」超時空劇団 異次元中毒
2024.10.12 20:30 [CoRich]
宮崎の劇団・異次元中毒、初見です。3人の男たちの45分。13日まで信濃ギャラリー。
牧場の休憩所。作業服の男たちが戻ってくる。しかし落ち着かず、息子の三者面談とか、読んでいるSFの話とか、過去の農業大学校での経験など世間話をして時間を潰している。 が、決められた時間は迫っている。気が進まないが、これは決められたこと。ノーとは言えない。
この場所で、帰るわけにもいかず、しかし進んで作業をしたくもなくて、時間を潰す男たち。 息子の三者面談の話は、無駄とも思えるほどクオリティーの高いミュージカル風の歌声とダンス。「敷板が高い」の誤用をめぐる蘊蓄だったり、 分厚いハードめなSF小説を指して、「薄い本」は読まなないのかといわれてドギマギしたり、(薄い本=いわゆる二次創作同人誌) 実習で馬が逃げた話など、脈略なく語られる、しかし一つ一つはやけに面白かったりする前半。
時折挟まる不穏な秒針の音はあるけれど、もうすぐ夏のはずなのに「外は真っ白」になっているということで、不穏さは決定的に。 終演後挨拶によれば、2010年の宮崎県での口蹄疫をめぐる牛や豚の殺処分がモデルなのだといいます。 ワクチンも打っていて、症状は出ていないのに全数殺処分にしなければならないこと、家畜なのだから結局は殺すにしても、人間なら殺処分にはしないのにという人間のエゴなど。 畜産の作業者だからこその気持ちの持ちよう。役所からの指示、それにノーと言えないこと。「殺した意味は、ソトのやつが決めてくれる」の一言が重いのです。
ごく短いものがたりなのに、軽い語り口の前半、男たちの大真面目な馬鹿騒ぎから、命をめぐる実にシリアスな物語に、シンプルに一直線に語る真摯さがとても印象的なのです。
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