【芝居】「三ノ輪の三姉妹」かるがも団地
2024.9.7 18:00 [CoRich]
かるがも団地の新作。三鷹市芸術文化センターが選ぶ MITAKA Next Selectionの一本。120分。9月8日まで三鷹市芸術文化センター 星のホール。
三ノ輪に住む箕輪家の次女は母と二人暮らしの会社員だが、母親の入院、余命宣告を受け見舞いの日々だが、当の母親は手際よく身の回りを整理しているし母親の親戚との付き合いはほぼなくなっていて、あまりすることはないが、勤め先のベンチャーでは社長のハラスメント、要領の悪い新入社員に挟まれている。
三姉妹の二人は家を出ており、長女はだめな自分でも褒めてくれていた父親が亡くなり、無愛想で勉強もあまりできない長女は実家を出て連絡もつかないまま10年が経っている。アパレルに就職したかった三女は居酒屋のアルバイトで副店長にもなり人望も集めている。白金高輪の実家住まいの恋人に同棲を提案するが男は怖気づいている。
ある日、次女は長女を偶然見かけて再会する。職を転々としたものの、造園業についていて実は近くに住んでいることがわかる。
三姉妹で母親を見舞うが、母親は余命どおりにどんどん弱っていく。持ち家だと思っていた家は借家だったし、家族にだけはやさしかった父親が実は店員に怒鳴ったり、人にぶつかって謝らないような男だったなど知らないこともたくさんあった。
現在の私たちの地続きの場所に暮らす三姉妹たちの物語を、長い確執や葛藤を抱えた姿をときにコミカルを交えながら濃密に描きます。 事務力と人の調停を背負わされがちな次女を中心に、コミュ力低め無愛想で容量も悪い長女、コミュ力高めで要領良さげな三女の三姉妹が、母の余命宣告と再会をきっかけに、互いの立場を見つめ直して、しかし三人はそれぞれの道を歩むのです。親が居る間はなんだかんだいっても、そこにつながりはあるけれど、一度ぎゅっとあつまり、しかし再び別れて生きていく姿。この作家や役者たちワタシよりもずいぶん若いけれど、ワタシにももう少ししたらみえて来そうな未来なのです。
どちらかというと賑やかなファンタジーとかノスタルジーが持ち味の若い作家の語り口だと思っていたけれど、どんどん、生きることの奥行を悲哀交えて描くような語り口になってきていると感じます。ワタシよりずいぶん若いはず、なのに。
語り部的な位置でもあり次女を演じた冨岡英香は、調整型でぐずぐず巻き込まれながらも、物語を牽引するちから。母を演じたはぎわら水雨子の、終活も全部終わらせているある種の身綺麗がかっこいい。三女を演じた瀧口さくらは、要領よく、まわりの誰からも好かれるポップさが印象的。長女を演じた中島梓織は木訥で、要領もわるいけれど芯が強い造形をしっかり。近所の美容師を演じた柿原寛子の、ずけずけと踏み込むおばちゃん感がすごい。
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