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2024.08.17

【芝居】「ナイトーシンジュク・トラップホール」ムシラセ

2024.7.21 14:00 [CoRich]

内藤新宿宿まわりを舞台に現代と江戸時代を重ね合わせがら語る110分。7月21日までシアタートップス。

マンガで新人賞はとったものの、仕事になっていない男は姉の稼ぎで暮らしている。町で一人の飯盛りをしている少女に出逢う。少女はホストに入れあげている。ホストは噺家に入れあげている。ホストの店を経営しているのはマンガ家の姉だった。

ものを作る人々を描いた「眩く眩む」に連なるような人々の物語だけれど、更に二つの時間軸を行きつ戻りつしつつというのは二次元が三次元に膨らんだような奥行きを作り出します。

更には、甲州街道に作られた宿場・内藤新宿の成り立ちや広重が描いた『四ツ谷内藤新宿』の構図の面白さや、閻魔像のある投げ込み寺の異名を持つ成覚寺(wikipedia)、さらにはアルタ前にあるライオン像で舞台となる場所のゆかりを描きます。

物語としては、現代の漫画家や風俗嬢やホストや噺家、江戸時代の北斎、馬琴、一九、版元をオーバーラップしながら、時代が変わっても何者にもなれない若者と、プロとして稼げるようになった人々のヒリヒリとするように物語を創ること、人としては最低だとしても作り出すものが凄みになってしまうこともあるという厳しさ。若者がプロとして成長する入口は、想いある人の死を物語として描く事、というのは物語を創り出すことのないワタシには到底出来る気がしないけれど、それでもワタシはそんな風に作られた物語を「消費」してしまうのです。

それは、女好きの戯曲者が別の飯盛りの少女に入れあげて旅行に誘うも少女がこちらを向いた途端に戯曲者は興味を失ってしまうとか、人の不幸も業もすべて描き続ける画家とか。若者が成長して自死してしまった少女の物語を長編読みきりで描くという終幕はほろ苦い。トップスを芝居の中で舞台後方(とはいえ正面とはいかないけれど)開け放すのは格好良く。

北斎を演じた藤尾勘太郎はどこかサイコパスな怖さとコミカルなシーンでのコントラストで揺るがない柱に。その娘・葛飾応為を演じた永田紗茅はチャキチャキでカッコイイ。色んな場面に同じ顔で現れる「いろんな母」を演じた菊池美里は緩急すばらしく、とくに序盤のリズムを作ります。若者の姉を演じた渡辺実希のどこかツクリモノにすら感じられる顔立ちや背丈、なるほど単なる武家の娘ではなく歓楽街でのし上がってきたという説得力。若い漫画家を演じた渡口和志の何者にもなれないまま翻弄されながら成長する力強さ、対比するように飯盛りの少女を演じた 高野渚の好きなことがあって生きていても何がキッカケで死んでしまうか判らない陽炎のような儚さの説得力。

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