【芝居】「ミセスフィクションズのファッションウイーク」Mrs.fictions
2024.8.11 18:00 [CoRich]
実力派揃いの130分。8月12日まで駅前劇場。
初めてのデートに行く女の子、全部自分だけどいろんな気分がせめぎあって。「ハオちゃんはデートです。」(なかないで、毒きのこちゃん 作・演出:鳥皮ささみ)
規範が違う男女らしい旅人ふたりが市民の家に泊めてもらう。旅人はすぐに棒で殴って解決しようとする。市民はいつのまにか酔ってたり酔ってなかったり市役所の方から来たりの3人になっている。「浴室にて改」(日本のラジオ 作・演出:屋代秀樹)
ウルトラマン好きの彼氏、つられて観始めた彼女のカップル。円谷プロに就職したのは女の方で、若い女性向けに向けた新しいウルトラマンを企画する「およそ一兆度の恋人たちへ(『ウル〇ラマンP〇ADA(仮)』を改題)」(Mrs.fictions 作・演出:中嶋康太)
クローゼットを思わせるお洒落な衣料品店の雰囲気の舞台。大量の衣服が吊られていて。チケットも洋服についてる販売タグな雰囲気で糸がついてたりして凝っています。
「ハオちゃん〜」は、初デート直前の一人の女子高生の脳内シミュレーションをコミカルに。乙女心、子供の心、老婆心、探究心、羞恥心、下心といった自分の中にある心を擬人化(というのもおかしいけれど)して、観てないけど映画のインサイドヘッド、な雰囲気。オープニングらしく賑やかに。子供の心を演じた桑田真澄のステロタイプにしかし爆発力。女子高生を演じた小関えりかの板挟みな感じが楽しい。
「浴室〜」は、未公開の原型を改版しての初上演(原型の一部の動画が公開されています。当日パンフにはフルバージョンへのQRコード)。二人の旅人は棒を持っていて寝床を確保するために棒で叩くことにあんまり躊躇がない、知り合った酔っ払った女の家に、殴らずに泊めて貰う、という前半。わりとフラットに静かに喋るけれど、文化の違いのファーストコンタクトを当事者たちはあまり気にしないけれど、この不条理ともいえる、しかし何の諍いもなく穏やかな会話が楽しいワタシです。これでは終わらないのが後半。酔っ払って帰って風呂に入った女がそのまま溺死して、しかも追い焚きされてドロドロに煮込まれたけれど、再生医療で三人に増えたとくるりと変わる凄み。プラグを挿してコントロールされるとか、税金は三倍、人権は三分の一というSF的な要素を後半になってガツンと入れ込んで来て不条理さをマシマシにする意味の分からない(大好物だけど)スピード感にワクワクしちゃうのです。棒で叩きがちな旅人を演じた渡辺実希の無機質さ、酔っている市民を演じた永田佑衣のある種の隙に説得力。
「およそ一兆度〜」は2011年にリーディングとして上演された一本を、ブランド名を消した(賢明な判断)改題。当時はウルトラマンのテレビ放送が途切れた時期で、ワタシもタロウまでしか記憶になくて、80をやや半笑いで目にしたぐらいの世代で、初演時には2020年のウルトラマンZやらブレーザーやら、毎週日曜の朝を楽しみにしてるなんて、初演からの時間の流れを感じてしまうのです。主役は女性隊員で、視聴者もその想定やら、ウルトラマンになるのは若者じゃなくて管理職が、というあたり、Mrs.fictionsに円谷(ブレーザー) が追い付いた感に感慨深く。まあ、東京カレンダーのような、恋物語みたいなのとは違うのだけれど。影絵のようなタイトルでオジサンは掴まれ、日本の地位がどんどん下がってる描写もほろ苦く。男のプライドみたいなものをむしろ興味が無かった彼女が追い越してしまうという初演からのテイストはきっちり、精度がかっちり上がって来た楽しさ。岡野康弘の終幕近くの格好良さにしびれます。
去年のシアター・アルファ東京のイベント(未見)を参加辞退した三団体の公演というのは、偶然なのか、仕掛けたのか判らないけれど、もちろん実力者揃いの楽しさで満足感が目一杯で大満足してしまうワタシです。
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