【芝居】「神話、夜の果ての」serial number
2024.7.14 14:00 [CoRich]
serialnumberの新作。宗教二世を巡る90分。7月14日まで東京芸術劇場シアターウエスト。
宗教二世で殺人を犯した男が拘置所に拘束されている。検察は起訴を準備しているが、国選で選ばれた弁護士はなかなか叶わない接見の機会を得たいと足繁く拘置所に通い担当の精神科医と会っている。
男はかつて母親が宗教施設に連れてきて、子供だけの隔離した施設に預けられた。家族や血縁を思う愛着を罪と考え、世界全体が一つの家族とする教義を叩き込まれる。同じ施設の女児はやがて、教祖以外とは許されていない「交尾」を自ら見つけ出して男と行い、それが見つかって女は絶望して自死する。
一つのベッド、奥にはジャングルジムという何もない空間。男の物語が基本で、通い続ける弁護士が聞き取る形だったりで進む物語。 宗教と子供といえば日本人にはオウム真理教や統一教会を思い浮かべるけれど、ネットで見かけた感想のカンボジアのポルポト政権時代というのもなるほどと思い出すワタシ。子供を徹底て隔離し、理想的な次の世代を育てて次へ繋げるためと大人たちは真剣に考え、理想に邁進するけれど、何かがほころんでしまうこと。今作においては女性はメサイア以外とは許されない「交尾」を、メディアや噂話として取り入れるのではなくて、自分の中から沸き起こる本能として見つけ出してしまうという生物のしての強さが突破口になるのは新しい視点。彼女の物語としてはあまりに悲しい結末だけれど。そのほころびは男に連鎖し逃げ出し、犯罪を犯して拘置所に勾留されるという次の綻びを生み出すのです。
物語本編とは正直関係無いのだけれど、拘置所の刑務官を演じた杉木隆幸の物語が圧巻なのです。夜勤の間に妻が独身寮の男とカラオケで知り合い浮気して居なくなった、と男に愚痴をこぼし、しかし妻を引き留めたい気持ちは目一杯で、拘束できる方法を男に相談したり。執着の凄さに戦慄し、しかし男に抱きしめられる瞬間、ライティングでベタに「救われてしまう」一瞬で、なんか原初の宗教をみているような、しかし大笑いしそうになるワタシです。いや、これ凄い。
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