【芝居】「きなこつみ物語」きらら
2024.6.1 16:00 [CoRich]
熊本の劇団のツアー公演。再演のようですが、ワタシは初見。 70分ぐらい。王子スタジオ1。
ショッピングモールの団子屋。店頭にはきなこを山にして団子を刺してうるのが名物。失恋してバイトを始めた大学生の男。同じシフトのおばさん2人。普及し始めたスマホやまだ牧歌的なtwitterを休憩時間に面白がったり、モール側の社員は各テナントを監視したり客からのクレームが降りてきたり。隣のラーメン屋の朝礼は屈強な男たちが3年後の自分を語ってたり、若い女子バイトにご執心の常連客がいたり。
小さなテナント団子屋を舞台に、客とモールの他の人々の日常を積み上げて描きます。毎日のように顔を合わせていて馬鹿話はしても、人懐っこいおばさんたちだったとしても、実は本当のことは言えていない距離感。職場にしても友達にしても何もかもあけすけに開示するわけではない、ほどよく心地の良い距離感な人々。
モールの「レジさま」だったり本社の「赤メガネ」だったり、若いバイトにご執心の「アロハさん」だったりと、ピリッとする事件は起こっている日常は受け流しているように見えても、澱のように溜まるストレス。 さらには話してなかったけれど、友人の自死直前の電話に出られなかった後悔とか、スーツ男に礼儀正しく親切にされて返せなかったもやもやとか、いい子と悪いことが折り重なって。 後半、初めて三人で飲みに行くシーン、しかも店じゃなくて缶チューハイを公園で、といういつでも離脱できるような距離感が微笑ましくて、私の隣りにありそうな風景で。砂山を蹴り飛ばしたってストレスが雲散霧消するわけではなくて、でもたぶん少しは心が軽くなるような感覚。
そんな時代もあったねと、思い出す10年前の風景、あの時の人はどうしてるかなと思っても、積極的に探すわけではないていどの距離感だけど、間違いなく自分の中に残っているかもしれない風景の一つをコンパクトに語る心地よい小品。街の喧騒、風景を役者たちが「口三味線」で音をいれるのも持ち味、どこでもありそうな風景をどこででも上演できるコンパクトでポータブルな座組もとてもよくて、あちらこちらで上演されてほしい一本なのです。
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