【芝居】「飲める醤油」あひるなんちゃら
2024.5.18 18:00 [CoRich]
あひるなんちゃらの新作、80分。5月19日まで駅前劇場。ずっと続いている上演回ごとの音源販売は行列になるほどの人気でうれしい。
ずっとゲームをしていた男は実家に戻り醤油蔵の社長になる。醤油を作る工程の秘密を見学したりする。社長の弟は同僚の窓際の男に会社の乗っ取りを誘われる。窓際の男は新しく来た上司の女に恋心を抱いたりする。社長の妹は子ども食堂をやっているが、小4だと嘘をつく女が訪れる。醤油蔵では新製品、「飲める醤油」を開発していて、それは成功するが、飲んだときの記憶がなくなり発売できない。子ども食堂でもその飲める醤油を飲んでみたりする。
いくつかの場面をつなぎながら、普通の会話のようでもあり、妙なことを突然言い出したり、SF風味だったり。結局のところ、「飲める醤油」なる、とても美味しいのに飲んだらその時の記憶がなくなるという液体NS(Nomeru-Shoyu)を巡るようなそうでもないような。緻密に組み立てられてるのに緩く見える会話が、リズムや間を含めて続き、ずっと聞いていたくなるのに、物語としてはわりとどうでもいい、という唯一無二の持ち味を楽しむのです。作家自身も書いている通り 独白の長台詞がわりと多めに挟まるのは、この作家にしては珍しい今作の特徴で、それでも緩く見える会話劇という骨格の印象が薄れないのはすごいことだなぁと思うのです。
子ども食堂を訪れ咄嗟に小4と嘘をついたらそれがすんなり通ってしまって後々後悔する一連の流れ、記憶がなくなるというアイテムが上手くきいて「やりなおす」ことができるというのはどこか温かさを感じるワタシです。ものすごく美味しい飲める醤油というアイテムが、冒険の勇者の転生が語るスライムの味(ダンジョン飯か)とか、宇宙からの未確認生物によってもたらされる謎液体などと自在に物語を膨らませるのも楽しい。
小4と嘘をついた女を演じた松本みゆき、童顔ではあるんだけどもちろん説得力はないのにその嘘でどんどん後悔していく感じがなんか楽しい。恋をする窓際の男を演じた杉木隆幸の自覚があるんだかないんだかな明るさ、見習いたい。社長を演じた日栄洋祐の絵に書いたような人の良さの説得力。恋心を抱かれる若い経理部長を演じた平川はる香のクールビューティさが目を引きます。
「物語はいつでも始められるし、終わらせられる」という独白、作家の自信に満ちた宣言とも取れて、物語を創る人の言葉としてはとても力強くて、これからも楽しみだったりするのです。
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