【芝居】「法螺貝吹いたら川を渡れ」渡辺源四郎商店
2024.5.3 19:30 [CoRich]
渡辺源四郎商店の新作は「戦争と平和を考える2作品連続上演」として。105分。青森でのプレ公演を経て5月6日までスズナリ。そのあと5月29日まで彼らのアトリエともいうべき、渡辺源四郎商店しんまち本店。
幕末、川を挟んで津軽と南部が向き合うマタギの村。行き来は表向き禁じられていても、住民たちはひそかに交流していた。明治元年のある日、小湊に駐屯していた津軽の兵が出陣し、南部の村に放火し全戸消失させたが制圧直前で撤退し終結。それから3時間ほど、まだこの知らせはこの村には届いて居ない。津軽藩から、南部を襲撃する命が下るが、「ふり」の茶番でもいいのではないかと南部に持ちかけ、誰も傷つかない筈だったが。
舞台の左右を赤と青の布、津軽や南部の家門を配し左右に分割。エレキギターやキーボードの生演奏を添えてライブ感たっぷりに。
今は青森県という一つの県になっている土地、津軽と南部を隔てる蒜内川(ひるないがわ)という仮想の川を設定し、そこに野辺地戦争という史実を織り交ぜて、どこでもいつでも起こりうる戦争と暮らし。敵とされている隣人、中央からの指令での戦争。人間の営みも土地も地続きにグラデーションなのに、なにかの境界を引いて国をつくり、それゆえに中央には利害関係が起こるのです。グラデーションの筈なのに。
マタギという武器を持つがゆえに戦争にかり出されそうな二つの村の間の男女の恋、あるいは山の神と崇める気持ち。女が間者でそもそもの仲違いは盛岡藩南部家と弘前藩津軽家の確執(相馬大作事件)で、そこからずいぶん時間が経ってるのにもかかわらず囚われているということ、もちろん忘れられないこともあるだろうけれど。
更に物語には津軽アイヌが登場して、少数民族も絡めて、抗争と日々との物語の奥行きがぐっと広がるのです。正直言えば、要素がそれほど多い訳ではないのに、ものがたりがごちゃついていている感じを受けるワタシです。
久しぶりに拝見する長谷川等、元気でなにより。未亡人を演じた山上由美子の物語を駆動するちからと、やけに色っぽい瞬間。音喜多咲子の子供のやけにクオリティの高いのはいつもの通りで安心。南部藩目付とギーター・キーボードを演奏した高坂明生もとてもよいのです。
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