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2024.04.22

【芝居】「友達じゃない」いいへんじ (Cキャスト)

2024.3.23 15:30 [CoRich]

初見の劇団です。3人芝居をキャスト違いの3バージョンで上演。ワタシはCキャスト。75分。3月24日まで北とぴあペガサスホール。5月7日まで配信中(購入は4月30日まで)。

誰とも距離をとって友達をつくらず日々を仕事と家の往復で暮らしている女。あるときネットで耳にしたシンガーソングライターの路上ライブを見に行き、通ううちに明るく活発な女と互いに知り合いになる。その女はアルバイトで金がなく、金を使わずに遊ぶ天才だったりして、「友達」を意識する。ある日、逆にスカイツリーに誘うが、そこにアルバイトの女は来ないし、連絡もとれず、ライブにも来なくなってしまう。

下手側に少し小高い土手、上手側にベッドなど部屋の雰囲気。その間の空間も生かしながら、広々。友達を作らず波風立てずにともかく平穏に暮らしていた正社員の女が目にした音楽、路上ライブで変わっていく生活。さらにはSNSでそのアーティストと繋がること、同じライブにいつも来ている常連の仲間。大人になってから仕事と関係の無い友だちができていく過程を追体験するよう。芝居見はじめたときの自分がいつも見かける客と知り合いになっていた頃を思い出します。とはいえさすがにワタシは友だちであることを言葉に出して確認したりはしないのだけれど。

学校の友だちでも生活の差はあるけれど、大人になって偶発的に知り合った友だちは、生活や環境が全く異なることもあり得るわけです。正社員とアルバイト、人見知りだけどまあ健康に不自由なく暮らせているのと、明るく活発に見えるが双極性障害でアルバイトも続かない。どちらが普通、どちらが優位ということはなくて、どちらもそれぞれに生きづらさを抱えているのです。それまでは人とは距離を取っていたのに、一歩踏み込む「友だち」となっていく過程を細やかに丁寧に描く解像度の高さが見事。もちろん二人の物語なのだけれど、シンガーソングライターという第三者を置くのもよくて、劇中の曲の良さもあるけれど、二人を見ている人でもあり、二人を最初につなぎ止める第三者でもあるのが絶妙なのです。

岸田國士戯曲賞最終候補に選ばれるほどになっているのにノーチェックだったワタシ、未見だったのが本当に無念。出会えたことが佐吉祭の収穫なのです。

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【芝居】「イノセント・ピープル」CoRich舞台芸術!プロデュース

2024.3.20 14:00 [CoRich]

劇団昴の2010年初演作(未見)をCoRich舞台芸術が名作をリメイク再演として初プロデュース。3月24日まで、東京芸術劇場シアターウエスト。135分。

ロスアラモスの研究所、かつて原爆を開発した仲間たちが再び集まる。
「夢の城」と呼ばれていた宿舎の若者たち。物理学者、海兵隊、大学士のアルバイト、数学者、医者、あるいは看護師。それぞれの戦後、それぞれに家族ができている。新たな戦争に関わっていたり、日本人と結婚したりする家族もいる。

ときおりしも「オッペンハイマー」の上演に重なる時期(ワタシ未見ですが)。畑澤聖悟の手による物語もまたアメリカ人の視点で描かれます。長引く戦争を終結させるための正義として原爆開発を進めた若者たち。戦争の終結とアメリカの勝利に繋がる原爆の投下を支点にするように1945年の8月までと、そのあと2010年までの間を行きつ戻りつの物語。

原爆投下までは、その威力を人類で初めて目撃して恐怖したり、それでも若者らしく恋をしたり、デートしたりといった日常もありつつの日々。戦後の物語はその後続く冷戦、ベトナム戦争の泥沼に巻き込まれる息子、広島生まれの日本人と結婚する娘、大企業に入って裕福な日々を暮らしていたり、アメリカの正しさをそれでも信じて疑わなかったり、原爆の投下によって人体に及ぼした影響を受けたり考えたりしていたり、あるいは自責の念で自死にに居たる人々。原爆を手にして勝利したはずなのにアメリカの苦悩は続くのです。

結婚した相手やその親戚といった日本人を能面を付けて演じるのはなかなかのインパクト。感情がわかりにくいなのか、あるいは個々の人間としては捉えられない一種格下としてみているか、西洋人から多くのアジア人がどう見えているかのバイアスはホントの処はわからないけれど、そう見えているかもしれない、という説得力があります。 その流れで日本人の個人に向き合った科学者が気の毒には思う(=Sorry)だが、謝罪はしない(=apologize)というのは、終演後のトークショーで作家が、原爆投下に随行したカメラマンがある番組で言っていたというのも正直な彼らの感覚なのだとも思います。

さらにはウラン採掘に関わる原住民の被爆、劣化ウラン弾、ベトナム帰還兵のPTSD、核兵器使用の道義的な責任を口にしたオバマの演説といった問題にも目を配っているのは作家らしい多面的な視点。それでも孫娘の妊娠を告げ、対話の始まりは希望を感じさせる終幕なのです。

数学者を演じた森下亮はスマートなしかし生真面目な造形。海兵隊員を演じた内田健介のマッチョさはトランプを支える白人男性の雰囲気を存分に。ネイティブアメリカンの家政婦を演じた保坂エマの表情の薄さは能面の日本人に繋がるよう。妻を演じた川田希はプロデューサーも兼ねて舞台を支えます。とりわけ学生からGMの重役(かな)を演じた三原一太は凄くて、どこまでも軽く陽気な感じなのに、悲劇を内包する深みをしっかりと。

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2024.04.16

【芝居】「まじめにきまじめ」猿博打

2024.3.17 17:30 [CoRich]

初見の劇団、コント風味。90分ほど。3月17日まで北とぴあペガサスホール。

地球に隕石が衝突し、北区周辺20km四方の塊での生き残り3人。驚異的に復旧を成し遂げ普通の生活を取り戻した5年目。それぞれのプライバシーの侵害に敏感で協力はしても互いには踏み込んでいない。人工衛星を介して他の生き残りを探すが成果はない。
生活には娯楽が必要といろいろ試す。芝居っぽいものとか。でもまあ、音楽か。貴重な電力だけど一晩だけ過剰消費して歌って飲んで騒いで一晩語り明かして。

隕石の衝突で3人だけの隔絶された世界にAIロボット付きというSF風味。若い男女だけれど色恋沙汰にはならず5年というのもある意味SFだけれど。プライバシーに踏み込まないイマドキだけれど、それゆえにどこか距離が詰め切れない感じ。人間らしく生きるための娯楽に気付くというのはタイトルどおり「生真面目」にすぎるけれど、笑っちゃうほど真面目に向き合っった結果、観客も居ないのに芝居っぽい映像を作ろうというのは少々強引だけど、勘違いやすれ違いなコメディ要素を盛りだくさんに詰め込んで。

大騒ぎして芝居を頑張ったのに、終盤、落ち着く先は音楽、という芝居になってるのは自虐的なのか皮肉なのか。とはいえ、電力を過剰消費してまでライブをやって騒いで、一晩語り明かした彼らは一回りして確実に何かが変わったと感じさせるチームになった終幕。結局のところ、娯楽というよりはそれを作る過程でよそよそしかった3人の距離が縮まったことが実にハッピーエンドなのです。

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2024.04.15

【芝居】「クチナシと翁」ホエイ

2024.3.17 14:00 [CoRich]

思えばホエイとしての旗揚げを拝見したのもアゴラでした。この劇団のアゴラでの最終公演。95分。3月17日まで。

大広間のような場所、昔は巨大な藁人形で行う祭りだったが、観光振興の一環として大量のカカシでそこそこ人気となっていた中に直撃したコロナ禍。久々に再開しようとしたらやる気いっぱいだった二人は認知症になっておぼつかない。
町起こし隊として移住してきた芸術家、家を出たきり顔を見せなかったが離婚し乳飲み子を抱えて戻ってきた男、15年引きこもりだったが親が認知症になり介護のために家から出るようになった男。
山を守りたいババは山を売りたい家族と喧嘩してビニルハウスで暮らしているが、山を見に行って足をすべらせて亡くなってしまう。

この場所で暮らしている人、出ていくひと、戻ってきた人、あるいは定住するよそ者、葬式はあってもそれほど大きな大事件は起こらないけれど、この場所で生まれ老いていく人も、芸術家として行政の金で来る人も、あるいは出ていったのにここに戻ってきた人もそれぞれの人生、それぞれに暮らしてる日常を描きます。

お手軽な町起こしとして日本中で試され失敗しまくっている「かかし祭り」のビジョンのなさ加減、それでも賑わいがなつかしくて半分諦めながらも続けようとする老人たち、町起こしで行政の金で移住してきた芸術家もいい人ではあるが町が望む賑わいを起こすほどの力はなく、行政だって増える害獣をすべて片付けるだけの余裕はなくなっていて。老いていく田舎あるいは日本の縮図というと単純にすぎるけれど、それでも生きている人々を解像度高く描く作家の確かな力。

首都圏で生まれ育ったワタシに本当のこの世界が理解できるわけではないのだろうけれど、 解像度の高さはたとえば認知症、突然激昂して警察に電話しろというが数分後には忘れてる老人(山田百次)とか、この場所を捨てたのに戻ってきた男(武谷公雄)が困っていれば黙って助ける(河村竜也)とか、生きるために熱意なく役所で働いている(赤刎千久子)ような感じとか、どこかでみたような風景、それを殊更に強調しなくても、万事がこんなふうにリアリティのある場として作り上げられる座組なのです。

成田沙織は一段上のネイティブ津軽弁の強度が顕在、芸術家を演じた斉藤祐一の優男ぶりの説得力、引きこもりを演じた中田麦平が老いて家を出る不安と希望とが入り交じる解像度。とりわけ老婆を演じた三上晴佳が舞台にいるまま薄暗くなったとおもったら娘に変わっているシーンと、その両方に違和感がない稀有な役者をみられる幸せ。

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【芝居】「宇宙論☆講座 the BEST & the WORST」宇宙論☆講座

2024.3.16 15:30 [CoRich]

ワタシは初見の劇団。庶民的なというか下品下世話をとりまぜながらもコミカルでパワフルなレパートリーをピアノ生演奏でベスト集&ワースト集と題して。

5分押すといった前説が更に5分押すと言って激昂する男性客だが、嘘こそは美しく着地点は音楽で、エモい曲をつけらばエモくなるし、5分押しって言ってみたかっただけ
空気感がいいと切り取れる写真は撮ってもいいけど、動画は勧めない。あるいは佐吉祭の他劇団のベストシーンも織り交ぜてやります。
ベスト集だけどキスシーンをやたらにやってた時期、生々しいシーンを和らげるにはスモークなんだけど、この会場はスモーク禁止、だけどスモークしたくて大量にスモークマシーンを持ち込んじゃった。
野外でやった誰も見てない配信もしてない炭火焼肉ミュージカル、生ビールを飲みながらのミュージカル、チンコばかり連呼してた時期もあったけど破裂音の交じるチンポは歌詞には入れられない、AFFの助成金をもらったミュージカルは公演にロゴをいれないといけない、600万を注ぎ込んで為替取引を舞台上でやったし、でも5万10万で奇跡が起こることがあるのも知っている。うなぎを舞台で捌きながらやったときは劇場出禁になった。有名人が出演したときは毎日楽屋に叙々苑弁当届いたし、江古田のテンイチでずっと大声の店員は懐かしい。オーディションでは強気で落としまくった。そういえば1万円札が切り替わる
AIでなにかできるか、金、演劇、AIの三すくみ。ロボット演劇、照明で。

序盤のクレーム客のシーンのインパクトと少々長いのとで印象はよくない始まりだけれど、断片すぎる数々のキャッチーな構図詰め合わせなファーストキット。 強烈なキスシーンとか、口に入れて唾まみれとなった紙幣とか、ところどころワタシは見る勇気がどうしても起きなかった「ゴキブリコンビナート」をちょっと彷彿とさせるのかなと夢想したりもします。多くのキャスト、生演奏のピアノ、派手な照明などてんこ盛りで、物語としてのまとまりはないけれど、ああ、もう一回は見てみようかなと思わせる(なんせ次回作は生ビールミュージカルだ)荒削りすぎるパワーがあるのです。

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2024.04.09

【芝居】「そろそろダンス。」キルハトッテ

2024.3.16 18:00 [CoRich]

佐藤佐吉演劇祭は観たことない劇団ばかり、ここも初見です。90分ほど。3月17日まで王子小劇場。

アイドルの卒業コンサート前、卒業のスピーチを練習している。楽屋に友人夫婦や、なぜか子供の頃の友だちがランドセル背負ってきている。こうならなかった自分を体験したりする。

アイドルの自室もしくは楽屋のような雰囲気のピンクの部屋。 アイドルの自分を起点に、友達や子供のころの友達が出てくる序盤からしてファンタジーなのです。 何かの選択によって人生が枝分かれしていく「可能性」をたくさん夢想するのは若い(かどうか知らないけれど)作家が見えている世界。 大学の友人が自分の母になったり、友人の夫が小学校の頃の友達と結婚するようになったり、あるいはアイドルになることではなく恋人を選びアイドルになる未来だったり、アイドルにはなりたくて事務所に入ったけれど金だけ取られて引きこもった未来だったり。後者の物語は陰鬱な感じだけれど、扉を開いて外に出てくという卒業、もしくは未来への意気揚々な希望をきっちりな終幕なのです。

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2024.04.06

【芝居】「諜報員」パラドックス定数

2024.3.9 18:00 [CoRich]

パラドックス定数の新作。ゾルゲ事件に関係したとして突然軟禁された4人の男たちを描く120分。3月17日、東京芸術劇場シアターイースト。

二段ベッドがふたつ、囲むように通路状に。ゾルゲが特高に逮捕された日、協力者とされた人々を拘束した警察の取り調べ。史実として協力者として出てくる尾崎、宮城といった人々ではなく、その更に外側の、実は事件との関連が薄い(しかも一人は「おとり」だ)人々と、特高よりは情報がすくない警察を舞台に描きます。マクロ視点では史実の枠組みながらも、組織の軋轢やそれぞれの背景で味付けしながら、実にミクロな会話なのはパラ定節。

四人の「協力者」は諜報活動に関わっている内閣調査室勤務、ゾルゲと会ったことはあっても諜報活動にはおそらく関与していない医師、協力者と面識がある新聞記者、そして牧師として潜入捜査していた警察官といった具合な立場のグラデーションが観客にも登場人物たちにも徐々に明かされます。 取り調べをする警察の二人はもうすこし俯瞰的に事件は見えているけれど、核心となるゾルゲの身柄もおそらく情報の数々も特高に先を越されていて実はあまりわかっていないというのが絶妙。

つまりは、ゾルゲ事件のことを知っていたら外伝的に楽しむことはできるけれど、知らなかったとしても、その「わからなさ」のままで楽しむのも有りかなぁとおもったりするのです。人々の疑心暗鬼なソリッドな、しかし時にコミカルでもあったりする会話で。

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2024.04.02

【芝居】「口(しかく)」エンニュイ

2024.3.9 18:00 [CoRich]

王子小劇場の佐藤佐吉演劇祭の一本。ワタシは初見です。見慣れている観劇巧者の感想を読みながら記憶を掘り起こすほぼ一ヶ月前(溜まりすぎ)。137分は正直少々長いけれど。王子スタジオ1、3月10日まで。

オフィス、喋らない社員たち、苛ついて怒りがちな課長とか。出社しないまま一週間とか。あるいは不安を言葉にしてネットに発してしまう人。 web会議のようにそれぞれのスマホで映像みせながら話をしたり、呪われないために相手の名前を錆びた釘で書きたいけれど名前を知らないとか。大量に生み出され大量に死んでいく言霊、chatGPTに生成させる日記。俳優が偽物と疑われスタッフも交えて議論したり。

初見のワタシにはなかなかの歯応えの一本。要素はそれぞれに面白かったりするのです。たとえば、開場中の劇場に流れているリアルタイムのNHKラジオ(震災の何とかだった気がする)、それぞれのスマホでweb会議的に会話したり、プロジェクターで映した映像が吊るしてある紙に映し出していたり。言葉を失う病と大量に生み出される言葉という対比だったり。ある芸能人のスキャンダルを台詞に折り込んでみたり。

なるほど、作家の頭の中のぐるぐるを未分化(劇中に出てくるネオテニーということかしら)なまま提示されたものを自分の頭の中で再構成して組み立てて受け取って観る芝居なんだ、と気付いた時にはわりと時遅し、置いて行かれたと感じるワタシです。 物語というよりは手法の断片の面白さとも思いつつ。それならつまり、観劇巧者たちの感想を補助線として見直したら判るようになるかもと思うけれど、記憶力が追い付かない(泣)。

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