【芝居】「繭の家」タテヨコ企画
2024.3.30 18:00 [CoRich]
結成25周年を迎えたタテヨコ企画の新作。110分。3月31日までシアター風姿花伝。配信の販売は5月19日まで
引きこもり支援のNPO。市役所から研修のため派遣された女と支援員の女。
厳しい父親のもと、中学受験に失敗して以来引きこもっている男はもう中年になってしまっている。業を煮やした父親は引きこもり矯正塾を契約して男たちがやってくる。
ゴミ屋敷同然の家、老婆の姿を見かけないという通報で向かった家には実は長女も同居していた。厳しくピアノを叩き込まれる日々だったが大学で家を出て戻らないようにしていたが、非常勤講師では厳しく家に戻ってきていた。結婚した妹は遠くに住み、もう関わらないと言っている。
引きこもり支援NPOのバディ二人を主軸に、中高年の引きこもりをめぐる家族2つを描きます。今作では、厳しすぎる、いわゆる毒親とその子供が引きこもって長い時間が経ち、中高年となってしまっている姿を描きます。 正直にいえば、きっちり取材してステロタイプに見える物語を組み立てたおかげで、物語の行方の想像がついてしまうのは惜しいと思うけれども、きちんと編み上げられている隙の無さの裏返しとも。問題を解像度高く描き糾弾もしないけれど、あるがままの人々の姿を示すのです。
もしかしたらワタシもそうなっていたかもしれない、という視点で観てしまうけれど、よく考えたら両親からの理不尽な厳しさは幸いなかったなと思い出すワタシです。中学受験もピアノもやってないからなのだけれど、高度経済成長の時代にサラリーマン家庭で育てられた自分と、おそらく同じ時代を生きて来た人々を描いた劇中の二人の違いなんて、偶然というか今風にいえばガチャなのだと思い知るのです。
引きこもり矯正塾のリーダーを演じた西山竜一は明らかにヒールなのに役者の説得力がありすぎで、そちら側に立って観てしまいそうになるワタシです。引きこもっていた長女を演じた舘智子の怯える細やかな解像度。中学受験に失敗した息子の母親を演じたあさ朝子は60歳には見えないのはご愛敬。その夫を演じた森啓一朗もまたヒールだけれど、終盤で新しい方向に向かうポジティブは、マッチョイズムで生きてきた男が振り返り、反省して次の一歩が始まる終幕はいい雰囲気なのです。支援員を演じたリサリーサの姉御肌、研修に来た女を演じたミレナの前向きのバディもいい取り合わせ。
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