2023.12.31 14:00
[CoRich]
ウキヨホテルプロジェクトの新作、新作ミュージカルのトライアウト上演として。パリの娼館を舞台に、ノミのサーカスを脱走した蚤のスターと面倒を見ている女をめぐる本格的なミュージカル。ラゾーナ川崎プラザソルで、大晦日の楽日・昼公演に。102分。一部が動画公開(YouTube)されています。
1918年、長く戦争の続くパリ。
ノミのサーカスにはスターをはじめたくさんのノミが居る。面倒を見ている女、団長の扱いが酷くある日大量のノミに喰われ皮膚が醜くなってしまう。大量のノミを解き放ち女もスターのノミと逃げだし、娼館に潜り込み、醜い見た目ながら男たちをトリコにして人気の娼婦となる。
ある日、客として訪れた医学生は彼女の虜になり、彼女の肌の治療をする。二人は恋仲になるが、医学生は戦場に赴くことになる。女は戦争を鼓舞するための「特別な写真」のモデルとなる。医学生との手紙は絶えてしまう。ノミは一計を案じる。
まさかのノミが主人公のミュージカル。とはいえそれ一人の役者が演じます。棒の先に付けたLEDでノミを表すという手法で、大量のノミが飛び回るシーンはボール状のワイヤーのLEDの点灯などで斬新なのです。物語も一年しか生きられないノミが娼婦と医学生の恋を見守り、手助けするという物語を、第一次世界大戦という時代に重ね合わせて重厚な側面も持たせるのです。
ノミのサーカス、というのもwikipediaに項が立っていて、実際にこの時代に存在した物なのだそう。大きさからは考えられないぐらいの力があったり高く飛んだり、あるいは大量のノミが血を吸い尽くすことで人を殺せるなんてことの「小さなからだでパワフル」な存在が恋とファンタジーとダイナミックさを併せ持つステージを作り出すのです。とりわけ、封筒に忍び込んで戦地の医学生の元へ、なんてのは凄いアイディアだと思うのです。
箱の中にいれ続けていると、その高さまでしか飛べなくなるということ、それを超えて飛び上がる「スター」の存在が素晴らしく、困難を突破し想いを遂げる物語に
きっちりバンドを入れて生演奏に加えてオリジナル曲の様々。小劇場といえるラゾーナ川崎プラザソルでこの圧巻なうえに、これはまだトライアウトで発展を続けるということで気合いの凄さ。実はそれほどミュージカルにピンとこないワタシだけれど、今後の作品を期待してしまうのです。
たった9人のキャスト陣も実にパワフルで、ヒロインを演じた青野紗穂の力強さ、団長やカフェオーナといった癖のある人物を一手に背負う小西のりゆき、とりわけノミという前代未聞の役を繊細さとパワフルをもって演じきった岡本悠紀は印象に残ります。
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