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2024.02.26

【芝居】「オセロー」滋企画

2024.2.4 14:00 [CoRich]

シェイクスピアの「オセロー」、オセローと妻デズデモーナを強くフィーチャーした物語として描く115分。アゴラ劇場。

軍人オセローがそれを嫌う旗手イアーゴの企みにかかり、妻デズデモーナの貞操を疑い殺してしまう。

役者はたった5人。、デズデモーナと騙すイアーゴという裏表を伊東沙保が一人で演じる圧巻。とりわけ、イアーゴの悪い表情が凄い。佐藤滋主役・オセローをきっちりと。役を兼ねて演じた義父は人の良さを役者のキャラクタ全開で。

副官、侍女、娼婦をはじめ幾つかの役、現代の雰囲気に近い役を演じた三人の役者、中川友香・永井茉梨奈・佐藤友のバラエティが少人数の座組を支えて力強いのです。

細かなセリフはもちろん現代的に再構成されているのでしょうが、物語は戯曲に忠実だと演出家は言います

オセローという物語をそう沢山見ていなくて忘れがちワタシ、序盤ではどこか混乱するけれど、オセローと妻の強すぎるほどの愛情に収斂してく終盤はシンプルで深く印象に残ります。オセローが妻についてモノローグで語るシーンの圧巻。更に二人が歌謡曲に合わせて踊るように周り、口づけを交わし、を繰り返す終幕はどこか演歌的な泥臭さを感じさせながらも美しい。

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2024.02.21

【芝居】「トーキョー奇譚 ~感覚強化産業Vol.2~」Sun-mallstudio P

2024.1.20 14:00 [CoRich]

第一回目が1988年という企画「感覚操作産業」(未見)の第二弾。3団体の企画公演。120分。1月21日までサンモールスタジオ。

ゴミ箱に隠れ集い世間についての議論を交わす女二人。イケメン市長が進める開発計画は風向きがかわり追求を恐れた市長は命を絶ったと思われるが「星降る夜に〜オルタナティブ」(ガマ発動期)
半人前の鬼の女は児童養護施設で暮らす少女と山で出会う。人間を絶望させる課題を課された鬼の女を見守る虫売りは少女に三匹の蟲を渡す。少女は成長し、無職だが新種を探すために山に来た四十歳の独身男と蟲を探し続けている「あの角を曲がりたい女」(TheStoneAgeブライアント)
月着陸した日本人宇宙飛行士たちは月面でかぐや姫を名乗る女と出会う。観測できていなかった小惑星が接近し地球に激突する危機が迫っているが、宇宙飛行士たちには月の一部を破壊し小惑星の軌道を変えるミッションが与えられる「どうする?!かぐや姫」(離風霊船)

「星降る〜」は2009年初演(未見)の初演から秘密結社と刑事の性別を入れ替えたオルタナティブ版という体裁。再開発でヤバい市長と外資系企業の結託の現場へ向かう刑事は捜査だけど、秘密結社はカーチェイスしたりしつつちょいと物見遊山な感じ。果たしてその場で4人は出会い、実は市長は生きていて。正直おおきな話があるというよりは二組の人間たちがそれぞれの目的と任務はこなしつつ、実は時間を潰しているのだと読み解くワタシです。日替わりのゲストも楽しい。

「あの角〜」は事前のチラシでは少女と虫売りを軸として、進むべき道を教える蟲というあらすじなのだけれど、今作は迷ってる鬼の存在も大きく感じるワタシです。児童養護施設で暮らす少女に与えられた蟲、そのおかげかどうか正しく成長した少女。あきらかにダメな雰囲気の無職の四十男との恋心は蟲としては避けさせようとしてるはずだけど、蟲を捨て自分の意思を貫く少女、まさに人が成長して最初は生き抜くためにガイドが必要だけれど、成長したなら怖くても自分で選び取るようにならねばという物語の骨子が強いのです。
鬼を演じたさんなぎが強い印象、ダメ男を演じた熊野善啓は優しく、しかし生き方が下手な造形の人物を好演。

「どうする〜」は月面着陸した宇宙飛行士(SLIMおめでとう、の時事ネタな台詞も楽しい)たち、無茶振りな小惑星回避のためのミッション、三人のうち二人はサイボーグでそのミッションを阻止して人類を滅ぼそうとしている、一人だけの人間は大金持ちの人間というのも、なんかありそうな話。
関西弁の合衆国大統領を演じた岩嵜六大、ニュースキャスターを演じた伊東由美子、あるいは二人の朝ナマな軽妙もたのしく印象的。開幕イキナリ、壁を使って無重力の演出は強い印象を残します。

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2024.02.10

【芝居】「アンネの日」serial number

2024.1.14 14:00 [CoRich]

女性用ナプキンの開発を巡る女性たちを描いた 詩森ろばの風琴工房時代に初演したものの再演。1月21日までスズナリ。

物語の幹となるのは、ノンケミカル・オーガニックなナプキンの物語を、生理そのものやナプキンの機能を解説するスタイルなのだけれど、それぞれの女性たちのそれぞれのこれまでの生理にまつわるエピソードを紡ぎ語りあげるところこそが作家が描きたいことだと思うワタシです。素直に祝われる環境もあれば、なんか不本意だったり恥ずかしかったり、性自認が女性ではあっても身体が男性であることで生理そのものがなかったりなど、接し方や感じ方もみなそれぞれにあることを描きます。

あろうことか、初演時よりも男女平等ランキング(ジェンダーギャップ)が下がっていたりして、生理どころか女性を取り巻く環境がまったく変わっていなくて、物語が描くありかたも変わっていないのは、再演がみられる嬉しさはあれど、そりゃどうなんだという話だったりもするのです。

開発職と企画職が一つの製品の完成に向かって、コストや実現性での衝突はあっても理想の製品を作りたいという一点に向かって社内プロジェクトとして突き進むわけで、理想的にすぎる関係性は青臭く感じないわけではないけれど、仕事の軋轢を描く話ではないので、大きな問題ではありません。

ケミカルなものを粘膜から吸収するかもしれないという恐怖感は説得力があるし、農作物が種子と農薬がセットで売られるようになっていることの危惧など、作家の主張を強く感じますが、理想を追うあまり一歩間違えば陰謀論になりかねないギリギリを攻める感じの絶妙のバランス。

女性たち、次の世代へつなぐことという視線が色濃く。とりわけ終幕近くで閉経を迎えた女が若い女たちへ「後輩への視線」で語ることが、作家の視線を感じるワタシです。

性同一性障害の役を演じるのが初演では女性(彼女の性自認がどうであるかは知る由もないし知る必要もないけれど)、今作では性自認が女性である男性になっています。役の属性と同じ属性を持つ役者が演じるべきだという流れの一つとも思うけれど、物語では「生理を憧れる」立場として描いていても、トークショーでは俳優自身の考えは異なり、あくまで役として演じているという言葉が引き出せたりして、健全を感じるワタシです。トークショーでは作演の演出スタイルが変化して戯曲理解に時間をかけるようになったということも語られました。

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2024.02.04

2023年は90本でした。

年が変わって早くも一ヶ月も経ってしまって、やっとこさ2023年の感想を書き終えました。2024年の1月も2本しか観てないと、なかなかにスローペースになっています。大量に観ていないとわからない風景というのもやっぱりあって、どうしても過去にみた劇団・役者中心のセレクトになってしまいがち。歳を取ったということかもしれません。

土日午前のジムの時間が繰り下がって余裕を持ってマチネに行けないと思い込んで断念してたりするんですが、品川駅で京浜東北線北行から山手線外回りの乗り換えが飛躍的に時間短縮されていたり、いまさら東急・副都心線直通の速達列車なら実は結構はやいルートがあったりと新発見も。とはいえ、そこそこのペースで、持続可能に楽しんで行きたいなと思います。

今年もよろしくお願いします。(遅い)

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【芝居】「ジル・ド・レ~吾輩は娼館の蚤である~」Ukiyo Hotel Project

2023.12.31 14:00 [CoRich]

ウキヨホテルプロジェクトの新作、新作ミュージカルのトライアウト上演として。パリの娼館を舞台に、ノミのサーカスを脱走した蚤のスターと面倒を見ている女をめぐる本格的なミュージカル。ラゾーナ川崎プラザソルで、大晦日の楽日・昼公演に。102分。一部が動画公開(YouTube)されています。

1918年、長く戦争の続くパリ。 ノミのサーカスにはスターをはじめたくさんのノミが居る。面倒を見ている女、団長の扱いが酷くある日大量のノミに喰われ皮膚が醜くなってしまう。大量のノミを解き放ち女もスターのノミと逃げだし、娼館に潜り込み、醜い見た目ながら男たちをトリコにして人気の娼婦となる。
ある日、客として訪れた医学生は彼女の虜になり、彼女の肌の治療をする。二人は恋仲になるが、医学生は戦場に赴くことになる。女は戦争を鼓舞するための「特別な写真」のモデルとなる。医学生との手紙は絶えてしまう。ノミは一計を案じる。

まさかのノミが主人公のミュージカル。とはいえそれ一人の役者が演じます。棒の先に付けたLEDでノミを表すという手法で、大量のノミが飛び回るシーンはボール状のワイヤーのLEDの点灯などで斬新なのです。物語も一年しか生きられないノミが娼婦と医学生の恋を見守り、手助けするという物語を、第一次世界大戦という時代に重ね合わせて重厚な側面も持たせるのです。

ノミのサーカス、というのもwikipediaに項が立っていて、実際にこの時代に存在した物なのだそう。大きさからは考えられないぐらいの力があったり高く飛んだり、あるいは大量のノミが血を吸い尽くすことで人を殺せるなんてことの「小さなからだでパワフル」な存在が恋とファンタジーとダイナミックさを併せ持つステージを作り出すのです。とりわけ、封筒に忍び込んで戦地の医学生の元へ、なんてのは凄いアイディアだと思うのです。

箱の中にいれ続けていると、その高さまでしか飛べなくなるということ、それを超えて飛び上がる「スター」の存在が素晴らしく、困難を突破し想いを遂げる物語に きっちりバンドを入れて生演奏に加えてオリジナル曲の様々。小劇場といえるラゾーナ川崎プラザソルでこの圧巻なうえに、これはまだトライアウトで発展を続けるということで気合いの凄さ。実はそれほどミュージカルにピンとこないワタシだけれど、今後の作品を期待してしまうのです。

たった9人のキャスト陣も実にパワフルで、ヒロインを演じた青野紗穂の力強さ、団長やカフェオーナといった癖のある人物を一手に背負う小西のりゆき、とりわけノミという前代未聞の役を繊細さとパワフルをもって演じきった岡本悠紀は印象に残ります。

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