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2024.01.20

【芝居】「天使の群像」鵺的

2023.12.24 14:00 [CoRich]

鵺的の新作は学校の現場を巡る物語。150分。12月29日までザ・スズナリ。

勤めていた会社が倒産し、代理教員として高校に勤めることになった女。学校は嫌いだったが背に腹は代えられない。 担任を持ったクラスは男子生徒が不登校になっていて、その責任を感じた担任も休職していた。 学校にはスクールカウンセラーがいるが相談しているのは教師ばかり、教師のコンプライアンス教育には取り組んでいるものの、ベテラン教師たちは内心それを受け入れていない。

学校が好きではなかったが会社の倒産で致し方なく働き始めた学校で出逢った人々。表だった校内暴力もないしイジメも描かれないけれど、ちょっとしたきっかけで起こった不登校の男、学級委員だけど嘘をついていてうまく立ち回る女、口は悪いけれどフラットで鋭い視線で大人たちをみている女などの、大きな混乱がないように見える生徒たちの間での繊細な関係やその変化。

もう一つの軸は教師たちの物語で、同い年の女性たち(代理教員、養護教諭、スクールカウンセラー)は自分たちの尊厳と安全が脅かされる職場の存在。教師たちの間でコンプライアンスのお題目は広まってはいるけれど、教頭を始めとした年嵩の男たちは戸惑うというよりやや不満だったり年齢によってグラデーション、味方であるはずの女性の校長はちょっと及び腰で、女性たちの不安は解消されない上に、巧く立ち回る学級委員は不登校の生徒に半ば嵌められて不登校の男子生徒の父親の怒号を浴びたりするのです。

代理教員が帰宅すると同居しているかにみえる女は小学校時代の担任で、それは後になって知ったあの時の校長からのパワハラで姿を消して行方が判らなくなっていることが明かされます。

ジェンダーとパワーの不均衡とハラスメントで生きる二つの世代を交互に織り交ぜ、時代が進んでも変わらないことの絶望と、さまざまな手口で巧妙になっていく怖さを描く作家、どんだけ不穏な物語が好きなんだと思ってしまうワタシです。人は姿を消したいときには自由に消していいし、騒ぎにならないようにしれっと戻ってもいい、という台詞は追い詰められた人々へ逃げていいという福音とワタシは感じるけれど、どうだろう。

代理教員こと臨時的任用教員を演じた堤千穂はずっとフラットに人々をみている感じで、この学校に後から来たからこそ見えること、とりわけ口は悪い女子生徒(野花紅葉)を信用する気持ちをしっかり。休職してしまった元の担任を演じた小西耕一はこの物語のなかでほぼ唯一、大人の男性だけど希望にみえる細やかさ。スクールロイヤーを演じた渡辺詩子、久々に拝見したけれど、(おもにマスコミ対策とはいえ)理知的な専門職という安定感。口の巧い学級委員を演じた小町実乃梨は、そつなく見えて、実はわりとヒールなのだという恐ろしさ。カントリーマームを配りがちな教師を演じた森田ガンツのアップデートされない感じはもしかしたらワタシもどこかあるんじゃないかとハッとする説得力。不登校の生徒の親を演じた寺十吾は最強のボスキャラだけれど彼なりの理屈があるという造形できちんと描かれた人間をしっかりと。章学教時代の担任を演じたハマカワフミエは、消え入りそうな雰囲気は確かにこの世のものではないかもしれないという説得力があるのです。

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