【芝居】「EXPO APOFES 2nd」銀色天井秋田企画
2023.12.23 18:00 [CoRich]
10周年を迎える「一人芝居のフェス」APOFES の連携企画として、EXPOと銘打ったセレクト4本。12月24日まで、APOCシアター。
何もかもがポンコツな男。同棲相手も呆れ気味だが、その失敗を呼ぶ力が改造人間として注目を浴びる「ぽんこつ2」(出演/ 脚本/ 演出 うんこ太郎 )
ナマハゲが伝える昔の話。美しいけれど口下手な男のかわりに愛の言葉を伝える男「なまはげシラノ」(出演/ 脚本/ 演出 進藤則夫 )
町中にタンスを引いて毎日訪れる男は胸に質札をつけている「ヨコハマ箪笥事情」
認知症の母を殺した薬剤師の告白。酒飲みの夫と苦労して工場を切り盛りし学がないからと娘だけは大学に行かせて。「如水」(出演 おぐりまさこ 脚本/ 演出 関戸哲也)
劇場がそこそこ遠くてコマ数をやたらに喰うのであまり足を運んでないAPOFESなのだけれど、この劇場が一人芝居をふゅーちゃーした演劇祭をやっていることは10年で定着した感があります。よりすぐり、というタイトルを付けた4本。
「ポンコツ」はパワフルでひたすらポンコツな男のひとり語り。一生懸命だけどやることなすことポンコツという序盤、正直にいえば痛々しさと紙一重なのと、わりと一本調子になりがちでちょっと飽きてしまう感もあり、ズボンが裂けるという大ネタもわりと早々に裂けて見えてしまうのももったいない。後半、その失敗を呼ぶ力が改造人間として着目を浴びてからの活躍がもっと見たかった気も。
「なまはげ〜」はタイトルはずっと耳にしていたし、あちこちでの上演の噂も知っていたし、「帰ってきたゑびす」の進藤則夫を拝見するのもずいぶんと久々ですが、初見のワタシです。なるほど「シラノ・ド・ベルジュラック」の骨組みはそのままに、簡単にはわからない言葉も交え前編秋田弁で語るのはいいアイディアで、淀みなく、濃密な30分。ふらりと訪れた男が客に挨拶して始めて、終わって去っていくというスタイルも応用が効くうまいフォーマットです。クリスが息絶えるのは道路工事の落盤というのも今っぽく切ない。
ワタシにとっては3度目( 1, 2) となる「〜箪笥事情」。役者もそのまま、芝居自体もほとんど変わっていないと思います。大爆笑でほろりとする濃密な一編であることにはかわりはないのだけれど、グレた息子が女性を「まわして」みたり、「監禁」してみたりというのが、正直、もう軽い笑いには本当にならなくなっているということも感じてびっくりします。前に拝見した2018年時点だってもちろんそうだったはずなのに、ワタシが、あるいはワタシたちが変化したということだとは思いつつ、この芝居が時代に沿ってアップデートするのかあるいは、つか芝居よろしく、その時代のものだったと演じ続けるのかは絶妙に難しいなぁと思うワタシです。
「如水」娘の語りという体裁を取りながら、恋して結婚して苦労してきた一人の老女の人生を緩急取り混ぜて描きます。認知症の母の若い頃と現在をスイッチして点描し、あの頃の記憶が老いてどう見えているか、わからなくなっている不安という認知症の特性を踏まえた物語になっているのも巧くて、なるほど繰り返し上演されてきているという筋力のようなものを感じるのです。
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