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2024.01.27

【芝居】「gaku-GAY-kai 2023 贋作・お気に召すまま」フライングステージ

2023.12.30 14:00 [CoRich]

年末恒例の二部構成。12月29日まで新宿スターフィールド(旧タイニイアリス)。第一部は劇団公式YouTubeで配信

(第一部)
フレデリックは追放した兄の地位を奪ったが兄の女装の娘ロザリンドは手許に置き、自分の女装の娘シーリアとともに育てている。 オーランドーは父の遺産を受け継いだ長兄に過酷に扱われているが、レスリング大会で優勝し、ロザリンドに出会い互いに惹かれる。 ロザリンドは突然追放され、男装してシーリアと道化を連れて追放された父がいる御苑の森に向かう。オーランドーも兄の元を離れ行き着いた御苑の森でロザリンドの父に助けられるが、男装しているロザリンドには気付かない。 オーランドーは森で兄を助け、シーリアと結婚を決める。フレデリックも兄を討つために森に入るが、改心する。 「贋作・お気に召すまま」

(第二部)
ピンクのランドセルを買いたい男の子「ピンク」(ドラァグクィーン ストーリータイム/関根信一, YouTube)
「幸せの王子」(水月モニカのクイアリーディング)
ファミコンを買った友だちの家へ(佐藤達のかみしばい ぼくの話をきいてください)
(ジオラママンボガールズの諸行無常) いよいよ明菜は動き出す(中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト vol.15)
追いかけたり、魔法使いだったり(今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ/エスムラルダ)

実は初見の「お気に召すまま」(waybackmachine)、若者たちが結婚に向かうシェイクスピアの喜劇。抗いがたい運命から未来を切り開く若者たちが眩しい。gaku-GAY-kai版はそれを巧みに新宿を舞台にして、森を御苑になどの工夫と、ジェンダーを入れ替えたり捻ったりというのがこの年末イベントの基本フォーマットなのです。結果的に「女装の娘が男装して逃げる」みたいな何をやってるか判らないことも起こるけれど、これもまたよし。

ショー形式の第二部、もりだくさん。29日が休みなら夜の回に行きたいところだけれど出勤で拝見できなかったアイハラミホ。2024年は、を日曜日だから行けるか!
主催・関根信一(twitter)のリーディング「ピンク」と題して。男児がピンク色のランドセルが欲しいというど、親たちはそれを覆そうと四苦八苦。だけれど、欲しいもの楽しい物を身の回りにおくことの重要が優しく描かれます。
恒例「幸せの王子」。
こちらも恒例、佐藤達(twitter)「かみしばい」ファミコンやりたさの大冒険、怒られたり、優しくされたりしてほんわり温かくなる物語。
白いパジャマで現れる二人、歌にあわせて無表情でフリをするというシンプルなルールなんだけど、どんどん楽しくなっちゃう不思議。ぽいぽい、なんて口癖になってしまう。
明菜ちゃん風の「中森夏奈子(twitter)のスパンコール・チャイナイト」、ここでしか会えない彼女に。しかし2023年はホンモノの方に動きがあった(YouTube)なんて話も。でも明菜の曲を歌ったりしない絶妙。
エスムラルダ(twitter, YouTube)こちらも曲に合わせてのフリで笑わせるショー形式で盛り上がり、そしてエスムラルダでマンボ(YouTube)!。

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2024.01.20

【芝居】「天使の群像」鵺的

2023.12.24 14:00 [CoRich]

鵺的の新作は学校の現場を巡る物語。150分。12月29日までザ・スズナリ。

勤めていた会社が倒産し、代理教員として高校に勤めることになった女。学校は嫌いだったが背に腹は代えられない。 担任を持ったクラスは男子生徒が不登校になっていて、その責任を感じた担任も休職していた。 学校にはスクールカウンセラーがいるが相談しているのは教師ばかり、教師のコンプライアンス教育には取り組んでいるものの、ベテラン教師たちは内心それを受け入れていない。

学校が好きではなかったが会社の倒産で致し方なく働き始めた学校で出逢った人々。表だった校内暴力もないしイジメも描かれないけれど、ちょっとしたきっかけで起こった不登校の男、学級委員だけど嘘をついていてうまく立ち回る女、口は悪いけれどフラットで鋭い視線で大人たちをみている女などの、大きな混乱がないように見える生徒たちの間での繊細な関係やその変化。

もう一つの軸は教師たちの物語で、同い年の女性たち(代理教員、養護教諭、スクールカウンセラー)は自分たちの尊厳と安全が脅かされる職場の存在。教師たちの間でコンプライアンスのお題目は広まってはいるけれど、教頭を始めとした年嵩の男たちは戸惑うというよりやや不満だったり年齢によってグラデーション、味方であるはずの女性の校長はちょっと及び腰で、女性たちの不安は解消されない上に、巧く立ち回る学級委員は不登校の生徒に半ば嵌められて不登校の男子生徒の父親の怒号を浴びたりするのです。

代理教員が帰宅すると同居しているかにみえる女は小学校時代の担任で、それは後になって知ったあの時の校長からのパワハラで姿を消して行方が判らなくなっていることが明かされます。

ジェンダーとパワーの不均衡とハラスメントで生きる二つの世代を交互に織り交ぜ、時代が進んでも変わらないことの絶望と、さまざまな手口で巧妙になっていく怖さを描く作家、どんだけ不穏な物語が好きなんだと思ってしまうワタシです。人は姿を消したいときには自由に消していいし、騒ぎにならないようにしれっと戻ってもいい、という台詞は追い詰められた人々へ逃げていいという福音とワタシは感じるけれど、どうだろう。

代理教員こと臨時的任用教員を演じた堤千穂はずっとフラットに人々をみている感じで、この学校に後から来たからこそ見えること、とりわけ口は悪い女子生徒(野花紅葉)を信用する気持ちをしっかり。休職してしまった元の担任を演じた小西耕一はこの物語のなかでほぼ唯一、大人の男性だけど希望にみえる細やかさ。スクールロイヤーを演じた渡辺詩子、久々に拝見したけれど、(おもにマスコミ対策とはいえ)理知的な専門職という安定感。口の巧い学級委員を演じた小町実乃梨は、そつなく見えて、実はわりとヒールなのだという恐ろしさ。カントリーマームを配りがちな教師を演じた森田ガンツのアップデートされない感じはもしかしたらワタシもどこかあるんじゃないかとハッとする説得力。不登校の生徒の親を演じた寺十吾は最強のボスキャラだけれど彼なりの理屈があるという造形できちんと描かれた人間をしっかりと。章学教時代の担任を演じたハマカワフミエは、消え入りそうな雰囲気は確かにこの世のものではないかもしれないという説得力があるのです。

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2024.01.14

【芝居】「EXPO APOFES 2nd」銀色天井秋田企画

2023.12.23 18:00 [CoRich]

10周年を迎える「一人芝居のフェス」APOFES の連携企画として、EXPOと銘打ったセレクト4本。12月24日まで、APOCシアター。

何もかもがポンコツな男。同棲相手も呆れ気味だが、その失敗を呼ぶ力が改造人間として注目を浴びる「ぽんこつ2」(出演/ 脚本/ 演出 うんこ太郎 )
ナマハゲが伝える昔の話。美しいけれど口下手な男のかわりに愛の言葉を伝える男「なまはげシラノ」(出演/ 脚本/ 演出 進藤則夫 )
町中にタンスを引いて毎日訪れる男は胸に質札をつけている「ヨコハマ箪笥事情」
認知症の母を殺した薬剤師の告白。酒飲みの夫と苦労して工場を切り盛りし学がないからと娘だけは大学に行かせて。「如水」(出演 おぐりまさこ 脚本/ 演出 関戸哲也)

劇場がそこそこ遠くてコマ数をやたらに喰うのであまり足を運んでないAPOFESなのだけれど、この劇場が一人芝居をふゅーちゃーした演劇祭をやっていることは10年で定着した感があります。よりすぐり、というタイトルを付けた4本。

「ポンコツ」はパワフルでひたすらポンコツな男のひとり語り。一生懸命だけどやることなすことポンコツという序盤、正直にいえば痛々しさと紙一重なのと、わりと一本調子になりがちでちょっと飽きてしまう感もあり、ズボンが裂けるという大ネタもわりと早々に裂けて見えてしまうのももったいない。後半、その失敗を呼ぶ力が改造人間として着目を浴びてからの活躍がもっと見たかった気も。

「なまはげ〜」はタイトルはずっと耳にしていたし、あちこちでの上演の噂も知っていたし、「帰ってきたゑびす」の進藤則夫を拝見するのもずいぶんと久々ですが、初見のワタシです。なるほど「シラノ・ド・ベルジュラック」の骨組みはそのままに、簡単にはわからない言葉も交え前編秋田弁で語るのはいいアイディアで、淀みなく、濃密な30分。ふらりと訪れた男が客に挨拶して始めて、終わって去っていくというスタイルも応用が効くうまいフォーマットです。クリスが息絶えるのは道路工事の落盤というのも今っぽく切ない。

ワタシにとっては3度目( 1, 2) となる「〜箪笥事情」。役者もそのまま、芝居自体もほとんど変わっていないと思います。大爆笑でほろりとする濃密な一編であることにはかわりはないのだけれど、グレた息子が女性を「まわして」みたり、「監禁」してみたりというのが、正直、もう軽い笑いには本当にならなくなっているということも感じてびっくりします。前に拝見した2018年時点だってもちろんそうだったはずなのに、ワタシが、あるいはワタシたちが変化したということだとは思いつつ、この芝居が時代に沿ってアップデートするのかあるいは、つか芝居よろしく、その時代のものだったと演じ続けるのかは絶妙に難しいなぁと思うワタシです。

「如水」娘の語りという体裁を取りながら、恋して結婚して苦労してきた一人の老女の人生を緩急取り混ぜて描きます。認知症の母の若い頃と現在をスイッチして点描し、あの頃の記憶が老いてどう見えているか、わからなくなっている不安という認知症の特性を踏まえた物語になっているのも巧くて、なるほど繰り返し上演されてきているという筋力のようなものを感じるのです。

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2024.01.08

【芝居】「十二月八日」青☆組

2023.12.17 14:00 [CoRich]

久々だと思ったら、2019年以来、4年ぶりだといいます。太宰治の同名作(青空文庫)を膨らませた85分。アトリエ春風舎。

太平洋戦争開戦の日の主婦が書いた日記、という体裁の物語が原作で、ワタシの印象は、これから生活を切り詰めても戦争に貢献しようという世間の高揚という雰囲気と、今のところはこれまでと変わらない暮らしを取り混ぜて描きます。今作は多くの部分は台詞も含め多く引きながら、登場人物を増やし、原作ではあまり感じられない、戦争には批判的な人の存在、戦争で失ったものがある人の存在を「目撃」した体裁で描いて、実際のところ、違う印象になっています。それは原作が書かれた時代と、その後の戦争の酷さを知っている現在から書いたもの、それぞれの作家の立ち位置などで変わるもので、意味があると思うワタシです。

終盤にある、娘を連れて銭湯に行くシーン、原作では日々の生活や守るべき家族の美しさを描いているのだけれど、今作では未来があるはずのこども、という印象を強く受けるワタシです。そのあと、男たちが倒れているというシーンとのコントラストで明確に作家の立ち位置が見えるのです。

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