【芝居】「1/0」げんこつ団
2023.11.19 15:00 [CoRich]
ほぼ年一回の公演になりつつある、げんこつ団の新作。ゼロで除算というエラーをタイトルに、一つの部屋を多次元的にシェアするという「発明」で押し切るある種、ちからわざの120分の凄み。11月19日まで楽園。
六ヶ所村から上京してきた女が紹介されたのは、多くの人が同じ場所に重なり合うように暮らしている「シェアハウス」だった。関東以北は祖母が一人で原子力から再生エネルギーまですべてを担っていて、それが嫌で上京してきた。
シェアハウスの大家である母親は誕生日を前に三日帰ってこなくて、子供たちは毎日サプライズを仕掛けては空振りしている。長女は一人で大家業で後を継がされそうな不安を抱え、次女は如才なく大手の不動産業界に居て、夫は上京してきた女にこの物件を紹介して真面目だが妻がより稼いでいる。
映像を交えつつ、全てが女優というフォーマットはいつものとおり。コント風味だったかつての姿よりはもっと作り込んだ複雑な一つの物語になっています。AIが席巻してメタバースが忘れられつつある今、むしろそのメタ感を自覚的にやっているのかなと思ったりしつつ。
東北が首都圏のエネルギーを担っていて、(物語には全く出てこないけれど)事故があっても時間が経ちそれを忘れていること、都市は都市でスペースが足りないことを狭小を超えて人々が重なり合うように暮らすという局所最適で生活していることという二つの世界の対比、あるいは(お茶くみとかの)「女の資格」を取って上京してきた女の意気込みに影響されて景気が良くなったタイミングで独り者の長女が「女の資格」を取ろうとしたりと、恐らくは女性であろう作家が見てきたこれまでの理不尽とこれからの変わりそうもなさそうな絶望感がない交ぜに感じるのです。
終盤、北側を一人で担っていた祖母がいよいよ持たず、上京した孫娘を呼び戻そうというのもまた絶望ではあるのです。作家が山盛りに想いを乗せながらも基本的にはコントでコミカルを作り上げる気迫。いつからか入るようになった、キレキレのダンスだったり、全員がスピーディに着替え黒で決めたカーテンコールのスタイリッシュは唯一無二の彼女たちのフォーマットなのです。
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