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2023.11.25

【芝居】「〜マジカル♡びっくり♧どっきり♢ミステリー♤ツアー〜」麦の会

2023.11.11 14:00 [CoRich]

横浜の社会人たちの市民劇団。各地への旅行に、ツアーガイドと共にという体裁の短編集。休憩を挟んで120分ほど。11月12日まで、のげシャーレ。

旅館に泊まり散歩に出かけツチノコを探している男が道に迷う。現れたのは自分探しをする旅人を狩る女たちだった「自分探しの旅人」(作・榎本かおり)
家を出た息子はずいぶん長い間戻ってこない。」旅先からは絵が送られている。突然戻った男は息子を名乗るが「家族写真」(作・池浦典子)
男の前に現れたもう一人の男は自分がおまえの分身なのだと名乗る「卒業」(作・江島裕一郎)
団子屋の前で子供に虐められていた猫を買い取る店主が皿で餌を与えていると、行商人が通りかかり、器が値打ちものだと見抜く「猫の皿」(小金井敏邦/落語)
温泉旅館、娘の結婚式の前夜。父親は結婚に納得していない。母親は突然ある話を始める「結婚前夜〜長女すず編」(作・山口雄大)
コンビニで働く母親、息子が授業参観で将来の夢を書いた作文を読み上げる。母親がかつてやっていた魔法少女になりたいのだという「夢」(草地樹里)

老若男女で目一杯、知り合い同士も多い客席。まさに芝居小屋の雰囲気。「自分〜」は木訥な男が自分探しの旅に出ていると思わせて、実は裕福だし親のレールに乗って医者になることに疑問を感じていないし、何だったらモテてたりもして。自分探しは自分と取り巻く環境に疑問を感じるところから始まるのに、そのスタート地点の疑問を持たないまま幸せに暮らせそうなのは、いいんだか悪いんだかではあるけれど。いえ、コメディなのでそういう奥深さを狙ったモノではないんだろうけれど。

「家族写真」は息子を名乗る男、母親は息子の顔の記憶も朧だったりして。じつは同居する娘が依頼して兄になりすまして呼んだ男。母親は待っているけれど、父と娘は山に行った息子が山で遭難して亡くなってることをDNA鑑定で知っていて、けじめをつけるためにこの男を呼んだのだ。とはいえ母親は気付いていても。なんとなくもう戻ってこないことは全員が判っているけれど、兄の描いた絵をたよりに生きていこうという前向きを感じさせたり。

「卒業」いい歳になった男の自分の分身、はさっき捨ててきた童貞だったという出落ち感満載の始まりだけれどなかなかどうして、そんなに好きじゃない女の子を相手に、自分が焦るがあまりこうなってしまったけれど、相手への思いやりが足りなすぎないか、と思い至るまでがワンセットで、大人になる、ということだという実はちょっとばかりほっこりな着地点。
同名の落語をほぼそのまま舞台にした「猫の皿」。こうやってみると、大衆演劇風味だし、客席の子供も喜んでたりするし、懐が深いなぁと思ったりして、これはいろいろバリエーションができそう。

「結婚前夜」は前回の公演でも似たようなシチュエーションのワンシーンがあって、娘を育て上げた夫婦の時にはコントのような、時にはしんみりとした会話から。母親が始める話はまあ有名な「のび太の結婚前夜」(TV朝日, 1)。娘が居なくなって少し寂しくなっても思い出で温かく居きられるという両親の気持ち。実はこの夫婦だって結婚反対されたのだったという終幕、娘と同じような服になった母親、時間のながれをギュッと圧縮するような見事さ。

「夢」も出落ち感ある「魔法少女」で、もう引退して母親となりコンビニでバイトしている日々に、息子の夢を聞いてちょっと思い出し、人類の危機となれば今からでも(オバさんになっても)魔法少女になれる、という活躍が頼もしいしカッコイイ。バディが居たりするのもプリキュア風味。正直に云えば、キッカケとなった息子の話何処行ったと思わないでは無いけれど、大きな問題ではありません。

精度の高い胃の痛くなるような芝居とは対極に位置するようなラインナップ。客席の年齢層も幅広く、多くの人の日常の中に芝居があった昔に想いを馳せたりして、これはこれでいいものなのです。

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