【芝居】「真夜中にコライダー団地で」あひるなんちゃら
2023.09.30 18:00 [CoRich]
あひるなんちゃらの新作。85分。10月1日まで駅前劇場。おまけ動画付きのライブ配信のアーカイブは2週間。
かつてロケット団地と呼ばれた団地。取り壊しが決まっている。ここで生まれずっと住んでいる男。両親や妹はすでに引っ越していなくなっている。実は地下には「コライダー」があり、小さなブラックホールが作られているという噂と、額にシールを張った不審者の噂に子どもたちは夢中だとママ友たちは話している。男は子供の頃に上がった屋上に上がりたいが、鍵を管理している幼馴染夫妻は配達されるハンバーガーが楽しみすぎて話を聞いてくれない。
作演みずからの前説は、お笑いライブの前説風ではあるけれど、必要なこと、敷居の低さを印象付けます。開演すれば、 ほぼ素に見える舞台に椅子を並べたぐらいの場所(タワー型パソコンに見立てそこに座るのもちょっといい)、団地の一室だったりおそらくは道や廊下、屋上などの場所を移しつつ、その場所にいる数人の会話を重ねていくいつものスタイル。
宇宙に関わるものを織り込んで来ている最近の作家、宇宙関係なさそうだなぁと思ったらさにあらず、タイトルのコライダー=加速器がまさにそれに開演してから気づく私です。広大なリング状の地下施設を筑波で見学したのは何年前だったかとワタシの記憶がダダ漏れてきたり。そこで働く人々のためにその土地の真上に作られた団地に暮らす人々の会話なのです。
物語は、そこに生まれ育ち、取り壊し前の団地に住む男の追憶と、現実と地続きの悪夢と、ここの未来、といってしまえばそれだけなんだけれど、たった8人の役者でコミュニティそれぞれの場所の会話を重ねて情報をパズルのように場所や関係を組み上げていくさまの見事さ。情報の出し方が絶妙で説明らしい説明なんかほとんどないのに、この人々が立ち上がる、あひるなんちゃらという唯一無二。
この団地に居続ける男を演じた根津茂尚の生活してる感じ。幼なじみ夫婦を演じた篠本美帆、杉木隆幸の溢れる多幸感がすごい。額にシールを貼った男もしくはシールに貼られた男を演じた澤唯は話しかけられたくないオーラいっぱいなのに巻き込まれがちで困った顔がよく。優秀な配達員を演じた松木美路子の一つに拘る感じがそれっぽく。
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