【芝居】「オイ!」小松台東
2023.8.12 19:00 [CoRich]
宮崎の人々を描く劇団、1997年の高校生たちの物語。115分、8月13日まで スズナリ。
高校生たち。いつも立ち寄っている家。同じ学校の生徒に絡まれ、泣きつきたくて訪れる。この家の父親は怪我をして仕事は多分クビになる。その息子が父を同級生の父親の会社(電気工事)で雇って貰いたいと云いたいが言い出せない。その電業店の息子は部活を頑張って引退して何をしたらいいかわからなくて、この家に通っていて、その彼女は卒業して東京の短大に行くといっている。
父親が定年で千葉から引っ越してきて喫茶店を開いた転校生は音楽が好きで、あんまり会話が弾まないし人と群れないけれど、レコードを一緒に買って聞いてみたい同級生女子がいたりする。
この家の妹は拾ってきた犬を飼いたいと主張して、飼う。ほんの少しの時間だけれど、父親、息子、娘が繋がった救世主だった。
物語としてはこの物語から何年か後、誰かの葬式に集まっている、という流れになっています。前半は群像劇で、それぞれの鬱屈したり何かの希望があったり、楽しいことがあったり、切実に家族を何とかしようとおもった人々を丁寧に描きます。なんか空気読めないけれど連んでいるのがいたり、あるいは転校してきて距離を詰められないのがいたりして。
葬式のシーンでは、これらの人々が結婚したり、子供が居たり、家業を継いで社長になっていたり、あのとき泣きつきたくてこの家に来た男はパートナーと暮らしていて、絡まれたところを見ていたのに見捨てた男はそれをキッカケにカメラマンになっていたり。同性愛者だったということを地元に居る人々は判っているのか判って触れないのかという感じで、殊更に騒ぐのは卒業してから東京に戻ったカメラマンだったりという温度感というこのシーン、時間を経てのもう一つの群像劇になっているのです。
この家の息子を演じた小椋毅の苦悩の解像度、父親を演じた今村裕次郎 のほぼ聞き取れない宮崎弁と何者か判らないラスボス感。妹を演じた小園茉奈の家族を取り戻したい切実さ。泣きつきたくて訪れた同級生を演じた尾方宣久のひた隠して言えなかった子どもの頃と、年月を経て言えるようになった現在のコントラスト。部活を辞めた電業店(デンギョー!初演) の息子を演じた松本哲也 の空気読めないけれどいい奴。その恋人を演じた吉田久美の東京を夢見る気持ち、だけれど戻って妻になった現在の対比。転校生を演じた瓜生和成の、ややいけ好かない東京(千葉)モンだけれど、好きなものを一人でも楽しめる文系っぽさ。その男にちょっとちょっかいを出しつつ、同じ事をしたくて音楽聴き始めたりする同級生を演じた竹原千恵の積極的な潑剌の可愛らしさ、結婚してからの地元のおばちゃん感のコントラストが楽しい。
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