【芝居】「濫吹」やみ・あがりシアター
2023.09.09 14:00 [CoRich]
やみ・あがりシアターの新作。110分。9月10日までシアタートップス。
PTAの副会長になった女はPTAのスリム化を進めてきた。朝の通学時間の横断歩道の見守りもフォームでの報告など省力化を進めてきたが、いよいよPTAで行わずシルバー人材センターに外注しようとしていた矢先、親でも親族でもない女がサボっているPAT会員の代わりに勝手に入り旗を振っていることが判明する。
トップスの奈落が丸見えになるような空間を作り、役者たちをスタンバイ。その上にある舞台は浮いているよう(ステージナタリー)な設えは度肝を抜かれます。ワタシは読んだことのない韓非子で書かれているという「濫吹」をタイトルに。紛れていればわからなかった才能の差は、それぞれの才能を個別に吟味されるようになるとあからさまとなるというモチーフかなと思います。もう一つ、「秩序を乱す」と意味もあるようでそれも重なるよう。
PTAをめぐる昨今のとスリム化の流れ、あるいは商店街から人手を期待されてしまうといったコミュニティとの関係、子供たちを見守るということは必要だけれど、都会では誰もが顔見知りというわけにもいかず、不審者を排除するざるを得ないという事情を丁寧に自然に描きます。正直に云えば、登場人物が少々多い感じはあるのだけれど、何度も挟まれる竽(う)という笛を人の歌声で表現するという奥行きは、この人数とこの広さの劇場ゆえに表現できるとも思うのです。
二人登場する子供は役者や人形すら使わず、繋いだ手の位置や視線で人が現れる、演劇ゆえの見立ての楽しさ。
肉屋の兄弟を演じた笹井雄吾、南大空はパワフルでコミカル、二人居る面白さというか。コミカルといえば「そうめんのように白くて細い」と説明される女を演じたさんなぎも、要所を要所をコミカルに、とりわけ誘われて早く帰りたいからペットボトルを飲み干すあたりは面白い(けれどそこまで身体張らなくてもと思いつつ)。PTA以外で家を出して貰えないITに詳しいPTA役員を演じた佐野剛が、飲み友達として町議と出逢うのは、本筋には何の関係も無いけれど嬉しくなるワタシです。演じた加瀬澤拓未のおだやかさ、きっちり。「不審者」を演じた加藤睦望は紛れ、逃げ出す人の生きづらさを持つ人物をずっとフラットで演じる凄み。
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