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2023.08.02

【芝居】「黄色い封筒」青年座

2023.07.07 14:00 [CoRich]

7月10日まで吉祥寺シアター。110分

自動車部品メーカーの労働組合。大規模な整理解雇に反対した労働組合がストライキを行っているが、そもそも合法なストライキ自体が法で封じられており、これまでも会社側はストライキに参加した個人に対して高額の賠償請求訴訟を行ってきたために動揺も広がっている。テレビ局ディレクターが取材に何度も訪れ、運動が続く中、組合員の息子が修学旅行先でのフェリーの沈没によって命を落としてしまう。

韓国で実際に起きた労働争議をモチーフに、運動の一環として韓国で制作された(毎日新聞) のだといいます。高額の賠償請求を背負った労働者に対し、草の根的に人々がもとは給与をいれていた「黄色い封筒」にお金をいれて寄付したという「黄色い封筒運動」を労働者側の視点で労働争議の構図をわかりやすく描くことと、その中に居る労働者たちの葛藤や立場の違いを描きつつ、同時期に起こったセヴォル号の沈没事件を人の生き様に絡めて描きます。

大きく傾いた甲板のような舞台にマストのようにぴんとたった細い一本の柱。労働組合の事務所と思われる場所の物語で、ほぼ組合員のみの出入りで、テレビディレクターという男を入れることで、第三者の視点での語り口を得て描かれます。そもそも合法的なストライキができないという閉塞的な中でも雇用の維持を勝ち取るためにやむにやまれず、それでもストライキをする人々。雇用どころか、多額の損害賠償を背負うハメになるという壊滅的な状況の八方塞がりのこの「物語」が現実の地続きなのだということはワタシを絶望的な気持ちにさせるのです。

正直にいえば、語っているのは戦場そのものの状況なのに、労働者側(と説明のための第三者)でしか描かれないことで奥行きが物足りないとか、セヴォル号のこと(同時期に起きたこととして、これを描かずにはいられないことは作家の切実さとしては理解できるけれど)が少々唐突に感じてはしまうけれど、同じ時代のできごとを、決して他人事ではなく自分の生きる世界の地続きとして感じ取れる物語は、ブラッシュアップを続けてほしいと思うのです。

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