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2023.08.07

【芝居】「はてのしま」シアターTRIBE

2023.7.16 15:00 [CoRich]

松本市・上土劇場での上演が主な地元の劇団の雄のひとつ。演劇連合会の会長職、小屋主でもあるためになかなか「まつもと演劇祭」枠での上演が叶わない劇団でもあり、久々の大学同窓会が近くであったから、の偶然も嬉しい。

政府に反抗する人間を思想病として取り締まり、隔離療養する施設となっている離島。入所者と施設を監視するために月に一度、船で検疫官が訪れることになっている。長い間、なあなあだったが、訪れた検疫官は女性だが厳しそうな新任者だった。

反体制を取り締まるためと思われる「思想病」とその隔離施設を巡る絶望的な状況を描きます。 検疫官への「接待」の準備をするけれど、検疫官が新任だとわかり何かの秘密を隠そうとする二段構えのドタバタ。絶望しかけた職員たちだけれど、温泉に反応した検疫官(相当な温泉オタクだとわかるセリフの洪水は楽しいけど、ほぼ判らないw)が温泉に行ってる間に時間を稼ぐことに成功するのです。

ここまででも薄々わかるけれど、どうも職員はいても入所者は居ないことを隠しているよう。そのドタバタを続けるのかとおもいや、検疫官もまた国情の変化で入所者を皆殺しにする命を受けており、さらには検疫官自身も思想病の感染が疑われた状態でのミッションということがわかります。

目的をともにして、島を取り囲み待機する軍隊をどう騙して乗り切るか、は少々荒唐無稽に過ぎる感はあるし、「脳に直接語りかけ」て、反応する人々が集うテレパシー的な量子なんちゃら技術とニュータイプっぽい人々のレジスタンス、みたいな大風呂敷なSFも今どきというよりは少々レトロに感じなくはないのだけれど、いえ、ワタシはこういうのんが直撃世代なの、妙にハマって嬉しくなってしまうのです。ランボーとかジェダイとかなんて単語が散りばめられるのもまたよし。

そもそも思想病なんてものはなくて、独裁へ突っ走る政府のありかたと、それに対抗するためのレジスタンスの拠点とその先への一歩を感じさせる終幕は痛快です。そのまま今の私たちというわけではないけれど、何かと何かを置き換えれば、私たちの今の現実から地続きの相似形というふうにも、さまざまに読み解けそう。

検疫官を演じた作田令子は、ドイツ風の軍服で凛々しく、ときに可愛らしかったり怯えたり、とくるくると変わる楽しさ。入所者にでっちあげられるシェフを演じた、にしざわ・あおいは吠え、飛び回る軽快さ、妙に二の腕が凛々しく。この二人が対峙する中盤のシーンが出色で、互いにズレた恐怖感を持ちじゃれ合う感じがちょっと微笑ましい。医師長を演じたちんてんめいは、まさに現実には何も不思議なことは起こっていないSF風味の今作をセリフだけの力で支えるといっても過言ではない説得力。補佐官を演じた宗田つよしの中間管理職っぽさ、雑務員を演じた池田シンのときおり見せる悪ノリ が楽しい。

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