【芝居】「赤を張って、ブルー」おもち食べ放題
2023.08.05 14:00 [CoRich]
女優・沈ゆうこのプロデュース公演。85分。イズモギャラリー
ボタンに糸が通せない姉、帰宅した妹はそれを代わる代わりにアイスを買ってきて欲しいともちかけるが、姉はコンビニに行きたがらない。「針と糸とアイスクリーム」
この姉妹は一軒家を、姉の大学時代の男友達とシェアして家賃を折半している。男は婚活しているが、惚れっぽい割にデートの代金をどうするかとか話が長すぎたりしてフラれてばかり。同窓会が近づいていて、11回フラれている同級生が来るので、そこに「彼女」を連れていきたくて、妹に相談する。「アンチ・ブラッシング」
男が暮らし始める前の前日譚。姉がタトゥスタジオを開業し、大学の時のたった一人の男友達が訪れる。お祝いなのに夏なのにストールとかちょっとズレている。姉は人に舐められないためのタトゥは許せないこだわり。男はタトゥを入れようと考えていて。姉は家賃苦しく、一軒家をシェアしようと提案する。「キャンディとタブー」
休日、3人がリビングに居る。妹は三人の男の「ヒモ」で、大量にチョコレートを貰ってきてシェアしたりしてる。姉は地元の憧れのタトゥアーティストに手紙を書こうとしているが、慰められるのは弱い人間だから、彼を慰めるような手紙は失礼ではないかと逡巡している。「青」
ギャラリーを横長に使い、キッチンスペースからトイレまで(観客は使えないのは痛し痒し)を一室に見立てた場所での役者三人による4本立て。
タトゥアーティストの姉、舐めた態度を取られるのが嫌い、友達少なめ。男三人の家に通うヒモな生活の妹、察しがいいし人当たりもいい。姉の男友達はきちんと働いていて、婚活に勤しむが失敗続き、なのに独身女二人に手を出すでもなく暮らしてる。というそれぞれのキャラクタを描くような日常のスケッチになっています。
「針と〜」は姉妹ありがちな買い物の駆け引き。姉がコンビニに行きたがらないのは、態度が悪い店員だから距離感が気に入って通ってるのに、こんどタトゥの客になって態度が急変するからムカつくというのだけれど、それアイスを買いに行っても行かなくても同じではないかと思ったりするけど、その駆け引きの会話の間合いが楽しい。
「アンチ〜」は「彼女」役として妹を連れて行こう考え、妹は面倒見よく話を聞くという枠組み。妹は男が、パーティとかで人を居やすくしていると見抜き、同級生の横に座るにはどうしたらいいかの指南を考えたり。翌日も話そうと誘ったりして、妹が好意を持ってるようにも見えるんだけど、明確には恋に落ちそうな感じにはしない距離感が心地良いのです。
わざわざここで時間を巻き戻す「キャンディ〜」をここに配した意味はよくわからないけれど、姉の一本気なこだわりと、それを好ましく思う男の心地よい関係。こちらも恋に進んだりしない距離感。
最終話「青」に至っても、姉の一本気、しかしどこか引っ込み思案な感じはそのまま。妹も男もそれを見守っていること。いつまでこの関係が続くかはわからないけれど、四本を通して、男女の間に友情というか仲間であることが成立するという幸せな空間の刹那を切り取るよう。物語としては実際は何も進んでいなくて、舞台が進むにつれて、人物のキャラクタの解像度が上がっていくようで、フィギュアを愛でるような不思議な体験なのです。
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