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2023.07.29

【芝居】「この雨やむとき」海外戯曲をやってみる会

2023.07.02 15:00 [CoRich]

俳優・松本みゆきと、演出家・森田あやによる海外戯曲の読み合わせや上演を行うユニット。リーディングライブを重ねて初の上演。私は団体初見。7月9日まで雑遊。125分。

幼いうちに父が家を出て以来会ったことのない男が成長し、父から送られた絵はがきを頼りに足跡を辿るためオーストラリアを訪ねる。宿を営む女と行きずりの一夜を過ごすが、この街を抜け出したい女は男と旅に出るが、ずっと続く平原の一本道で事故を起こしてしまい男は亡くなり、女は通りがかった男に助けられる。死んだ男の子供を宿していた女は助けた男と暮らし始める。その息子が一人で暮らしている家、世界の終わりが近づく2039年のオーストラリア。降り続く雨の中20年前に別れた息子から電話があり、会いたいという。

オーストラリアを舞台に、父と息子とその母を巡る四世代の物語。降り続く雨、食事としてのスープを準備し人と囲む食卓、外出から戻って置く帽子といった道具立てで繋ぎ、帰宅する人、それを待つ人、あるいは探しに行く人を象徴的に描きます。雨、スープ、帽子をモチーフにしながら、これらの世代を行き来して描き始める序盤は本当にバラバラなピースなのだけれど、徐々に、最初の世代の夫がペドフィリアで息子の安全のために妻によって追いだされたこと、父が行っていたオーストラリアを旅して出逢った女と恋に落ち子供も出来るが、実は女の兄が旅をしていたペドフィリアの男に殺されたこと、事故で夫を亡くした女を見守る、助けた男といった波瀾万丈すぎる構造が見えてきます。この混乱の次の世代の父と息子の物語は冒頭と終盤だけなのだけれど、降り続いている雨が降やむ時にこの世界が終わり、四世代に渡って続いてきた呪いの終わりも迎えるというきれいなまとまり。

四世代の男たちを中心に継ぎ紡ぐ物語は丁寧だけれど、起点であるペドフィリアの男、その息子と恋人、ともう一人の男という最初の二世代がドラマチックに盛り上がりも多いのに比べると、正直に言えば後の二世代はそれまでの物語とのつながりが薄い感じで「世界の後片付け」という役割しか担わされていないのが少々肩透かしな感じというか、語られる話の偏りを感じる私ですが、物語の骨格の強さは間違いないのです。

行きずりで恋に落ちた男女を演じた三宅勝と松本みゆきのヒッピームーブメントの時代らしい多幸感、同じ女を演じた田中里衣と(恋人の死後)助けて一緒に暮らし見守る男を演じた山森信太郎のカップルの陰鬱のコントラスト。とりわけ山森信太郎のおどおどした、しかし愛情一杯に見守る男の人物造形の格好良さ。

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